第4話 逆走
この話はノンフィクションではあるが、記憶に齟齬や勘違い等で事実誤認しているかも知れない点は留意して頂きたい。
最近のニュースで取り上げられるようになった、車の逆走問題。
主に高齢者のうっかりミスが原因であるようだ。
確かに確かに。
高速道路で逆走すれば、事故のリスクは果てしなく高い。
というよりも、ほぼ自殺と変わらないであろう。
故意に行う者などいないと信じたいところである。
さて、前述をひっくり返す様で申し訳ないが、うっかりではなく、故意に逆走する者がいないわけではない。
なぜなら、その場面に出くわしたことがあるからである。
場面は、信号のある十字路の交差点となる。
車走行中に信号が変わり、前の車両に倣い信号待ちをしていた。
暫くすると信号が変わり、左折して進路変更したのだ。
左折した道は、片側1車線、中央には追い越し禁止の黄色の車線が引かれている。
道の先は、右に曲がるカーブであった。
反対車線には、信号待ちで車が列を成していた。
その列は、カーブの向こう側にまで続いていたのである。
見通しが悪い道ではあるが、普段であれば、何も問題にはならないであろう。
どうという事もない何処にでもある道であった。
しかしこの時、その道に戦慄を覚えた。
左折して直ぐに、前方から逆走するバイクが来たのだから。
視認したときには、10mも無かったのである。
超能力者じゃあるまいし、カーブの先は見ることは出来ない。
まさか逆走するバイクが迫って来ていると、思うわけが無いのだ。
……いったい誰が、この状況を想定することが出来たのであろうか?
改めて私の状況を説明すると、私の乗る車は国産車なので、右ハンドルである。
つまり、目線は道の真ん中寄りとなるのだ。
ただでさえ右カーブは見通しが悪いのに、信号待ちの車が遮蔽物になっていて、更に視界を狭めている事態となっていたのだ。
それが、前方から逆走するバイクに気付くのが遅れた要因であった。
……私にしてみれば、視認した時には、突然目と鼻の先にバイクが現れた様なものである。
ちなみに、バイクは左側走行を心掛けるもので(堂々と真ん中を走っても何ら問題ない)、追い抜く時には右側から追い抜かなければならない。
推測ではあるが、左側から『すり抜け』しようとしたが出来なかったと思われる。(※注 よく見られる行為ですが、法律違反です)
というのも、片側1車線は広いとは決して言えないのだ。
左側に割り込める隙間が無かったのであろう。
だからと言って、反対車線にはみ出して良いわけでは無い。
ましてや、追い越し禁止車線であるのだから尚更である。
気付いた時に咄嗟にハンドルを切り、急ブレーキを踏んだのだ。
それで何とかバイクを避けることは出来た。
よく事故にならなかったものである。
自分を褒めてやりたい。
とはいえ、これは双方が運が良かったのだ。
回避できたのには、幾つか要因があげられる。
交差点からそれほど離れていなかった為、双方ともにスピードが出ていなかった。
私の後に後続車両がいなかった。
歩道に歩行者がいなかった。
縁石ブロック(歩車境界ブロック)がそこだけ途切れていた。
……本当に運が良かったのである。
さて、急停止してからすぐに、バイクの行方も気になったし、後続車も気になったので後方を確認したのだ。
後続車はおらず、バイクはそのまま走り去ってしまった。
しかも、後姿を見れば二人乗りであったのだ。
ハッキリ言って、あんな危険運転をしていれば、早晩事故を起こすのではないかと言わざるを得ない。
そのバイクの後ろに乗るなんて、信じられないと思うのは私だけだろうか?
……こんな人間は、錚々いないだろうと思っていた。
しかし、私が自転車走行中に、またしても危険運転に出くわしたのである。
上記とは場所は変わり、交通量の多い交差点の出来事である。
此処も片側1車線で、中央には追い越し禁止の黄色の車線が引かれていた。
似たような状況であるが、道は直線で見通しが良い道路であった。
信号待ちをしていた車が長蛇の列を作っていた。
その時である。
1台の車が、何やら怪しい挙動をしたのである。
つい気になって、立ち止まって見てしまったのだ。
その車は後続車もいるのに、少し後ろに下がり、切り返して、反対車線に乗り出したのである。
この時、反対車線からは車が来ていなかったので、Uターンでもするのかと思った。(※注 法的に問題はない)
とはいえ、一度では回り切れないのは明白であった。
ハッキリ言って、その行動は、あまりにも非常識に見えたのだ。
見ていた私は「マジか!」と思ったものだ。
もしかしたら声に出ていたかもしれない。
しかし、私はどうやら勘違いをしていたようだ。
その車は、Uターンなんて、初めから考えてはいなかったのだから。
なんと、追い越し禁止車線を越えて、逆走したのである。
逆走車は、100m程逆走し、信号手前で右折したのだ。
そこには、車1台分の細い小道が続いていた。
対向車が来る事も無く、無事に進入して行ったのである。
今回は傍観者で済んだ。
だが、もし当事者であれば、どうだろうか?
運よく対向車が来なかったが、対向車が来ていて、それが私だったとしたら……。
少なくともバイク以上の恐怖を覚えることは間違いないであろう。
……見通しも良いので回避は出来るかもしれない。
しかし、この状況を想定する事に意味があるようには思えない。
そもそもが、ありえない行動をしているのだから。
全てを憶測で『かもしれない』では、不毛なのである。
出来る事と言えば、せいぜい保険を見直すことではないだろうか。
マイヒヤリハット @yatuura
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