迷宮の異変①
それは
神話の時代、
というのが、神代の簡単なあらまし。
この
それらゲートキーパーを討伐し、この
そして、この役目を
「ヴィオ様一行が向かったのは北部、
ハウワッハ教授はそう言うと、戸棚から書類の束を取り出した。
「
シエロの方を見ると、
ボクのためにいろいろと覚えているのだと謙遜するが、その記憶力は父の秘書も舌を巻いていた。
「そんな重要な案件を、王族とはいえ、冒険者に成って三ヵ月のヴィオ様に?」
「重要ではありますが『氷河の迷宮』は全五階層の迷宮です。ヴィオ様が加入した冒険者ギルドは七階層迷宮のゲートキーパーを討伐した実積があり、全十三階層を誇るウルスス最大の
「危険はあれど、大きな問題はなかったはずだった。つまり、通年通りでないことが起きている……と」
「はい。これは……
ボクがそう聞くと、ハウワッハ教授はシエロの前に幾つかの報告書を置いた。
促されるように、彼女は先んじてそれに目を通す。
「北部の村や、
「規模が大きすぎる墓荒らし、なんてことはないか――話からすると、ゲートキーパーが死霊術系のスキルを?」
シエロの話を受けて、そう聞くと、ハウワッハ教授は頷く。
「ゲートキーパーをはじめとする、
「ええ、冒険者訓練所の座学で」
「シエロさん、死霊術系のスキルを用いられたと仮定して、その資料から気になる点はありませんか?」
聞かれて、シエロは可愛らしく小首を傾げる。
そして十秒もしない間に、口を開いた。
「……広いですね」
「どういうこと? シエロ」
「被害は氷河の迷宮の周辺……でも、その範囲が随分と広いのですサリオン様。地図をお借りしても?」
「どうぞ」
シエロは立ち上がり、部屋に掛けてあったウルスス連王国の周辺地図から、氷河の迷宮の位置を指さし、それから南に下って王都と中間付近を指さした。
「氷河の迷宮はこの位置ですが、わたしの記憶が確かなら、一番南側で被害を受けた村は氷河の迷宮よりも、むしろ王都ニーベルンに近い位置にあります」
「その村から氷河の迷宮までは、地図によると一日以上……封印迷宮の最奥、ゲートを維持しているはずのゲートキーパーが出歩いて、方々の墓地で死霊術のスキルを使って回った……というのは荒唐無稽か」
「失礼ですが、ハウワッハ教授は……サリオン様に何をさせようと?」
不穏な空気を感じ取ったのか、剣呑な雰囲気でシエロが教授に迫った。
彼女の殺気を気にした様子もなく、ハウワッハ教授は何事もなく笑みを浮かべて話を続ける。
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