第5話 神父様の助言

 頭をフル回転させる、知恵熱が出そうだ。………………………!!!


時空間は移動させる事が出来るのだから、自分が入ったまま動けばいい?


地上に造った時空間に皆で入る。入口は側面にしておく。地中へ移動、地下の部屋が有りそうな深さ5m位で、神殿の中心の方へ進んで行くと広い空間に出た。


「上手くいったね」

「シンさん、大丈夫ですか?」

「ああ、何とか」


時空間に入ったままの移動は、魔力の消費が激しいようだ。時空間に乗るのと訳が違う。


「悪い、少し休ませてくれ」

「はい、ゆっくり休んで下さい」


「ここまで来れたのは、シンさんのお陰なんですから」


魔力回復薬を飲んで腰を降ろす。広い空間が明るくなった。レナがライトの生活魔法を使った様だ。


ここにもナーシャ様の像が有った。礼拝堂の様だ、隣の部屋には祭壇が有る。


薬が効いてきた様だ、魔力が戻ってきたのか目まいが治まった。


「リサ、レナ、大丈夫だ行こう」

「「はい」」


俺達はナーシャ様の像の前で跪いた。


俺には巫女のスキルは無いが、キィーンと耳鳴りがした後、声が聞こえてきた。


『よく来てくれまし……。長くはお話し出ません、要件……伝えます。不浄の門が開きつつ有ります、このまま……は……30……年前……同じ…………』


「ナーシャ様、不浄の門とは何でしょう?」

『詳しく……智の神……………………』


「ナーシャ様!」

「もう聞こえません」

「その様だな」





ーーーーーーーー



西の果ての森から、ペンタスの街に戻って来たのだが、リサとレナの元気は無かった。不浄の門が開くと言うだけで、肝心の事が解らないからだ。


ナーシャ様が最後に言った、智の神と言うのが唯一の手掛かりなのだが、リサ、レナは智の神の神殿の場所すら知らないらしい。



「黙って、くすぶっていても仕方ない。俺の村に行ってみないか?」


「はい、そうします」



ーー


「ブラウン神父、また来ました」


「可愛いお嬢さん2人も連れて、今度は何が有った?」


「実は、……」


「なるほど、そんな事が有ったか……。シンは覚えていないか?あれは5歳の時だったかな、私とシスターの3人で王都に行ったのだが」


微かに記憶がある。若かった神父様とシスターで旅をした記憶。


「何か、楽しかったのは覚えていますが」

「ふふ、そうか。何で王都に行ったと思う」


「皆目検討がつきません」


「裏の土地を開墾した時に、ミスリルの棺が出てきたからだ。中には遺体ではなく、我々には読めない文字と思われる物が書かれた、8枚の銅板が入っていた」


「それを王都に持っていった?」


「そうだ。当時、王都でも近くの山で遺跡が発見されていてな、役に立てばと思ったのだ。シスターは神学校で、神々の歴史を勉強していて、面白いスキルを持っていた事も有って、王都に残ったのだ」


「王都に行けば、何か判るかも?」


「うむ、シンが行けばシスターも喜ぶだろう。それから、ナーシャ様の加護を持っている事は、他には話さない方がいい」


「解りました」




「いい話が聞けましたね」


「本当にそうです。私達がシンさんに会ったのは、運命の様な気がします」


「大袈裟だな」

「そんな事は有りませんよ。絶対です」


う~ん。まぁ、俺がリッチにレベルを吸い取られ無ければ、ここには戻って来ていないからな。多少は縁が有るか。




それから1ヶ月かけて、俺が本拠地にしていたハイフレストの街に着いた。ここまで来れば王都まで、後一息だ。



「久し振りだなシン、冒険者を引退して村に帰ったと聞いていたが、若い娘とパーティーを組んだらしいな」


冒険者ギルドに寄ったら、ギルドマスターに会った。


「俺は剣で、魔法はこの娘達が担当さ」


「シンが元気で良かったよ。そうそう、流星はSクラスになったぞ。ペタスとリマリスは夫婦になった」


あの2人が結婚したのか。まぁ、今となっては昔の話だ。


「流星は、イガルガ王国のダンジョンに行っている。シンは何処に行くんだ?」


「王都にちょっと用事で」

「そうか、元気でな」

「マスターも」


俺が、この街に寄ったのには理由が有る。ある奴に、借りを返しに来たのだ。



「2人は宿で待っててくれ」

「私達も行きます」


「ダメだ!負ける気はしないが、万が一と言う事もある」


「「ぶ~!!」」

「ミイもね」


「ぶにゃ」



1人で岩山のダンジョンに向かう。奴はここの地下45階にいる。


今なら奴に勝てる筈。しかし下手に時間をかけると殺られそうなので、1発で決めるつもりだ。


2日かけて地下45階へ。確かこの辺の筈、岩壁を手で撫で回す。隠し部屋の扉が開いた。以前と同じで、宝箱だけポツンと有る。


宝箱を中に入れる様に、隠し部屋の中に時空間を造る。宝箱を開けるとリッチが出て来た。


「待たせたな、借りを返しに来たぜ」


俺は、時空間の中の時間を止めた。リッチは動かない。俺は外に出て、部屋を閉じた。


隠し部屋の中には、開いた空の宝箱ともう1つ宝箱が有った。こっちは本物の宝箱だ。


開けて見る。中に入っていたのは、死者の書だった。字は読めないので内容は解らない。捨てる訳には行かないので、一応は取っておく。



5日振りの帰還だ。ミイが飛びついて来る。


「にゃう、にゃう」

「良かったです」

「もう、心配しました」


「悪い、悪い。明日にでも出発しよう」



ーー


王都までは、街を2つ通れば着く、何の問題も無いだろう。


リサ、レナはペンタスの街から、ずっと北に在る四つの民族が集まった混合国家、アルバジールと言う国から来たので、王都に近づくにつれて街が華やかに、そして大きくなって行くのに驚いていた。


「このくらいで驚いてどうする。次の王都なんか、もっと凄いぞ」



王都に着いたのは、夕方だったのでシスターのいる大聖堂には、明日行く事にして出店や屋台を見て回る事にした。


「う~ん、いい匂いがします」

「丁度お腹が空く頃だもんな」


「この、いい匂いは何ですか?」


「オークとワイルドボワの肉を挽き肉にして、玉葱の微塵切りを混ぜ、こねて作った物を串に差して焼いた物だ」


「にゃにゃにゃにゃ~ん」

「何だ、ミイも食べたいのか?」


「よし、軽く食べてから宿を探して、どっかに美味いもの食べに行こう」


「「わ~い、やったー」」


せっかく王都まで来たのだ、この娘達の為にも何か情報が得られればいいのだが。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る