第3話 狩猟
この話はノンフィクションではあるが、記憶に齟齬や勘違い等で事実誤認しているかも知れない点は留意して頂きたい。
私の実家は田舎だ。
田舎であれば、居住地から近い山に入って遊ぶことも珍しくないだろう。
私であれば、集会所の裏山、給水タンク(山を切り開いた住宅地なので高台に水を送るための設備)、お社というか御堂(地元民にもあまり知られていない穴場)などだ。
水が流れている近くでは、アケビが取れたり、キイチゴが取れたりと自然豊かでもある。
だが私は、深く山に分け入ったりはしない。
理由は2つ、いや3つある。
一つ、住宅街の近くだというのに、空薬きょうが落ちていることがあるのだ。
一つ、昔は蝮谷と言われるほど蝮が多く、夏場では良く見かけるのだ。
一つ、猿・鹿・時々熊などの野生動物がいるのだ。
私がまだ小さかった頃、シカを追い込んで、住宅街に逃がした狩猟者がいた。
この件は大層問題になったものだ。
当然である。
住宅街の目と鼻の先で発砲する行為と野生動物を住宅街に招き入れたのだから。
とりわけ、子供でも入るような浅い場所にも、よく空薬きょうが落ちていたものである。
私は空薬きょうを見つけると、それ以上奥には入らないようにしていたのだ。
地元では有名だが、蝮が多いのだ。
何時教えられたか覚えていないが、教えられた内容は忘れていない。
「道の脇や藪に、むやみに踏み入ってはいけない」
蝮はじっとしている事が多く、気付きにくいのだ。
「藪の中で光るものが有れば、近づいてはいけない」
蛇に限らず、動物の目は、光を反射するらしい。
私は猫ぐらいしか知らないが、そう教わった。
推測になるが、咄嗟に手を出さない様にさせたかったのだろう。
というのも、小さい頃は近くの川に蛍が見られたのだ。
子供はよく虫を捕まえるもので、私も例に漏れず、蛍を捕まえていたものだ。
まあ、夜見れば綺麗だが、朝見ればキモイ虫でしかないのだが。
その為、こう言っていたのかもしれない。
ちなみに、私の中学時代に、川沿いに工場が建った。
それ以来、蛍を見なくなったのだ。
一度崩れた生態系は戻らないのだと、寂しく感じたのを今でも覚えている。
そして、狩猟者がいるという事は野生動物がいるという事に他ならない。
地元ではあまり聞かないが、少し離れた丹波では牡丹鍋が有名でもある。
となれば、私が知らないだけかもしれない。
代わりに猿の被害はよく耳にした。
噛まれると骨にまで達するのだと、よく脅されたものである。
しかし何といっても、熊は別格である。
数年単位ではあるが目撃例が出るのだ。
その時は即座に、有線放送が流れて、注意勧告が成されるのであった。
野生動物も怖いのは怖いが、私にとっては狩猟者の方が恐ろしく感じていた。
生活圏の近くに銃を持った者がいると考えると、底知れぬ恐怖を感じはしないだろうか。
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