クラス拝領②
クラス拝領の儀は、最初は広場でのお祭り。
続いて一般観覧客向けの式典。
そして内陣での儀式と、移り変わっていく。
やがて聖歌隊の穏やかな合唱と、列席者の囁き声が緩やかに流れる静謐の中、クラス拝領の儀は進んでいった。
最初は〈
幾人目かでシエロの番が巡ってきた。
十字になった神殿の回廊の中心で、黄金の盃になみなみと注がれた
内陣から助祭がスプリンクラーで聖水を振るい、聖歌隊が
彼女の志望は〈
「〈
〈
やがて〈
内陣には
頭上のドームから光が降りた
床に細金細工のように黄金の光が走り、魔法陣を描き出すと、そこから赤い光が伸びてボクの身体に吸い込まれて行った。
薄く目を開けると、魔法陣の一画に少し大きめの文字が見える。
それがクラス名。
志望クラスは〈
〈
「まさか、ハイ・クラス……?」
期待に胸が膨らんだ。この一瞬の間だけは。
稀に素質のあるものが上級職と言われるハイ・クラスを拝領することがある。
それは百人に一人とも言われる幸運で、才能や努力ではどうにもならない、
それがまさか自分に。
と考えたところで、周囲の反応が少し不穏なことに気が付いた。
「黄金の魔法陣はハイ・クラスの証だが……しかし、あの禍禍しい魔力の色は……」
「赤い魔力の輝きなど、初めて見る」
「やれやれ、またユニーク・クラスか……今年に入り二例目だな……」
やがて黄金の魔法陣から赤い光の柱が昇り、儀式は無事完了した。
魔法陣に刻まれたクラス名を改めて見やる。
そこに書かれていた見慣れぬ
確か――と記憶を辿る。クラス名でもスキル名でもあまり使われない言葉だ。死とか、恐れとか、刈り取るとかそういう類の、不吉な言葉。
「ヴァン・サリオン・レーヴァさん」
そうこうしていると、司祭様がボクの名を呼んだ。
改めて、ボクの名はサリオン。
父は、ヴァン・グラム・フィオナ。
ヴァン家はウルスス連王国初代両王の一人、
レーヴァは見も知らぬ母の名。
ウルスス地方南部に広がる黒の大森林に住まう
ボクはそうして生まれた貴族の庶子。
厄介なことに、忌み嫌われる
ウルスス連王国は
だけどそれは、異質な立場からして見れば難儀な問題だった。
そして父の恩寵の元、ボクはヴァン家の長子としては育てられたが、二年前に男児が生まれた。弟だ。
家に残れば家督を巡って騒動、或いはもっと直接的にボクの騙って弟を暗殺する者は現れるだろう。
自分では家を継げるような身でもないと思っていても、ボクのようなモノを担ぎ出す輩が現れてもおかしくはない。ヴァン家はそれが起こりうる名門。
だから父が健在な内に自立する必要があった。
そうしてボクが選んだのが
夢や希望などではなく、生きるために
だが、名の上に冠されて宣言されるはずのクラス名はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます