第6話 シスター・テレサ

 服を礼装に着替え、大聖堂に来た。余りの大きさと威厳でリサ、レナは固まった。


「ふぇ~」

「い、いいのでしょうか?私達が入っても」


「大丈夫だよ」


幅広く長い階段を上がり中に入る。入口に立っている若いシスターに用件を告げる。


「お約束は御座いますでしょうか?」


「手紙を預かって来ました。これを渡して頂ければ、シスター・テレサ様は、お会いして下さるでしょう」


「解りました。こちらのお部屋で、お待ち下さい」



結構待たせるな。シスターも、だいぶ位が上がった様だ。



「シン!まあ、本当にシンなのね」


俺がスキル鑑定の儀を受けてから、1度会ったきりだ。15年振りになる。


「ご無沙汰してすいません」


「まあまあ、綺麗な女性を2人も連れて、2人ともシンのお嫁さんかしら?」


「ち、違いますって、パーティーの仲間です」

「そうなの、残念ね」


「リサと申します」「レナと申します」

「テレサよ、宜しくね」


「シスター、手紙には何と?」


「シンの話しを聞いてやって欲しい、とだけ。何が有ったの?」


リサ、レナが俺を見て頷いたので、俺は今までの事を話した。



「不浄の門ですか……」

「心当たりが有るのですか?」


「いいえ、調べて見ましょう。それと発見されている遺跡の中で、智の神の物とされているは、獣王国とエルフの国の間に在る、森の中の遺跡と言われています」


「失礼致します。テレサ様、司祭様とのお約束の時間で御座います」



「分かりました。シン、ごめんなさいね。ゆっくり話せなくて、何かあったら必ず来なさい。これを」


シスターは、創造神の姿が彫って有るメダリオンを渡してくれた。


「これが有れば、何時でも会えます」

「分かりました。ありがとう御座います」





「シンさん、これからどうします?」

「シスターに教えてもらった、森へ行って見よう」



この国からだと、獣王国ベルンガルが先に行く所になるので、馬車の予約に行く。昔と違って観光地になっているからだ。


人族と獣人達は昔から仲が悪かった。人族が見下して奴隷扱いしていた時期も有る。獣王国に自由に往き来出来る様になったのは、国王が代わった、5年位前からだ。


南国の獣王国には、綺麗な森と湖が在るので、他国から訪れたがる人が多かった。その人達が落としていく金銭は、バカにならないと新国王は考えたのだ。実際、今は国に大きな利益をもたらしている。そして国民の生活水準も上がった。


街中に入ると、人族と争ったのは昔の事の様に見えるが、まだまだ根深い物が有る。



俺達が街に着いた時、宿は一杯で空いていなかった。仕方ないので、街外れに時空間を造る。下手な宿屋より快適だ。


食事中に頭の上を通るのはだいぶ馴れたが、街外れと言うのに人通りが多い。酔っぱらい、客を連れた娼婦などだ。


ミイの争奪戦に勝った俺は、ミイを抱いて、気分良くベッドに入った。


ミイをもふもふしていると、顔の上を獣人の娘を抱いた集団が通る。人拐い……獣人拐いか?


「ミイ、あの男達の、アジトを見つけて来てくれ」

「にゃ、にゃう」


ミイは張り切って出ていった。


「どうしたんです?」

「うん、事件かも」



ミイが男達の跡を追っていく。ミイのスキル知覚共有で、ミイの見ている光景が俺の頭の中に映し出される。なかなか便利なスキルだ。


男達は、防壁を風魔法を使って越えて行く。かなりの手練れの様だ。川を越え森の中に入り山間を進む、そして洞窟に入った。



暫くしてミイが戻って来た。どうしようか?


「ギルドに行ってくる」

「私達も行きます」



夜遅いと言うのに、ギルドの中には強面の獣人達が集まっていた。さっきの獣人拐い絡みだろうな。


「何だお前は?こんな遅くに」


「怪しい男達が、森の中の洞窟に入って行くのを見たんですが」


「本当か?ギルドマスター、そいつらだ」

「うむ、そうだろうな。君、案内を頼めるか?」


「ええ、良いですよ」

「助かる。お前ら行くぞ」


「おう」


ーー


「この先の洞窟です」

「君は、何だってそんな所にいたんだ?」


「いやぁ、宿が無くて、寝る所を探していたんですよ」


「そうか、大変だな。お陰で助かったが」



「この洞窟です」

「よし、お嬢様の身の安全が最優先だ。いいな」


「分かりました」



ギルドマスターが直々に来たのだ、重要人物の娘かなと思ったが、その様だ。


皆、洞窟の中に入って行った。


「強者ばかりだ、俺達の出番は無いな」

「その様ですね」


「……にゃあ」


「うん、そうも行かない様だ。リサ、レナ気を付けろ」


「「はい」」



10……いや、20人って、所か。囲まれた様だ。ただの盗賊では無いな。


一斉に襲いかかって来るが、リサの間合いに入った奴らは、頭を抱えて倒れて行く。それを見たレナが、奴らに突っ込む、レナの周りには俺の時空間を置いてあるので、飛び道具や魔法が飛んできても大丈夫だ。


レナが、残りの連中をファイアーボールで仕留めて終了だ。


「何が有った?」


洞窟内も決着が付いた様で、出て来たギルドマスターが倒れている奴らを見て聞いてきた。


「そいつらの仲間だと思いますよ」

「そうか、やるな君達も」


助け出されたのは、虎柄が可愛い耳の、虎族のお嬢様だった。


「では、俺達はこれで」


「まあ、待て。礼をしなくてはな。先ずは宿を紹介しよう。一緒に来てくれ」


ここは、お言葉に甘える事にする。連れてこられたのは、貴族が泊まる様な豪華な宿だった。


「もちろん費用はギルド持ちだ、明日ギルドに顔を出してくれ」


「分かりました。ありがとう御座います」


部屋は1部屋だったが、問題は無い。広いしベッドも大きく5つもある。


「うわ~い、ふかふかですぅ」

「ミイちゃん、一緒に寝ましょう」


「ダメだ、今日は俺の番」

「「ぶぅ~」」


睡眠時間は減ったが、ここのギルドと顔繋ぎは出来たので良しとする。ミイのもふもふの続きをしながら、俺は眠りについた。


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