プロローグ②:落し子サリオン
ボクの名はヴァン・サリオン・レーヴァ。
レーンドラ北部に位置するウルスス連王国の
ただでさえ微妙な立場の生まれにも関わらず、母はウルススの
その上、
長い寿命をもつ故に、女性しか生まれないとされる
出生、種族、性別に至るまで。
生まれる前に選択していたのだとしたら、忌み嫌われる要素の大半を選んで生まれたのがボクだった。
そして、生まれたのがウルススでも有力なヴァン家の長子であったことは、ボクにとって幸運であり、不幸でもあった。
庶子でも家督を継ぐ権利を有するウルスス故に、ボクのような身体のものですら跡継ぎとして育てられ、そして暗殺されそうになった回数は両手では足りなかった。
妾の子。
汚らわしい
直接手を下そうとした者たちの血走った眼は、ヴァン家のためと言いながら、ボクへの正体の分からない恐怖や怯えで溢れていた。
「くだらない連中をあしらえるだけの知恵をつけよ」
冷徹な父はそう言って暗殺の首謀者を見つけ出し、秘密裏に処した。
ある者は僻地に送られ、ある者は家を追放され、ある者は逆に暗殺された。
そんな冷血な父に生かされ、ヴァン家という広い檻の中で育った。
ボクの首には、見えない首輪が付いている。
ヴァン家には男子が居なかったからだ。
出来損ないだろうと、落し子だろうと、ヴァン家の長子には変わりない。
父ヴァン・グラムはボクをヴァン家の別邸に縛り付けたが、そのおかげで、ボクは十五まで無事に生きることが出来た。
見えない鎖に繋がれることの引き換えとしても、酷く幸運な事だったのかも知れない。
十五の誕生日。
二人きりの晩餐の席で、ボクは父から弟が生まれたことを知らされた。
正妻の子。
正当なヴァン家の跡取りだ。
これで父にとって、ヴァン家に連なる人たちにとって、ボクの価値は無くなっただろうと、そう思った。
「お前は何を望む?」
そう聞かれ、ボクは答えた。
「冒険者になります」
父は「そうか」とだけ言って、食事を切り上げた。
冒険者訓練所の入所手続きの書簡が屋敷に届いたのは、翌日のことだった。
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