第8話 断罪劇をプレゼンします
放課後、生徒会室にはいつもの6人が集まっていた。
クロードには体調を心配され、早く帰ることを勧められたが、今日は劇の演目について決めることになっている。
自分がいない間にクロードが格好良い役に決まり、更にモテモテになられては堪らない。
断固阻止しなければ。
「昨日の続きだが、卒業パーティーの劇の演目について意見がある者は述べて欲しい。」
クロードが皆を見回しながら話しかける。
するとセレンがすかさず手を挙げた。
「はいはーい、王子さまと他国の姫の」「却下。」「それは駄目!」
セレンの提案を、クロードと私が即座に退ける。
セレンは不満そうにしていたが、次にフレディが、
「この国の歴史や、学院の歴史を・・」
と話し出したら、すかさず
「却下!」
と反対していた。
1年生の二人は、先輩方が決めるべき、と最初から案を出す気はないらしい。
クロードが困りながら、
「アメリア、何かいい案はないかい?」
と私に訊いてきた。
もともとアメリアが劇が良いと言ったのだ。
私が何も発言しないわけにはいかない気がする。
高速で頭を悩ませ、この国の小説、前世の日本のお伽噺など、劇になりそうなものを色々思い浮かべてみた。
そして思い付いてしまった。
いっそのこと、断罪劇を演じてみたら面白い気がする!
うってつけの卒業パーティーだし、世界観もピッタリ!
しかし、この国の人は断罪劇を知らない。
公の場で婚約破棄するような非常識な人間など、見たことがない。
ましてや新しい恋人を作って婚約者を裏切り、挙げ句の果てに婚約者に罰を与えようとするなんて、受け入れられるだろうか。
私は遠慮がちに提案してみることにした。
「他の国のお話なのですが・・・」
と前置きをし、まずは定番の断罪劇について説明を試みる。
婚約者のいる王子や貴族令息が、婚約者がいるのに恋人を作ること、婚約者だった令嬢がその新しい恋人を嫉妬で虐めて悪役令嬢と言われること、卒業パーティーで悪役令嬢が婚約破棄と断罪をされること。
皆の反応を伺いつつ、更に悪役令嬢が自分が虐めていない証拠を提出する断罪返しバージョンも話しておく。
そして、何故か新しい恋人=ヒロインはピンク髪で、男爵令嬢が多いと付け加えておいた。
荒唐無稽な話だと引かれるんじゃないかと思っていると、セレンが真っ先に反応した。
「私、絶対ヒロインね!私の髪、ピンクじゃないけど、婚約者のいる男性を奪う役なんて刺激的だわぁ。」
え、まさかのヒロイン希望?
あざといし、結構おバカが多いんだけど。
呆気にとられながらセレンを眺めていると、
「そうなるともちろん、浮気者がクロード様で、悪役令嬢がアメリア様ですね。」
カイルが嬉しそうに言い、隣でエレーナがうんうんと頷いている。
浮気者って・・・
確かにそうだけど、呼び方・・・
何より、決定みたいになってるじゃない。
皆それでいいの?
言い出したのは私だけど。
心配になってクロードを見れば、
「なるほど。僕たちは実際、婚約者同士だし、配役は問題ないな。」
いやいや、問題はあるんじゃ。
婚約破棄するお話なんだけど・・・
「卒業後に社交界で生きていく卒業生に、いい教訓と心構えになるかと。」
フレディが真面目な顔をして言う。
なるかーっ!!
さっきから私の心の中は、突っ込みの嵐である。
もしかして、早まった提案をしちゃったかな・・・?
しかし時すでに遅し。
余興は断罪劇に決まってしまったのだった。
私ってば、前世の記憶を生かす方法を絶対に間違えてるよね。
と思いつつ、期待に胸を弾ませた。
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