第23話 召喚された勇者
情報を集めた結果、勇者を召喚する専用の建物を新しく建てたので、明日の祝典に出席し民達の前に姿を見せるらしい。
「運が良かったな」
「でも召喚用の建物を造るなんて、これからたくさん召喚するって事ですよね?」
「そうなるな」
「何を考えているんですかね?」
「それは帰ったら、バンテスさんに聞いてみるか」
翌日、街の人達に紛れて、よく観れるようにバルコニーの前に陣どる。
盛大な音楽と共に国王と若者が出てきた。あれが勇者なのだろう。変わった紋章を襟に付けている。見た事のあるような無いような、なんかムズムズする。
観た感じでは不浄に取り憑かれている様子は無い。
「どうです?」
「取り憑かれてはいないな」
「では、どうして妨害するようなまねをしたんでしょう?」
「解らん。ただ、あの勇者は不浄の事を知っているのだと思う」
「邪魔をするって言う事は、発覚するのが困るし無くなっては困ると言う事ですね」
「それはつまり不浄に取り憑かれている人達を利用しようとしているから?」
「なるほど、その辺が答えかもしらん」
「問題は何で知っているかって事ですね」
「召喚されたんだ、知る訳がない。噂を聞いて考えたのか……元の世界にも同じ事があったか?」
「私達が散々いろんな所に行って得た知識を噂だけで思いつくでしょうか?」
「そうなるとやはり1度経験してると言う事になる」
「この国の内情と勇者の素性が知りたいですね」
「そこだな、やっぱり。よし、ここには何時でもこれる、一旦戻ろう」
「「「はい」」」
時空間の埋めて在る場所に行って中に入る。
「時空間を連結させるのは初めてだからな、ドキドキする」
「シンさんを信用しない訳ではないけれど、不思議ですね」
「それは俺もだよ」
先ずは繋げる先の時空間を思い浮かべる。すると時空間の左の壁に扉が現れた。
「「「「おお!」」」」
皆して歓声を上げた。
「す、凄いですね」
「おう、では扉を開けるぞ」
「同じ感じの部屋ですね」
「入るぞ」
「「「はい」」」
部屋を移動し上を見る。大聖堂の横に在る創造神の使いである神獣、ラバンの像が見えた。
「戻って来た」
「やった」
人がいないのを確認して外に出た。
「やっぱり凄いです」
「ホント」
ーー
「早かったな、シン」
「ええ、俺のスキルのお陰です」
「ふふ、使いこなしているな」
「バンテスさんは?」
「もうすぐ来るだろう」
「失礼します。神父様、お呼びでしょうか……シン様?」
「無事に戻って来ましたよ」
「それでは……」
皆を外に出してあげる。
「あなた」「父上」「旦那様」
「良かった……」
家族との再会も無事に終わりバンテスさんに話を聞く事にした。
「セレブレイの事を詳しく聴かなければなりません」
「解りました。私達はセレブレイに戻る事は無いので知っている事は全てお話し致します」
「助かります。最初に聴くのは、勇者召喚を何故したかです」
「それはエルフの国との交渉を有利に進める為です」
「エルフ?……有利にですか?つまり事が上手く進まなければ戦いも辞さないと?」
「そう言う事です」
「何を交渉するつもりですか?」
「エルフの国の魔素の霊脈の1部売却もしくは使用許可」
「魔素の霊脈の売却なんてエルフが許す訳がない」
「それは解っています……しかしセレブレイに在る霊脈は枯渇寸前なのです」
「な、なるほど……そうか。勇者の素性は判りますか?」
「いえ、勇者様は何も……ただ側仕えが、酔って独り言を聞いた事があるって言ってました」
「なんて?」
「『俺はこの世界に戻って来た』と言う内容だったと」
許可この世界に戻って来た?……。
「解りました、ありがとう御座います」
ーー
「勇者はセレブレイの為に不浄の力を使おうとしているのでしょうか?」
「純粋にそうだとは思えん、そうだとしても間違っている」
「そうですよね」
「それに、この世界に戻って来たと言うのが、おかしいんだよ」
「確かに」
「その通りに受け取れば、この世界の者と言う事です」
「この世界の者で、不浄を知っている者で召喚でここに来た者?一体何者だよって話だな」
「シン様、この世界で召喚出来るなら、他の世界でも召喚出来ませんか?」
「はは、シンシアはまた突拍子もない事を言い出したな……あ、あり得るか?……待てよ」
「あっ、シンさん、何処に行くんです」
「神父様の所だ」
「私達も行きますよ」
「紋章の辞典みたいな物がみたい?また変わった事を言うなお前は」
ーー
「大司教様に許可を頂いた。これが図書館に入る為のメダリオンだ。但し、時間制限付きで入るのは1人だ」
「ありがとう御座います」
うわ~、見てはいけなさそうな本が並んでいる。見たいが、ここに居られる時間が限られているので調べるのが先だ。
ここからが古代から今までの各国の紋章一覧だ、どれどれ。
…………あった、これだ。魔鳥ラギュウスが蛇を掴んでいる紋章、間違いない。
メルレ王国、シュタイン家の紋章だ。メルレ王国、メルレ、メルレ?ダメだ思い出せん。リサ達に聞いてみよう。
「あっ、シンさん、何か判りました?」
「判ったんだが肝心な事が出てこないんだよ」
「何ですか?」
「メルレ王国と言うのが、聞いた事が有るような無いような」
「なんだ、そんな事ですか」
「知ってるのか?」
「シンさんも行ったでしょ」
「そうですよ」
「へっ?」
「私達の国ですよ、メルレ村」
「あっ!」
えらいこっちゃ。
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