第27話 ターンツの血筋

 業火の炎で勇者は跡形もなく燃え尽きてしまった。


『許せ、気配が読めなかった』


「……いいえ、あんなに簡単に返事を貰った時に気づくべきだった。俺には勇者の気持ちなど解ってやれないし解らない。勇者にとっては耐え難く、恨みは何年経っても消える事の無い物で、覚悟は相当な物だったのでしょう」


『3000年前は考える余裕などなかったのだ。神々の特殊な魔力だけが不浄の門の膨張を止める事が出来た。わしの魔力は残念ながら役に立たなくてな、今まで生きながらえている訳だが12神は消えてしまった。それでも不浄の門は2つ残った』


「それを止めたのがメレ一族ですか?」


『そうじゃ。不浄に取り憑かれた者との戦いで、偶然に判った事だった。犠牲になった者達が、誰でどんな形で選ばれたかは知らんがな』


「……」


思い出したようにシンシアが呟いた。


「ターンツの血筋の人が居なくなってしまいましたね」


あぁ、……残念だが……これからどうしたら良い、ん……。


「いや、いるぞ」

「えっ?」


「ドゴス」


「ドゴスさん、そうか……でも何処にいるんでしょう?」


「判らんがギルドで聴いてみよう。各ギルド同士の連絡網が有るから判ると思うぞ」


龍神様に残っているガバ酒を全部渡し、お礼を言って微かな望みを持ってエルフの国のギルドに向かった。



「いきなり行って協力してくれるでしょうか?」


「それもそうだな、1から説明するのも面倒だ。お城へ直接行った方がいいか?」



ーーーー


「シンさん、ニコニコして、この前までの緊張感は何処に行ったのです?」


「ん、まぁ、慣れたのかな」


美人エルフのオルフェリアさんに会うのが楽しみとは口が裂けても言えんな。


「お話は解りました。貴方に協力するよう手紙を書きましょう」


「ありがとう御座います」



「これがあればバッチリですね」

「ああ、ギルドに急ごう」



ーー


「いらっしゃいませ、本日のご用件は?」

「ギルド長に会いたい。これが紹介状だ」






「後は待つだけだ」

「見つかりますかね?」


「どうかな?見つからなければ今度こそ、お手上げだ」



「ここにいたか、待たせたな。ドゴスの居場所が判ったぞ」


「助かった。で、どこに?」


「レイゴの街でギルドの依頼を受けているそうだ。戻ってきたら、何処にも行くなと言ってくれる」


「ありがとう御座います」

「なに、上手く行くといいな、頼むぞ」

「分かった」



「ここからレイゴの街に行くなら、時空間使ってアルダルト王国の王都に行った方がいいな。人目の無い所に行って時空間に入ろう」


「「「はい」」」


エルフの国に戻って来るのは、魔道具を作って貰うので決定だ。移動後回収せずに、ここにも時空間を置いておく事にして、大聖堂横の時空間へ移動だ。




「シスター、ただ今戻りました」

「お帰りなさい。どうでした?」


「龍神様には会えましたが……」


ーー


「では行方不明の神官の村の人達が3000年前の犠牲になった子孫なのですね」


「はい」


「あれ?と言う事は神官さんも子孫と言う事ですよね」


「……確かにそうだけど、まだ帰って来ていないのであれば、村の人達と一緒に勇者に殺されてしまった可能性が高い」


「そうね……でもまだ判りませんよ」

「そうですよ。シスター、まだ判りません」

「ありがとう、リサさん」


「そうだな。シスターすいません」

「いいのよ」


「それで銅板の方はどうですか?」


「神父様が、かかりっきりで調べてますが肝心な事はまだです」


「そうですか、ではレイゴの街に行って来ます」

「お願いね」






前の時と同じで、イカルガ王国のレイゴの街には一週間で着いた。逸る気持ちでギルドに向かう。


「ドゴスさんは、もう戻っているでしょうか?」

「だといいな」



「シンと言います、ドゴスに会いたいとエルフの国のギルドから連絡をとってもらった者ですが?」


「ちょっとお待ち下さい。ギルド長を呼んで参ります」



「待たせたな、ギルド長のマティックスだ。ドゴスは今呼びに行ってる、もうすぐ来るだろう」


暑苦しいそうな熱血漢風な大男だ。


「そ、そうか。すまんな」


「それでだ、大筋はエルフの国から通達があったのだが、もうちょっと詳しい話が聞きたいんだがな?」


「あ、ああ、別にいいけど」


どうやら各国に連絡してくれたらしい。


ーー


「む~ん、とんでもない話しだな」

「その通り」


「失礼します。ギルド長、おみえになりました」

「おう、入ってくれ」


ギルド長室に入って来たドゴスを見てホッとする。


「シン、久しぶりだな」

「ああ、元気そうで良かった」


「お前達のお陰だ。あの時、俺独りだったらどうなっていたか判らない。感謝してる」


あの時のドゴスの力の無さは心配だったからな。


「シン、ここまでして俺を捜すのは余程の事だ、何があった?」


「お前に頼みがある」

「シンの頼みだ、言ってくれ」


「お前の血が欲しい」

「はっ?」

「辛い話しになるが聴いてくれ」



ーー


「……その勇者は死んだのか?」

「ああ、業火に焼かれて跡形もなくな」


「そうか…………不浄の話しは俺も耳にしている。ターンツの血筋か……。解った、俺の血が必要なら使ってくれ」


「ありがとう。すまんな」

「で、俺はどうすればいい?」


「今から俺達と一緒にエルフの国に行ってもらう」


「シン達と一緒に旅か、それも良いな」

「ドゴスさん、一瞬ですよ」

「えっ?」


ギルド長にお礼言って外に出た。


「この辺で良いな」


理由の解らない顔をしているドゴスをよそに、俺は皆を時空間に落とした。

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