迷宮の異変②
「もちろん、危険は伴います」
まずそう告げた。手早く信用を得るためだろう。
一方でハウワッハ教授の薄く浮かべた笑みは、軽薄にすら見える。
「サリオン様」
「話を続けてください」
シエロを制して、ボクはハウワッハ教授に話を促す。
「明日、
救出と言っても、状況からしてヴィオを含む、冒険者パーティが迷宮で全滅したのであれば、一週間以上前の話になる。
今から王都を出発して、『氷河の迷宮』まで三日。
「全滅していたとして、すでに十日以上。とても生きているとは考えにくいですが……」
「
「生きているんですか?」
「五分五分と言ったところですね。ヴィオ様は今、迷宮内で
「それで状況も分らず救出隊が編成されたのか……」
「加えて――」
「まだ何かあるのですか?」
「この際ですから、お耳に入れて置いた方がよいかと」
「お聞きしましょう、ハウワッハ教授」
「今はまだ内密な話ではありますが、同時期に氷河の迷宮よりも更に北にある『ウル山の大迷宮』へ発った冒険者ギルド『フェンリル』の消息も途絶えています」
「『フェンリル』と言えば、我が国最強の冒険者ギルドじゃないですか」
シエロがいよいよドスの利いた声を放つが、ボクはそれを手で制した。
「『ウル山の大迷宮』でも異変が?」
「その調査に『フェンリル』が赴いたのです」
「そして消息不明か……同時期に、ヴィオ様が赴いた『氷河の迷宮』でも異変……」
「『フェンリル』から依頼を受けた、
「父上が……?」
通常の
それが
冒険者ギルドは戦闘能力が高い個人である
「おそらく父上のやっていることですが……その話を今聞いたほどですよ。昨日の春の儀式の祝宴でも箝口令が敷かれていた。そんな上層部の機密を聞かせて、ハウワッハ教授はボクたちに何をさせようと?」
発端は冒険者となった王女が行方不明。
その原因が、おそらく死霊術系の強力なゲートキーパーの出現であること。
その影響が広範囲に及んでおり、死霊術系と言うことからも、
そして未確認だが、それが『ウル山の大迷宮』のような高難度の
状況は概ねそんなところだ。
表向きはヴィオ姫救出作戦だが、妖精騎士団の真の目的は
姫様が救えればそれでよし、そうでなくても異変の情報は持ち帰る。
しかし、それではハウワッハ教授がわざわざ口外してはいけない情報も含めて、ボクに話した理由がまだだった。
「あなたの目的は?」
「『氷河の迷宮』の、今回現れたゲートキーパーの見聞。まあフィールドワークですね。妖精騎士団に同道する許可を取り付けました」
「見聞、同道……? ちょっと待ってください、貴方まさか……」
気づいたシエロがギョッとした声を上げた。
「はい。お二人に、私の護衛をお願いしようかと」
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