第8話 定期通信
『ピッピ、ピッピ、ピッピ』
早朝から国際電話で起こされた。
僕はサイドテーブルに置いた腕時計仕様になった通信機に手を伸ばすと、
腕にはめた。
この通信機は、
僕のDNAに反応し通信を始める。
まだ寝ぼけ眼で
「おはよう……」
と挨拶をすると、
腕時計のスクリーンから放たれた光から
立体で浮き上がったカブちゃんが
「定期連絡事項です」
といつものように仏頂面で話し始めた。
定期連絡と言っても、
よっぱどの緊急事態でない限りは5分ほどの短いもの。
何の問題もない事を確認すると、
スクリーンから浮かびあがった立体はスーッとスクリーンにまた吸い込まれて、
見た目だけは普通の腕時計の様な成に戻った。
この通信がハックされることはまずない。
僕は腕時計を外しまたサイドテーブルの上に置くと、
大きく深呼吸をしてベッドから起き上がった。
「殺風景な部屋だな……」
周りを見回しても、
白い壁が続くばかりで、
この部屋にはベッドしか置いていない。
窓にだってカーテンひとつ掛かってない。
上層階にある僕の部屋はにはカーテンなんて必要ない。
誰かに見られると言う事もないからだ。
この東京のファミリータウンで寝室は三つもあるのに
僕はひとりぼっちで住んでいる。
“あんなに憧れた日本なのに、
もう気が滅入りそうだよ……”
ベッドから起き上がると、
やはり殺風景なキッチンへと足を運び、
インスタントのコーヒーを入れた。
熱い湯気が立ち上るカップにフ~っと息を吹きかけると、
ズッズっと一口コーヒーを啜った。
「ニガッ」
咄嗟に出た言葉が虚しくて、
カップをテーブルの上に置くと、
ベランダへと出るドアを開けた。
“ここの何処かに彼が住んでいるはず……”
そう思ってベランダから見える景色を見回した。
“神様、どうか早く彼を見つけることが出来ますように!”
信仰者ではないけど、
毎日この景色を眺めてそう祈らずにはいられない。
“頼りなのはあの写真と、
僕の記憶に残る彼の名前と
そして彼女の形見である……“
そう呟いて耳に光るピアスにそっと触れた。
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