第22話 偽装
「シン、魅了が解かれてると判ったら、この方の身が危ないのではないのか?」
「確かに」
「そ、そんな、酷い。私はどうしたら良いのです?」
「国を棄てる気はありますか?もちろん家族や大切な人は連れて来ますが」
「どう言う意味でしょうか?」
「それは……」
ーーーーーーーー
「これよりセレブレイへ出発する」
セレブレイから来た使者の一行は銅板を全て持って帰路についた。
唯一の救いはルミナモスの苔の光で銅板の文字が映し出された事だ。これで手がかりは銅板2枚になった。
「シン様、使者の一行の姿が見えなくなりました」
「分かった。では神父様、行ってきます」
「頼むぞ」
「はい。皆、行くぞ」
「「「了解」」」
今から俺達は使者の一行を追って、使者を殺しに行くのだ。
馬に乗って先回りをする。襲うのは森に入る手前だ。
「シンさん、使者達が来ます」
「よし、行くぞ」
「はい」
「皆さん、お面をかぶるの忘れてますよ」
「おっと、いかん」
全員で使者の一行に向かって突撃だ。
「貴様ら何者だ!」
「へっ、盗賊が名乗るわけないだろ、バカか?」
「くぅ、皆、バンテス様をお護りしろ」
「はっ!」
「無駄だ」
「ぐわっ」
「バンテス様!」
『ライ頼む』
『ぐわぅ』
「ボ、ボルッテクスタイガー」
「ああ、バンテス様が……咥えられて……」
『あとは神殿警護兵に任せて行くぞ』
『『『はい』』』
ーーーー
「とんだ三文芝居でしたね」
「いえ、お陰で助かります」
「セレブレイから家族は必ず連れて来ますのでご安心を」
「お願いします」
ーー
「よし、勇者を拝みにセレブレイへ行くか」
「「「はい」」」
問題なくイカルガ王国の領地に入る。以前来たレイゴの街を過ぎると、青のダンジョンが在る街グラスサフィに着く。
「平和な世なら、ダンジョンを攻略したかったがな」
「全てが終わったら来ましょうよ」
「そうです」
「皆でダンジョンと観光地巡りです」
「そうだな」
急に後ろから声をかけられた。
「シンじゃないか」
「……ケレンか」
流星の皆もいた。
「元気だったか?村に帰ったと聞いていたが」
「今はこの
「スキルが戻ったのか?」
「まあね」
「そうか……」
「元気そうねシン」
「ああ、リマリスも幸せそうだな」
「……ええ」
「心配してたぞシン。スキルが戻って良かったな」
「ああ……」
ペタス……お前、……そうか、あの時から……。
『ケレン、話が有る。独りで酒場へ来てくれ』
『……分かった』
夜、皆に理由を説明して独りで酒場に向かうとケレンは奥の席で飲んでいた。
「待ったか?」
「エール1杯分な」
「すまんな」
「そんな事は気にするな。それより、ただ事では無いのだろう?」
「そうだ、実はな……」
「何だって!……そんなバカな事……話しには聞いていたが……ペタスが……だからか、……くそっ、どうすればいい?」
ーー
「リマリス、君の協力が必要だ。下手をすれば、ペタス自身の身が危ない」
「信じられない。ペタスがそんな前から不浄に取り憑かれていたなんて……シン……ごめんなさい。……解ったわ、何をすればいいの?」
「シンから借りた魔道具だ。俺と協力して続けてやる。いいか?」
「はい……」
ーー
「2人とも、どうした?お揃いで、俺の顔に何かついているのか?」
「いいえ、何でもないわ」
「そう、何でも無いさ」
ーー
ペタスに異常はみられない。どうやら上手く行ったようだ。
「シン、ありがとう。お元気で」
「シン……凄いなお前は」
「よせよ」
「何かあったらギルドに連絡してくれ、何でも協力する」
「ああ、頼む」
「無事すんだのですね?」
「ああ」
「今日は皆で飲みまくりましょう」
「ですね」
翌日は案の定、二日酔いになる。シンシアにヒーリングをして貰い、何とか食事をして出発。8週間が経ち、目の前のパンパミーの大河を渡れば魔法国家セレブレイの領地に入る。
馬車は大橋を渡りセレブレイへ入った。
「重苦しい感じですね」
「確かに」
「勇者は間違いなく不浄と関係していると俺は思う」
「そうですね」
「バンテスさんのご家族を説得してから勇者の顔を拝む方法を考えよう。王都に急ごう」
「「「はい」」」
王都ラジャナイツ、独特の建物が建ち並ぶ。
「変わった建物ですね」
「まさに異国って感じです」
「俺達の国は西の端、こっちは東の端だからな」
「このお屋敷がバンテスさんのお屋敷だと思います」
「良いところですね」
「そりゃ使者になるくらいだからな」
門番にバンテスさんに書いて貰った手紙を奥様に渡すようにお願いすると、暫くして執事の人が屋敷に入れてくれた。
通されたのは小さ部屋だった。直ぐに女性が入ってきた。日にちの調整をしたので予定通り使節団が早く着き、奥様にバンテスさんが盗賊に襲われ魔物に喰われたと告げたのだろう。瞼が赤く腫れている。
「この手紙は真でしょうか?」
「間違いありません」
「私はどうすればよいのでしょう?」
「貴重品、必要な物を集め、お子様をお呼び下さい」
「執事も連れて行きたいのですが?」
「信用が出来る方であれば」
「それは保証致します」
直ぐに準備が整った。
「では失礼致します」
全ては俺の時空間の中に収まった。
「これで安心ですね」
「その通り」
「シンさん、こんな所に来てどうするのです?」
「念の為に逃走経路を造っておこうと思ってな」
「こんな河辺に?」
「少し前に俺の時空間創生のスキルがレベル10になった」
「凄いですね」
「それでだ、俺が造った時空間同士を繋げれることが出来るらしい」
「それって?」
「既にアルダルト王国の王都プテオの大聖堂近くに時空間を造って埋めてある」
「その心は?」
「解った」
「はい、リサ君」
「そこに一瞬で行ける」
「御明察」
あとは勇者の顔を拝むだけだ。待ってろよ。
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