第28話 銅板の機能
時空間の中に入ってエルフの国の時空間を思い浮かべると、西側の壁に扉が現れた。
「何処だここ?どうなってる?」
「俺のスキルだ。誰にも言うなよ」
「あ、ああ」
「行くぞ」
「「「はい」」」
扉に入って外に出ればエルフの国だ。
「おい、……おい、……おい……」
「ドゴスさんが壊れましたね」
「ど、何処に行くんだ?」
「お城だよ」
「へっ?」
呆けているドゴスを無視してエルフの城に直行する。
顔見知りなった門番が直ぐにオルフェリアさんに取り次いでくれる。
案内された部屋にはオルフェリアを始め、アドレイド卿、治癒師の格好をしたエルフが数名いた。
「ドゴス!」
「ふぇ?」
「しっかりしろ」
「お、おう」
「貴方がドゴス様ですね。お待ちしていました、宜しくお願いしますね」
「は、はい。喜んで」
お~お、オルフェリアさんの微笑みにすっかりやられちまったな。
治癒師がドゴスの腕を押さえて、短剣で手首を切った。
手首から勢いよくピューッと血が吹き出した。
「おゎ!」
本人もびっくりしただろうが、俺達も驚いた。かなりショッキングな光景だ。
「大丈夫ですよ。直ぐに治りますからね」
美人の治癒師さんが優しく再生の魔法をかけてくれる。
「リジェネレイト!」
手も再生して一安心。
「何回か試験が必要ですので、ドゴス様にはこちらに暫く滞在して頂ますね」
「はい、もちろんです」
ドゴスは女に弱い。鼻の下を伸ばして良い返事。まぁ、これだけの美人エルフに囲まれれば男ならば仕方ない。
「じゃ、俺達は一旦国に帰るからな」
「そ、そうか。直ぐ来てくれよ」
「解ってるよ」
美人に囲まれていても1人になるのはさすがに少し不安なのか、心配そうなドゴスを残して大聖堂に戻った。
「ドゴスさんに会えましたか?」
「はい、今はエルフの国にいます」
「そう、安心しました」
「神父様の方は?」
「基本になる文字が判ったそうよ、もう少しだと思うわ」
「そうですか」
あと一息と言う事だな。今やれる事はやった、後は待つだけなので美味いものでも食べて宿でゆっくりする事にして大聖堂を出た。
「なに食べる?」
「そうですね、美味しい肉料理が良いです」
ドゴスの流血シーンを見たせいか、シンシアの瞳が若干紅く色づいている。
「よし、そうするか」
王都で有名な高級店シャブリアンに行く。俺も入るのは初めてなのだが。
「凄いです。お城に来たみたい」
「好きなの頼んで良いぞ」
「はい」
リサ、レナはコカトリスのむね肉をミンチにして、丸く形成し揚げたツクネボールを頼んだ。昔、勇者が考案したものらしい。
俺とシンシアはミノタウロスのステーキにした。直径は10cm程度だが厚さは5cmもある。
ミディアムレアでいただく。シンシアはもちろん血が滴るレアだ。
美味い!口に運ぶ3回に1回は肩に有る時空間からミイが顔を出すので口に入れてやる。
ワインを飲んでくつろいでいると神官が入って来るのが見えた。
「シン様、司教様が銅板の解読に成功しました」
「本当ですか?でも、よくここが判りましたね」
「シン様がお持ちのメダリオンで」
「あっ、そうか」
急いで大聖堂に戻ると神父様とシスターが待ち構えていた。
「やりましたね、神父様」
「うむ、肩の荷がおりたよ」
「大聖堂の5階に有るテラスで、実験をする準備をしています」
「いよいよですね」
「待ち遠しいな」
「司教様、場所の確保が整いました」
「解った。皆、行こう」
「はい」
大司教を先頭に大聖堂のお偉いさん達も総出だ。テラスには16枚の銅板が置かれていた。神父様が資料を基に神官達に銅板の並べ方を指示していく。
順番があるのだろう。選びながら4枚1組にして大きな四角形を作り、その上にその都度45度ずらした形で重ね置いていく。4枚1組で4重の物が出来た。
「よし、この順で間違いない」
神官様は、ふぅ~っと息を吐いた。
「では銅板に書かれていた呪文を唱える」
皆が息を飲む。
「ザイゲン・トゥア・ヘイスリィ!」
神父様が呪文を唱えた途端、銅板は光だし東の方へ1本の光の線が向かって行った。
「こ、これは?」
「この光の先に不浄の門が在るのだろう」
「この方向からすれば、やはりゼオノバ王国なのであろうな?」
「大司教様の仰る通りかと」
「シン、この光を追って行ってくれ」
「解りました」
ーー
夜になっても光の線は消えることなく見えている。この光は直ぐに世界中に知れ渡り、大騒ぎになった。
「知らない人達にとっては、何事かと思うのでしょうね」
「さもありなん。エルフの国に連絡する手間が省けていいや」
「とは言ってもちゃんと報告した方が良いですよ」
「解った、ドゴスも気になるしな」
ーーーーーー
光の最終地点はゼオノバ王国の東に在る、サルバレルカ山の側の上空で切れていた。
「どういう事でしょう?」
「見えはしないが、あそこに門が在るのだろう。よし、場所は解ったエルフの国に行こう」
「遅いぞ」
開口一番、俺に文句を言ったドゴスだが、肌はツヤツヤで少しポッチャリしてる。環境がとても良かったようだ。
「太ったなお前」
「そ、そんな事はないぞ、あれからたくさん血を取られて大変だったんだ」
「ホントか?」
「ああ、エミィちゃんに聞いて見ろよ」
治癒師さんを、ちゃんずけで呼んでるし。全く緊張感がない。
「心配して損しましたね」
アドレイド卿が言うには、完成するまでもう少しかかるとの事だ。ドゴスが寂しがるので俺達もここでお世話になる事にして、魔道具の完成を待つことにした。いよいよ大詰めだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます