ショートショート「月からの監視」
有原野分
月からの監視
「この手紙が読まれている頃には、きっと私はもうこの世にいないでしょう。お父さん、お母さん、どうか先立つ不孝をお許しください。しかし、私は決して後悔していません。お二人が私の両親で本当に良かったと思っています。私が悲しい時、苦しい時、いつも私を支えてくれました。そのおかげで、私は愛情に飢える事なく生きて来られました。感謝の想いで一杯です。本当なのです。ありがとう、と直接言えない私を、どうか最後まで理解してください。お願いです。私を信じてください。私は確かに幸せの絶頂でした。彼と出会い、私の子供が生まれた時、それはもう本当に幸せでした。だからこそ、私は死ななくてはならないのです。人間は、幸せになどなってはいけないのです。これは私自身の報いなのです。感謝と謝罪など、とても書ききれるものではありませんが、ここで言わせてください。お父さん、お母さん、今まで本当にありがとうございました。そして、本当にごめんなさい。どうか、あなた方の未来が明るくあることを願っています。
最後に、私の骨をどうか月に送ってくれませんか? 理由はお察しください」
ああ、ありがとう。
ようやく、私は月に来られたわ。
これで、ずっと、眺めていられる。
逃げられないわね。
私は月からずーっとあなたを見ているんだから。
ショートショート「月からの監視」 有原野分 @yujiarihara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます