第10話 疑問

 女に言われた2階の部屋に突入する。女達が一斉にこちらに振り返る。1番年下の女が呪文を唱え様としたが、リサが意識を刈り取ったので3人とも床に倒れこんだ。これで、ひと安心だ。とは行かなかった。



「おいおい、またかよ」 「そんな、まさか」


3人はムクリと起き上がり、壁に掛かっていた剣を取って襲いかかって来る。


ベケス達は素っ裸にされ、十字の棒に縛られて気絶している。見られる心配が無いので、女達を時空間に落とした。


中に入り剣を取り上げ、部屋に有った十字の棒に縛り付けて外に出すが、途端に棒から逃れ様と必死に動きだす。


「何なんでしょう?」

「解らん」


暫くもがいていたが、獣王国の蜥蜴男と同じ様に黒いモヤモヤがすうっと出ると動かなくなった。


ベケス達の縄を解いてやり、顔を叩いて気付かせる。皆、裸なので、リサ、レナが手で顔を覆うが、指の隙間からしっかり見ていた。興味が湧く年頃だもんな。


「う~ん。ああ、兄さんか、助かったぜ。酷い目に合った」


「説明するが、服を着てくれ。レディが居るんでな」


「おっと、すまねぇ」




地下に降りると、メイドと下男がライに乗られて手足をバタバタしていた。


「うっ、何でこんな所に、ボルテックスタイガーが居るんだ」


「俺の従魔だから大丈夫だ。それより地下室を見てくれ」


俺に促されて、皆が地下室に入った。何とも言えない臭いがする。


「なっ、何ですかこれは」

「酷ぇ事をしやがる」


「俺達もこうなる所だったのか?」


御者と商人が、顔を青くして吐いた。


屋敷に有った馬車を拝借して、イドの街へ行く。ギルドに屋敷の住人を引き渡す。母親と思われる女性は、1階の奥の部屋にいた。病気なのは本当の様だ。


事情を説明すると、ギルドマスターを始め全員が驚いていた。あの三姉妹は、金の無い者からは治療費も取らず診ていたらしく人望が有り、母親の病気を治す為に、日々研究をしていたそうで、とても信じられないと言う。


「母親の病気を治す為に、あんな人体実験をしたのでしょうか?」


「正気の沙汰とは思えない、獣人や人に魔物の子を産ませたり、その子供を使ってツギハギだらけの生き物を造るなんてな」



「今、ギルドマスターから聞いたんだが、そんな事をやった記憶が無いって、言ってるらしい」


「……」

「あんまり驚いて無い様だな」

「そんな気がしてたんでね」


ここまで来ると、あの黒いモヤモヤのせいとしか、考えられない。犯罪や揉め事が増えたのもそのせいかもな。



馬車は乗り換えなので、ベケス達ともお別れだ。


「兄さん達、世話になったな」

「今度会ったら、ご馳走してくれよ」

「お安いご用さ、またな」




ハイフレストからペンタスの街へと進むと、犯罪が増えたと言う話しは聞かなくなって来た。


「どう言う事でしょうか?」


「例の黒いモヤモヤは、こっちの方までは、まだ来ていないのかも知れん」


「やっぱり国王が殺された、ゼオノバ王国が中心なのかしら」


「可能性は有るな」


やはり不浄の門は何か?って話しになるが、場所はゼオノバに在るのか。もう少し情報が欲しかった。




ブラウン神父の話しも聞きたいので、ウルム村にも寄った。


「よお、シン。嫁を2人も連れて里帰りか?」

「違いますって、パーティーの仲間です」

「早く嫁をもらえよ。お前はその方が良いぞ」


「はい、そうします」


小さい時、よく飯をご馳走になった、知り合いのおじさんだ。




「行く先々で間違われますね。お似合いって、事でしょうか、お姉様」


「ふふ、そうですね」



「神父さん、ただいま」

「お帰り。シスターは元気だったかい?」


「ええとても。神父さんにも会いたがっていました」


「そうか、今度行って見るか」

「そうして下さい」


「で、進展は有ったかい?」

「それが……」


「ふ~む、アンデッドでもないのに首を落としても動くか。黒いモヤモヤね……シンの考えで大体あってるのではないかな」


「黒いモヤモヤは、不浄の門からやって来るで合ってますかね。どう言う物かは解りませんが。神官様の村の話しはどうです?俺達の邪魔をしてる感じがしますが」


「そうだねぇ、怨みの方が強そうだ。今回は偶々、重なった感が有るな。家を燃やした点は別の理由が有りそうだが」


「そうですか」


怨みなら、リサ、レナの村は大丈夫そうだ。気が楽になったが、行く予定は変わらない。とにかく手掛かりが欲しいのだ。



「神父さん、いつもすいません」


「なに良いさ、今度シスターの所に行く時は、私も行っていいか?」


「もちろんです。喜んで」


「そうか、気をつけてな。リサちゃんレナちゃん、シンを宜しくな」


「「はい、お任せを」」



ここからは、用意した馬車で自分で御して行く。


「どのくらいで着けそうかな?」

「来る時は歩きでしたので」


「ううう、苦労したんだね」

「気持ちが全然こもっていませんよ」


「そうか、すまん。冗談はさておき、君達の国の他の3部族は古の神々とは関係無いの?」


「ええ、他の部族は別の地方からやって来たそうなんです」


「それって、別の地方の生き残りって事じゃないの?だとしたら、言い伝えの1つでも有りそうなもんだ」


「あ~、そう言う考え方も有りますよね」

「シンさん、凄いです」

「年の功ってもんだ」


「帰ったら、長老に話してみますね」

「それが良い」



結局、リサ、レナの村に着くまで6日かかった。俺も世間知らずの口だな、こんな所に部族集合体の国が在るとは。


「シンさん、後で長老に紹介しますので、宜しくお願いしますね」


「おう、任せとけ」

「それまで家で待ってて下さい」


「君達の両親は?」

「いませんよ」

「……そうか解った。待ってるよ」



リサ、レナは元気に長老の家に向かって行った。


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