第9話 霊能力発揮?

東京に来てもう数週間が過ぎた。


東京の朝の電車は未だ慣れない。


あの状況に慣れる人は居るのだろうか?


僕は時計を見ると、深くため息を付いた。


「もう出なくちゃ……」


何時ものようにコーヒーを半分までの飲み、

トーストを口に頬張ると、

玄関のドアを開け、

玄関に置いた写真に


「行ってきます」


と言葉をかけると、

僕はマンションを後にした。


今朝は何時より少し気が落ち込んだ。


カブちゃんとの定期通信で、

前から後を追ていた人物らしき人がアメリカを出国したと連絡があった。


行き先はまだつかめていない。


それでボディーガードが付けられるという事だ。


でも彼らはプロ中のプロで、

ボディーガードには見えない。


僕にでさえ、何処にいるのかさえも分からない。


少し怖いけど、気を引き締めてマンションを振り返った。


高く聳え立つそれは、

僕を監視しているように見下ろしていた。


気を取り直して駅への道を進んでいくと、

見上げた人ごみの少し遠くに、

光り輝くスポットが目に入った。


何故か彼のいる所は直ぐに分かる。


蛍の光のように彼のいる場所が光っているからだ。


何故なのか分からない。


“これって心霊の類か何だろうか?”


初めて彼を見た時から不思議で仕方ない。


“霊能力に目覚めた?”


そう思ったけど、そうでもなさそうだ。


幽霊が見える訳でもなければ、

他の人のオーラが見えるわけでも無い。


彼の周りだけが光って見えるのだ。


僕はスウッと息を吸い込むと、


「ジ~ン!」


と叫んで走って行った。


やっぱり陽向と光も一緒に居た。


3人とも一斉に後ろを振り返った。


そして何時も1番に笑顔を見せてくれるのが陽向だ。


「あ、サム! おはよ〜


もう日本の生活には慣れた?」


そう言って僕の肩をポンポンと叩いて尋ねた。


「大丈夫で〜す!


ご飯の炊き方もバッチリです〜」


親指を立ててグイッと差し出すと、


「凄いね!


ちゃんと自炊するんだ!」


と陽向が感心していた。


「ハイ〜


一人暮らし長いですからね〜」


「そっか、そっか。


ねえ、作るのは日本食?

それともアメリカ食?」


との問いに、少し考えてみた。


大体はご飯を炊いて何か一品で済ますことが多い。

だからおかずがピザでも日本食というのだろうか?


「そうだね〜


日本食が多いかな〜」


そう言ってハハハと苦笑いをした。


陽向は興味津々に、


「あ、でもさ、アメリカ食って一体どんなの?


これまで、余りアメリカ食って意識した事ないんだよね~


ピザとかハンバーガーとかなのかな?」


と尋ねてきた。


僕も


“アメリカ食って何?”


と聞かれると、はっきりとは分からない。


何てったって人種のるつぼで、

それぞれの人種がそれぞれの国のディッシュを作っている。


ピザはイタリア? それともアメリカ?


僕自身もあまり気にしたことは無かった。


分からなかったので、

適当に答えた。


「そうだね。


そんなところかな?」


そんな適当な答えにも、

陽向はニコニコとしてさらに質問してきた。


「へ〜


ねえ、ねえ、日本食はどんなの作ってるの?」


“え? 何て答える?!”


ご飯だけはしかっりと炊いてるとは言えない。


でも、味噌汁はアメリカでも良く飲んでいたので、


「そうだね〜


朝は忙しいからパンが多いけど、

味噌汁の作り方は学びました〜


僕、上手に作れますよ〜」


そう言うと、陽向が仁に向かって、


「ピューピュー」


と冷やかしていた。


「じゃあ、サムは何時でも佐々木君に所にお嫁に行けるね!」


そう言う陽向に、


「寝言は寝て言え!」


と仁がどついていた。


「佐々木君、

こんな優良物件、そうそう無いよ?


見てよサムのこの綺麗な金髪!


女神様の様にキラキラとしてない?」


そう言って僕の髪に触ってくるなり、


「うわ〜、サラサラ!


何この柔らかさ……!


アメリカ人って皆んなこんななの?」


陽向のそのセリフに、

僕は自分で髪をかき上げてみた。


「え? これ普通だと思うけど……


日本人は違うの?」


今まで髪が硬いとか、柔らかいとか考えた事もない。


「ほら! 僕の髪を触ってみてよ!


僕は日本人にすると柔らかくて、

毛量も少ない方だけど、

サムのは全然比べものにならない位

和らいよ!」


そう言って触った陽向の髪はコシがあってサラッとしていた。


「え……これ日本人の普通の髪ですか?」


「そうだよ!

サムのに比べたらちょっとピンっとしてるでしょ?


それにホラ!


佐々木君の触ってみて!

遠慮せずにホラホラ!」


陽向に腕を掴まれ無理やり仁の頭に手をにせられた瞬間、


“バチ”


っと静電気が走った様に手に電撃が走った。


「痛っ」


と一瞬手を引っ込めたけど、

もう一度触った時にはもう静電気は起こらなかった。

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