第29話 不浄の門
エルフのお城でお世話になって5日目にアドレイド卿が俺達の部屋にやって来た。それは待ちに待った知らせ。
「完成しました」
「やった、やっとここまで来た。ありがとう御座います」
「苦労なさったのですね。ですが、真に言いにくい事が有りまして、実は条件付きなのです」
「条件ですか?」
「はい。対象物までの距離が1kmまでと言うことと、膨大な魔力量が必要になります。魔力の方は我々の魔術師がいますので良いのですが、設置場所は考えねばなりません。そして、もっとも大事な事はドゴスさんの血を魔力に変換する部分の魔石は永久ではありませんので、限界が来たら再び血をもらい造り直さねばなりません」
「場所ですか……光の終点がサルバレルカ山の側だったので、山頂付近に設置場所を造れば何とかなると思います」
「そうでしたか、安心致しました」
「下見に行って設置場所を造ってきます」
「解りました、お気をつけて」
「ドゴス、俺の国に一旦戻るが一緒に行くか?」
「おう、行く行く」
ーー
「神父様、シスター、不浄の門を封じる魔道具が完成しました」
「そうか、良かったな」
「はい、魔力使用量が大変らしいですし、設置場所を造らないといけないんですがね」
「ふむ、それなら作動させる時はシスターも行くと良いな」
「そうね、私も行きますわ」
「シスターもですか?」
「ふふ、この大聖堂で使用する数多くの魔道具は大量の魔石よって賄われているのだが、元の魔石に魔力を供給するのに大勢の人が必要なのだ。しかも魔力を無駄にできないように効率よく使う必要がある。不浄の門を封じる魔道具も理屈は一緒だろう?」
「そうですね。でもシスターとの関係は?」
「私は魔力の伝導率と変換効率を上げる事とが出来るのよ」
「シスターのスキルですか?」
「そう。私が魔力を付与した分だけ持続するの」
「そんなスキルも有るんですね」
「そうよ、凄いでしょ」
「はい、それは心強いです。それじゃ、設置場所を造ったら迎えに来ます」
「シンの時空間に入れるわね」
「そうですけど、そんな楽しい所じゃないですよ」
「良いの、入れれば」
ーーーー
「ドゴスは土魔法が使えるよな?」
「おう、バッチリだぜ」
「よし、レナも使えるし2人いれば大丈夫だろう、ここに来て全てが噛み合って来たな」
「順調ですね」
ーーーーー
「なるほど、あの光の先に不浄の門が在るって訳だな」
「そう言う事」
「魔道具の大きさは5m×5mで本体の高さが2mだ。後は、その回りに20人が囲めるようなスペースがあれば良い」
「解った。チャチャっとその辺を切り崩して、平らにしてやるぜ」
「私も」
「「ドリフター!」」
「「レイベル!」」
「おっ、良いね。そんなんで十分だ」
「準備万端だな」
「時空間をここに持ってきておけばバッチリだ。よしエルフの国に行くぞ」
「シンさん、シスターを忘れてます」
「おっと、いけない」
ーー
「この扉に入ればエルフの国なのね?」
「そうです」
「良いわ、行きましょう」
時空間に入ってからシスターの質問攻めに合って大変だ。納得してからでないと動いてくれないし。
「本当にエルフの国だわ……無事に終わったら、帰りはお風呂に入って1泊よ」
「はい、はい」
エルフの城では魔力量の多い魔術師達が選抜されていて出発する準備が整っていた。シスターを紹介し、スキルを説明した上で魔道具の作動に問題が無かったので出発する事となった。
「シン殿、宜しく頼みますぞ」
「はい、1回で決めたいと思います」
時空間を使ってサルバレルカ山に移動して、そのまま魔道具を設置する。
魔道具の上面には大きな魔法陣が描かれいて、楽器のアルトショームのような物が無数付いている。ここから変換された魔力が放出されるのだろう。
魔道具の側面には小さい魔法陣がたくさん書かれている。エルフの魔術師達が各々その魔法陣に触れる。
最後にシスターが魔道具に触れスキルを発動すれば準備完了だ。
「良いですか、皆さん?」
「はい」「良いわよ、シン」
「号令をお願い致します。シン殿」
「解りました、では始め!」
皆が一斉に魔力を込める。
[キィイイ━━━━━ン]と、かん高い音が魔道具から漏れ始めた。
アルトショームの筒穴から何かが出ているのだろう。向こう側が歪んで見える。
30秒……1分、2分と時が過ぎて行く。まだ何の変化も無い。
「シンさん」
「ああ、出てきたな」
光が止まっている地点に黒く渦巻いた穴が見えて来た。直径は300m位ありそうだ。
「あれが不浄の門なのでしょうか?」
「ああ、間違い無いだろう」
「あんなのが、日に日に大きくなってたんだろうな、恐ろしい事だぜ」
魔道具の作用なのだろう、黒い渦の中心が歪んで見える。そのせいなのか、黒い渦は心なしか小さくなっている様に見える。
「小さくなってないか?」
「判らん」
「なってますよ、ほら!」
「ホントだ」
「よし、このまま押しきろう」
「はい」
皆が魔力注入に集中し始めると、明らかに変化が現れた。急激に黒い渦が小さくなっている。
「この調子です。後、50m位です」
「よし、一気に行こう」
40m、30……25、行ける。
[ドッゴ━━━━ン]
「きゃっ」
「シスター!」
「何があった?」
「ファイアーボールの火球が、こちらにたくさん飛んで来ます」
「くっ、この大事な時に、どこのどいつだ?」
「シンさん、あそこ」
「なにっ!……何でここで出てくる?」
山に駆け上がってくるのは1000人以上の行方不明の例の奴隷達だった。
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