全ての向こう側
「はぁはぁはぁ……、えっ、なに? すごい光が辺りを包んで……それが消えたら、次元の隙間が消えて、魔神王の気配も一緒に消え、た? 助かった……? えっ!? あきら? 嘘……、幻じゃなくて?」
「ゆかり……」
「あきら……!」
「……ゆかり、なんで服来てるの?」
「服、着るでしょ?」
「やまとも服着てる……」
「着る……でしょ? ヤマトって露出狂だった?」
「えっ?」
「へっ?」
「……えーっと、ゆかりはバトルドレスというやつ? ピンクと白に皮の胸……可愛いね? やまとも冒険者風の革鎧着てるね?」
「ありがとう。魔神王との世界の命運を賭けた戦いの前で準備してたから……」
「それにヤマトはなんだか妙に興奮して、祭壇の前にあるバランスボールみたいな透明の球体を手に持った棒で、こねたり突いたり叩いたり、どこかで聞いたようなパンパンと音が……」
「……というか、なんであきらがこの世界に!? 魔神王は!?」
「次元のはざまを通ってちょっと……。魔神王は琉球の覇者から教わった最終奥義とても痛いゲンコツで心を改めてくれたから……」
「魔神王って改心とかするんだ……?」
「あ、水かけた。ピチャピチャという音もしてたけどアレはコレだったんだ……。ところでヤマトはなんであんなに興奮してる!? なんか、はぁはぁ言ってるけど!? ヤバい! ゆかりもやまとも服着てるとか、ツッコミどころが多すぎるんだけど!?」
「服を着てるのはツッコミどころじゃないと思うけど!?」
「交信でゆかりが突かないでぇぇええとか、イクぅぅううううとか言ってたのは!?」
「魔力を込めてあんなふうに突いたりすると刺激があるんだよ、限界までやると意識が飛んでいったりもする。さっきなんてヤマトが魔道具のナカに急に魔力を注ぐから反動で危うく意識が飛ぶかと思ったよ」
「ああ……、そういうオチ?」
「オチ? あきら、なんのこと?」
「世にも衝撃的な絶望の現場を見なくて良かったというべきか、いっそそういう現場を生で見てみたかったというべきか……、いやいや、僕の蒸発した脳が天元突破仕掛けた夢かもしれないな。とりあえずハァハァ言ってるやまとは放置で良いだろうか」
「あきら? 大丈夫?」
「無問題。僕の幼馴染恋人ゆかり」
「うん、うん……あきら、逢いたかった」
「おうふ、温かく柔らかい……。ゆかりからの抱きしめだけで僕はもう幸せいっぱいだ! 寝取られたと思ったときはどうしてやろうと思ったけど……」
「寝取られ? 寝取られって……エッチで恋人を奪われること?」
「あー、はい」
「ヤマトに……私が? 寝取られたと思った? 私は今でも心はあきらの幼馴染恋人だよ」
「あー……、はい。交信はソウイウものかと……」
「こんな昼間から私とヤマトがソウイウことを?」
「あはは、そうだよねー。いや、てっきりゆかりとやまとがさぁー……」
「ふふ……、そうだよ。まったくあきらったら……スルのは夜だけだよ♡」
「そうだよねー、はは……えっ?」
「それに寝取りと浮気って……違う、よね♡」
「……ゆ」
「ゆ?」
「ゆかりぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
終!!!!!!!!!
幼馴染の恋人が親友と異世界転生して、寝る前に語りかけてくる。ねえ、ゆかり?その音はなんの音? パタパタ @patapatasan
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