第25話 強襲
武装した異様な集団、行方知れずになっている奴隷達だ。
「私は、てっきり勇者が後ろにいると思っていたのですが」
「俺もだ」
「違った、と言う事ですか?」
「……いや、予め指示を出していたんじゃないか。おっと、話は後だ。奴らを止めないと」
騒ぎを聞きつけた冒険者達が、武装した奴隷達と戦い始めている。
倒しても倒しても起き上がって来る奴隷達を見て、冒険者達に動揺が走る。
奴隷達は自分の腕が無くなろうが脚を切られようが一切構わず、城に向かって進んで行く。
「何だこいつら?」
「なぜ死なない……」
「あんた達、噂で聞いた事が無いのか?首を落としても動く連中の話し」
「えっ、あの話しは本当だったのか」
「取り合えず手足を切り落とし動けなくしろ」
「わ、解った」
不浄から解放する魔道具は、俺しか持っていない。奴隷達が無惨に手足を切り落とされるのを見たくは無いが仕方ない。
奴隷達の数はどんどん増えて行く。まさかいなくなった2000人が全て来るんじゃ無いだろうな。
今の時点でも圧倒的に数の差が有る。これ以上は考えたくも無い。
冒険者を蹴散らし、武装した奴隷達は黒い水のように城にへ流れこんでいく。
「くそっ、どうにもならない」
「シンさん、城に行きましょう」
「ああ、そうだな。済まん」
城の中に入ると奴隷達で溢れかえっていた。
「何で重臣と王族のいる所に行かない?」
奴隷達は上階に上がる階段の手前で停まっている。
「シン様、もしかしたらエルフの結界では有りませんか?」
「そうか、エルフだもんな。……小分けにすればここにいる連中なら時空間に落とせそうだ。地道に解放して行くか」
「奴隷達は何故暴れ出さないのです?」
「う~ん、たぶんだがな、与えられた命令しか出来ないのではないかな」
「所詮は不浄に呑まれた者と言う事ですね」
「ああそうだ。勇者の奴はどうやって操っているのかは判らんが」
どのくらい時が経ったか?生き残っている奴隷の数は200人程度だった。手足を切り落とされて動けなくなった者も含めれば相当の数だし、獣王国で発見された倍の数になる。
こんな連中がこの数で攻めて来たらたまらんな。とても1人では無理だ。全ての奴隷を解放して時空間の外に出た時は城の中は暗かった。
「何者だ!」
「私達はただの冒険者だ。怪しい者ではない」
俺達に向かって来たのはエルフの兵士と騎士だった。
「貴殿達はここで何をしている?」
忽然と武装奴隷達が消えたので、結界を解いて街と城内の様子を調べていたらしい。街の中はおびただしい血と、今はもう動かなくなった手足の無い死体が転がっている。
兵士と冒険者達が対応におわれていた。
ーー
「えらいことになった」
「シン様、調度いい機会では有りませんか」
「頑張りましょう」
「簡単に言ってくれるなよ。人族ならまだしも、エルフの国王に会うなんて流石に経験が無いからな」
俺達は、エルフの国王とお偉いさん達に不浄について説明をする事なってしまったのだ。
武装奴隷達が城内から消えた事も説明する必要があったので、スキルを公にしたくない俺の希望が通り、謁見の間ではなく限られたお偉いさん達だけで個室で行われる事になった。
「さて、一から説明して頂ましょうか?」
俺に質問をしてきたのは、神事担当だと紹介された女性のエルフだ。
リサ、レナに手伝ってもらって今までの経緯をなんとか説明する。
「……そうでしたか。不浄の門の場所と対応の方法はこれからと言う事ですね?」
「はい。場所は銅板を所持しているセレブレイの国王が積極的に協力して下さり、アルダルト王国の銅板と合わせて解読している所です」
セレブレイを援護射撃してエルフ国王の印象を良くしておかないと。
「そして私達が龍の谷に行き、話しを聞いて来ます」
「そうですか……陛下、この者達は嘘、偽りは言ってないようで御座います」
「オルフェリアが言うのであれば間違いないのであろうな。この城を襲った者達を確保し、この世界の為に動いてくれていた事に感謝する」
「もったいないお言葉で御座います」
「アルダルトとセレブレイが手を尽くしてくれておるのだ。我らに出来る事はないか?」
「シン様、エルフの国には不思議な魔道具がたくさん有り、作る技術も優れていると聞きます」
「なるほど……陛下、お願いが2つ御座います」
「申してみよ」
「1つ目は、今置かれている現状を各国に至急報せる方法があれば、と思います」
「うむ、もう1つは?」
「取り憑いている不浄から解放する魔法、ブレイクノンマテリアルとリマインドを使う事の出来る魔道具が数多くあればと思います」
「解った。どうだ、アドレイド卿、出来そうか?」
「お任せ下さい」
「感謝致します」
ーーーー
「良かったですね、シンさん」
「まだ心臓がバクバクしてるぞ」
「何を言っているんです、シンさん。ナーシャ様、キクリア様、ハデス様、神ともバンバン話しているではありませんか」
「お~、そう言えばそうだ」
今回、正気に戻った奴隷達は俺がアルダルト王国のウルム村に連れて行こうと思う。教会裏の土地を開墾して、自分達の居場所を造ればいい。
行方知れずになった奴隷達はまだ半分以上いるのは気がかりだが、俺達は西の山に在る龍の谷に行く事にした。
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