掛け合いセリフ 21~40

21.デザイナー様は幼馴染

a「あぁっ,うん,凄く良い!!良いけど,ちょっとこっちのネクタイに変えてみない??」

b「おい,その質問俺に拒否権ないだろう。」

a「そう言いながらちゃんと着替えてくれるじゃん。んー,その色もいい!こっちにしよう!よーし,次ジャケットいってみよう!」

b「分かったから少し落ち着け。」

a「私的には青とか紫で遊び心を入れたいんだけど,今回の目的には合わないかなぁ。でもこっちをこの色にすればいけるか?いや,あっちのデザインの方が合わせやすい?」

b「ダメだコイツ。全然聞いちゃいない。」

a「あんた,見た目は良いから何でも着こなせるよね。お陰で私は凄く楽しいけど。」

b「『見た目は』とは何だ。失礼にも程があるだろう。まぁ,いつもの事か。」

a「やっぱりこっちの方があんたに合ってる。ハイ完成!誰がどう見ても素敵な紳士!私史上最高の組み合わせになったと思う!」

b「そんなに気合いを入れる必要もないんだがな。どうせ調査のための会合だ。誰がどう見ていようと関係ないだろう。」

a「なーに言ってんの!私が選ぶからには誰よりもカッコよくないと!この天才デザイナー〇〇様が選ぶんだから!」

b「分かった分かった。感謝してるよ。」

a「っていうか,幼馴染のことをよく見られたいって思っちゃダメなわけ?」

b「お前がそんな風に思っているとは意外だったな。」

a「へーへー,どーせ私は自己中の薄情者ですよ!あんたはついでに彼女の1人でも作ってきたらどーですか!」

b「何故今の流れでそういう話になるんだ……?」


22.味

a「あんたもマメだよね〜。今日日毎日料理するなんて。」

b「それ毎月食べに来てる人が言うこと?」

a「事実美味しいから来ちゃうよね。私はあんまりやらないし。」

b「まぁ,毎日やる人はなかなかいないかもね。」

a「今どき外出れば何でも買えるじゃん。それに毎日大変じゃないの?」

b「好きでやってるから大変じゃないよ。」

a「料理できる人からしたら苦じゃないのか。実際,買ってきたものだと味は劣るだろうしね。」

b「そんなことないよ。最近の冷凍食品とか侮れないし,レストランならもっと美味しいよ。」

a「じゃあ何で毎日時間かけて料理するわけ?」

b「……私がやらなかったら消えちゃうじゃない。あの人が遺してくれた味が。」


23.囚人のジレンマ

a「ここから出せ!俺は貴様らと馴れ合うつもりは無い!」

b「まだお分かりいただけていないようですね。」

a「他人を貶めて楽しんでいるだけの貴様には協力しない!俺は俺だけで奴に復讐する!」

b「これはゲームなのですよ。貴方が私を裏切れば彼の首は貴方のもの。しかしそれはあくまで護衛,つまりこの私を突破して復讐を遂げた場合のみ。あっさり捕まった今の状況では難しいでしょうね。」

a「黙れ!」

b「私に協力すれば,必ず彼の首を取れる。彼を守るものがいなくなるのですから当然です。」

a「さっきから聞いてりゃ訳の分からねぇことばっかりいいやがって。貴様の目的は何だ?」

b「彼を助ければ多額の賞金が得られる。しかし貴方に協力すれば,盛大な復讐劇を特等席で見ることが出来る。どちらも私にとっては大きな報酬です。」

a「クソッ……,このゲス野郎が!貴様が裏切らないとは限らないだろう!」

b「私が裏切るメリットはどこにもありません。生憎,損得勘定は得意なもので。」

a「(俺は必ず復讐を遂げると親友に誓った。だがアイツを見捨てた奴と手を組むのか!?)」

b「さぁ,協力すると言いなさい。貴方に選択肢はないのだから。」


24.守らせて

a「この度護衛を務めます。〇〇と申します。」

b「敬語なんかいらないからさ。昔みたいに呼んでよ。」

a「……久しぶりだね,〇〇。中学以来かな?まさか狙われるほどの大物になるとはね。」

b「俺も思ってなかったんだけど,どーせやるならやりたいじゃん?王者ってカッコいいし俺に合ってるでしょ。」

a「それを自分に合ってるって言うあたり,変わってないなって思うよ。」

b「こんなこと言ってるから犯行予告なんて出されるんだろーね。だからって止める俺じゃ無いけど。」

a「っていうか,あんたに護衛なんかいらないと思うんだけど。喧嘩じゃあ負け無しだったじゃん。」

b「俺もそー思うんだけどさ。国主が暴力沙汰とかまずいでしょ。」

a「それもそっか。ちゃんと守ってあげるよ。あんたは他の誰でもない私の幼馴染なんだから。」

b「……俺的には『幼馴染』じゃなくて『大切な人』って言って欲しかったな。本当は俺が守りたいんだけど。」

a「今,何か言った?」

b「いーや,何にも。ちゃんと守ってよね,〇〇。」


25.挙式の招待

a「失礼しまーす。」

b「はい,どなたかしら?って,あら久しぶりじゃない!」

a「必死ぶりだね先生。私が卒業して,もう10年かな。」

b「もうそんなに経つのね。それで?今日は何しに来たの?」

a「先生にコレ渡そうと思って来たんだ。はい,招待状。」

b「招待状?……これ結婚式の招待状じゃない!しかも相手はあのバカ!?」

a「クラス1の天才でクラス1のバカだったあの男です〜w」

b「そういえばアンタたち,あの頃から仲良かったわね。」

a「そ。だから式にはぜひ来て欲しいなぁと思ってさ。」

b「喜んで参加するわ。あのバカも1発殴ってやらなきゃね。」

a「昔みたいに殴って,式前に傷だらけにしないでよね。私が恥ずかしいじゃん。」

b「私がそんなバカに見える?ちゃんと終わってからにするわよ。」

a「終わったらやるんだwまぁ,とにかく待ってるからね。」

b「わかったわ。幸せになりなさいよ。……いつの間にか,みんな大人になって行くのね。でも,あなたたちはいつまでも私の生徒よ。」


26.眼帯

a「おはよー。」

b「おー,おはy……お前どうしたんだよその右目!?」

a「んー?あぁ,この眼帯?多分麦粒腫だと思うんだけど,昨日から赤くなってて痛いんだよね。」

b「あ,そう。なら良かったわ。」

a「は?何が良いわけ?」

b「あ,悪ィ。お大事にって言うべきだよな。」

a「そうそう。……じゃなくて!何が良かったわけ?」

b「いや,とうとう秘められた闇の力に目覚めたのかと思って……」

a「誰が中二病だ。テメェ今すぐぶっ飛ばすぞ。」


27.新婚

a「なぁ〇〇,あそこにいるのお前の嫁だろ?超絶美人だな!」

b「でしょ?あ,もう俺のモンだから絶対手ェ出さないでよ?出したら肋骨全部折る。」

a「お前マジでやりそう。ま,俺も彼女いるし?お前のモンには手ェ出さねぇよ!」

b「お前彼女何人目だよ。」

a「うるせ。モテると言って欲しいねぇ。」

b「そのままだと一生独身なんじゃない?俺と違ってさ。」

a「かーっ!いい嫁持った途端いい気になりやがってよぉ!どーせ甘々な新婚生活送ってんだろ?」

b「そーでもないよ?あいつ昔から男勝りだからすぐ手出るし,口悪ぃし,女らしいの見た目だけだよ?」

a「んなこと言ってると怒られるぞ?」

b「まぁ,ぶっちゃけそこが好きなんだけど。」

a「あーはいはい,惚気は結構でーす。」

b「これ聞かれてたら即殴られ……,あ,待ってすんごい向こうから冷たい視線を感じる。」


28.面接練習

a「理想の人物像?」

b「そう。面接で聞かれるかもしんねーってよ。お前,なんかねぇの?」

a「そうだな。……僕は猫を助けられる不良でありたい。」

b「……はい?」

a「彼らの見た目や思考などは世間の求める普通の人物とはかけ離れている。そうだろう?」

b「お,おう……?」

a「しかし,本当に人として大切な事は何なのか。それを理解している人でありたいと,僕は常に思っている。」

b「言ってることはまともだが,猫を助ける不良ってンな高尚なものだったか?」

a「理想は人それぞれだ。共感する必要は無い。では失礼する。」

b「そういう話じゃなくて……。まぁいいや。お前,面接でそれ言うなよ?」


29.告白,廃校舎にて

a「何でこの校舎にいるの?」

b「就職決まったんだ。んで,報告しに来たってわけ。」

a「そっか,おめでとう。これからは忙しくなるの?」

b「まぁ,新人なんてパシリからだし,しばらくは忙しいんじゃね?お前は何しに来たの?」

a「……明日から,危険ゾーンへの潜入なんだ。何があるか分からないから,挨拶しに来たって感じ?」

b「怖くないの?」

a「……私が怖がると思う?今までだって危険な仕事はやってきた。確かに今回は特別危険だけど,だからって…」

b「じゃあなんでここに来たの?そんな涙声でさ。」

a「え?」

b「この校舎,俺らが最後の卒業生だから,みんな大事なことがあると,ここに来るよね。」

a「だから,何?」

b「今までは来てなかった。それだけ次の任務がヤバイってことなんでしょ?」

a「……相変わらず鋭いね。……怖いよ。本当は怖くてたまらない。私,まだ何にもできてない。なのに,明日死ぬかもしれないんだよ。」

b「俺には何もしてあげられないけどさ,無事に帰ってきてよ。そしたらまたここで会お?約束ね。」

a「ありがと。必ず帰ってくるから。じゃあ,またね。」

b「……(独り言)まだ伝えてないこと,あるんだからさ。」


30.用心棒と主

a「どれだけ逃げても,追手は増え続ける一方ね。」

b「……俺がここに残ります。貴女は逃げてください!この先の地下通路なら,おひとりでも無事に逃げきれるはずです。」

a「はぁ?何言ってるのよ!」

b「元はと言えば,こうなったのも俺のせいです。貴女だけであれば追手も少しは減るはず。巻き込んでしまってすみません。もうこれ以上,貴女を苦しませたりしません。」

a「馬鹿なこと言わないで!いいから走って!」

b「この手を離してください!俺は,俺のために貴女を傷つけたくない!」

a「貴方がどんな人生を送ってきて,何に苦しんできたかは知らない。だけど,過ちの一つや二つ誰にだってあるわよ!」

b「俺がいるだけで,貴女を危険に晒すことになるんですよ!」

a「その度に,二人で逃げて,また生き残ればいいじゃない!私バカだから,気の利いた言葉なんて言えないけど,あなたの苦しみも何もかも私が一緒に背負ってあげる!だから,私と生きなさい!これは命令よ!」

b「……!分かりました。俺が先導します。絶対に,この手は離さないでくださいよ!」


31.冤罪事件

a「あー!ほんっとにムカつく!なーにが『無罪放免とする』だ!最初から無罪だって言ってんだろ!」

b「気持ちは分かりますが,堪えてください。我々は貴族様に雇われている身です。上に逆らうのは自分の首を絞めるだけですよ。」

a「分かってるよ!だから余計に腹が立つんだ!何でアイツらのために,身を粉にして働かなきゃいけないんだよ!」

b「それがこの国のルールですから,仕方のないことです。彼も納得しているのですからいいじゃないですか。」

a「こっちが納得してねぇんだよ!一方的に拷問するだけしといて,用済みになったら放置って,勝手すぎんだろ!」

b「では殴り込みに行きますか?」

a「行かねぇよ。行ったら前より警備厳しくなるじゃねぇか。」

b「その通りです。我々の身分ではどうすることもできません。」

a「チッ。今度あったらアイツらのリップクリーム全部強力スティックのりに替えてやる。今回はそれで我慢してやるよ。」

b「んふふっ,地味に最悪な嫌がらせww協力しますよwww」


32.役者

a「以前,聞いたことがあるんです。自分のことが好きになれない人は,役者失格だと思いますか?」

b「……もしそうだとしたら,私は役者失格だね。」

a「え?〇〇さんは,自分は嫌いですか?」

b「好きじゃないよ。過去を振り返れば振り返るほど,自分のことが嫌いになる。何故かは言わないけどね。」

a「でも,私には自信に満ち溢れているように見えます。私の大好きな〇〇さんは,いつも輝いていますから。」

b「ありがとう。そう見えているのなら嬉しいな。でも私,自分のことがずっと嫌いでね。全く違う別人になりたいと思って役者の道を選んだんだ。まぁ、学んでいくうちに別人になるわけじゃないって気づいたんだけどね。私はね、自分のことは嫌いだけど自分の芝居は嫌いじゃない。自信が見えるのは,そのおかげかもしれないね。」

a「自分の芝居が好き……。私も,自分のことが好きになれないんです。失敗ばかりで,すぐに落ち込んでしまう。そんな自分を変えたくて,役者になりたいと思ったんです。まだ全然上手くお芝居はできないんですけど。だから今は,自分の芝居も好きじゃありません。でもいつか私も,自分の芝居が好きだと言えるようになるのでしょうか?」

b「最初はみんなそんなもんだよ。でもどこかで,好きだと思える瞬間に出会える。でもその喜びはやがて消えて,先が見えなくなる。だけど喜びの瞬間が忘れられなくて,いつの日にか自分の芝居の虜になっていく。私はそう思ってるよ。」

a「……そっか,焦らなくてもいいんですね。私,舞台が好きです。だからまだ,ここを離れたくない。今はその気持ちだけを大事にして,もう少し頑張ってみます。」

b「うん,いい顔になったね。その意気なら,きっと大丈夫だよ。」


33.お仕事

a「はい,もしもし。あら,〇〇さん!」

b「よォ,久しぶりだな。」

a「あんたからかかってくるなんて思わなかったわ。なんの用?」

b「ちょっと『仕事』の件で女手が欲しくてよ。知り合いの女お前しか思いつかなかったんだわ。」

a「えーやだ。あんたの持ってくる仕事大体めんどくさいじゃない。これまで絡んできた人いっぱいいるでしょ。その子たちは?」

b「は?勝手に彼女ヅラしてくる奴とか二度と会いたくねぇわ。」

a「自分がモテるみたいな言い方しやがって腹立つ。まぁいいわ,内容は?」

b「ウチのシマで黒い商売やってるクソ野郎がいてな。そいつが開く親睦会で接触してぇんだけど,そいつ無類の女好きらしいんだわ。」

a「なるほど,アタシを使って接近して情報収集したいわけね?対価は?」

b「話が早くて助かるぜ。ウチの持ってる酒屋で1番高ぇ酒卸してやる。吐かせた内容によってはいい男紹介してやるよ。」

a「乗った。ご期待に添えるよう働いて見せますわよ,若頭様?」

b「俺も行くから,適当な真似したら殺す。んでもって俺は組長に殺される。そのつもりでやってくれ。」


34.お兄さんとお姉さん

a「どうしよう,お兄さん今感動で泣きそうなんだけど。」

b「うん,もう既に泣いてるけどね。でも分かる。お姉さんも泣きそう。」

a「もう10年以上の付き合いになるねぇ。やんちゃだったあの子がこんなに成長したんだね。」

b「うん,あの子って言っても私らと2歳しか変わらないけどね。でも成長したわ。」

a「僕いつまでも保護者のつもりでいるんだけど,なんか感慨深いよ。」

b「だから2歳しか……まぁいいや。私はあの子が幸せならそれで十分だから。」

a「今の発言が何より保護者なんだけど。」

b「いいじゃない。いつまでも自称保護者同士仲良くしましょ。」

a「そうだね。ところでさぁ……」

b「言いたいことはわかるけど最後まで聞こうか。」

a「なんで僕らさ,後輩の告白の練習に付き合わされてんの?」

b「さぁ?我々が数々の修羅場を乗り越えてきた美男美女だからじゃないですか?」

a「それ単に告白された回数が多いだけでしょ。」

b「さぁ?我々が数々の修羅場を乗り越えてきた美男美女だからじゃないですか?」

a「いやめっちゃ適当。なんかもうなんでも良くなってきた。……明日,告白頑張れよ。」


35.大事なもの

a「それ,持ってかなくていいのかよ?大事なモンなんだろ?」

b「もういいの。過去の亡霊とはバイバイしなきゃ。それに,」

a「あ?何だよ。見つめても何も出てこねぇぞ。」

b「今は,あなたがくれたものがあるから。これは一つだけでいい。」

a「……そーかよ。好きにしろ。」

b「ふふふっ」

a「何笑ってんだテメェ。」

b「何でもない。ありがとう。」


36.姉弟の絆

(ノック音)

a「……どうぞ。」

b「よっ。眠れねぇのか?」

a「女性の部屋を訪ねていい時間じゃないわよ。アンタこそ,眠れないなら昔みたいに子守唄でも歌ってあげようか?」

b「ばーか。ちょっと真面目な話。…姉貴,俺は夜明け前にこの村を出る。村長,父さんには話を通してある。」

a「全部聞いてたわよ。分かってるの?追われることになるのよ。」

b「分かってる。でも,それはここにいたって同じだ。ここの連中を巻き込むくらいなら,俺は一人で外に出る。」

a「止めたって聞かないんでしょうね。昔から頑固なんだから。…アンタの強さは私が1番よく分かってる。それでも,思ってるよりもずっと過酷な道になるわ。」

b「覚悟の上だ。俺はあの時の行動に,何一つ後悔はしてねぇ。だが,それでここの連中が巻き込まれんのは俺の本意じゃねぇんだ。今はまだ逃げることしかできねぇが,いつか必ず真実を持って帰ってくる。それまで,村の奴らを頼む。」

a「寂しくなるわ。もうアンタを叩き起すことも,模擬戦をやることもないのね。次期村長として,色々教えてあげたのに。」

b「悪いな,姉貴。全部押し付ける形になって。」

a「バカね。そんな風に思ってないわよ。でも,覚えておいて。アンタはひとりじゃないってこと。もしアンタが遠い地の果てで苦しみの中にいるのなら,私はいつだって剣を取って駆けつける。私はいつまでもアンタと共にある。」

b「ありがとな。……じゃ,行ってくる。」


37.将軍様

a「おはよう。随分と遅いお目覚めだったわね。」

b「……俺,なんでこんなとこで寝てんだ?」

a「王子を庇って倒れたのよ。覚えてないの?」

b「そういえば,そんなことしたな。」

a「ホント,忠実なのは良いことだけど無鉄砲なんだから。毎回手当させられる身にもなって欲しいわね。私はあなたの専属医務官ではないのよ?」

b「悪いな。いつも助かってる。」

a「私,あなたが起きたら言おうと思ってたことがあるのよ。言ってもいいかしら。」

b「なんだよ。」

a「……テメェのせいで王子を危険に晒したのがわかってんのかこの馬鹿野郎が!庇うまではいいけど,テメェが怒りに任せて反撃するから余計に被害が広がったじゃねぇか!」

b「それは,マジですまん。なんか久しぶりに聞いたな,女将軍様のご叱責。」

a「楽しんでんじゃねぇよ。あと"元"将軍だ。テメェに職譲って何年経つと思ってんだ。」

b「3年でございます。その節はどうもありがとうございます。」

a「この野郎……。兎に角!もう少し将軍としての自覚を持つこと!テメェの行動は,一個人の範囲を超えてんだよ!」

b「へいへい,分かりましたよ〜。」


38.君は僕の光

a「お願い,行かせて!ここであの人の短剣が見つかったの!この近くにいるかもしれないのよ!」

b「ダメだ!君のその体に,これ以上無理はさせられない!ただでさえボロボロなのに,もうまる3日も休んでいないじゃないか!」

a「私は大丈夫だから!それより早くあの人を!」

b「立つのもやっとなくせして,何が大丈夫だ!彼のことは僕が必ず見つけ出す!だから君は戻るんだ!」

a「嫌よ!何があっても,そばにいるって約束した!どこにいても見つけ出すって,そう言ってくれたの!私,探し出せずに失うなんて苦しみ,もう二度と味わいたくない!」

b「!!……君の思いは十分分かった。でも,彼を見つけるために君が死んでは意味が無いんだ!彼は僕が命に代えても探し出す。だから君は無理をしないでくれ。」

a「……どうしてそこまでするの?言ったでしょ,私,あなたの気持ちには応えられないって。」

b「僕は君が好きだよ。それは今も変わらない。だけど君と同じくらい,彼も好きなんだ。だから君たちには幸せになって欲しい。そのためなら僕はこの命を差し出すよ。僕を孤独の闇から救ってくれたのは君たちなんだから。」


39.忘れない

a「彼の葬儀は無事に取り行えましたか?」

b「お前はエルドラドの……」

a「エルドラド王の専属護衛を務めております,〇〇でございます。長時間にわたる会議お疲れ様でございました,アトランティス女王。」

b「久しいな。……アイツは王宮の墓地に眠っている。中でも美しい墓だ。」

a「そうですか。彼は今でも貴女のそばにいるのですね。」

b「私は沢山守ってもらったからな。護衛の仕事以上に世話になった。これからは私があの城と共に守っていこうと思う。」

a「……無理と無礼を承知でお願いがあるのですが,今度お墓参りの許可を頂けませんか?」

b「アイツは,お前やその仲間に害をなしただろう。なぜだ?」

a「彼は多分,とても優しい人。ただどこかでその優しさが,歪んだ愛情にすり変わってしまっただけ。初めて会った時私たちに刃を向けたのも,貴女への絶対的な忠誠心からでした。」

b「お前には,何が見えていた?」

a「私や仲間を人質として牢に入れたとき,彼は『死なれたら困るんです』と言って食事を用意してくれました。寒さを凌ぐ蝋燭を用意し,怪我からくる熱に苦しむ仲間に氷嚢をくれました。」

b「アイツ,私に内緒でそんなことをしていたのか。」

a「彼の貴女への忠誠は確かなものです。ですが心の奥底にある優しさが,私たちを助けてくれたのだと思います。」

b「そうだな。アイツの度が過ぎる凶行には頭を痛めたが,今ではそれが懐かしいとすら思う。だが私はお前の強い心にも敬意を表する。敵だった私の部下に,そこまでの情を抱いてくれるとは。」

a「貴女は全ての事情を理解し,我が国を受け入れてくださった。それだけで何にも勝る喜びです。それに…」

b「どうした?」

a「たとえ初めて会った時は敵同士でも,彼がくれた優しさと心を,私は決して忘れません。私たちと彼は,同じ未来を思い描く同志になれたはずです。」

b「そうか。いつでも来るといい。私が直接案内しよう。」

a「お心遣いに感謝いたします。」

b「私はそろそろ帰るよ。エルドラド王によろしくな。」

a「はい。またお越しくださいませ。」


40.哀哭

a「状況は?」

b「……計画通り。無事に送り届けたよ。」

a「そうか,良くやった。」

b「本当に行かせてよかったのかなぁ。」

a「それがあの人の望みだ。俺たちの意思がどうであれ,そうするしか無かったんだ。」

b「私,この先一生後悔することになると思う。何で行かせたのって,何で縋ってでも引き止めなかったのって。」

a「お前に選択肢は無い。全てを選んだのはあの人。その決断に至らせたのは俺たち全員の責任だ。」

b「でも最後に見送ったのは私。止められたのは,私だけだったのになぁ。」

a「お前が止めてもあの人は止まらねぇよ。言ったろ?俺たち全員の責任だ。1人で思い詰めんじゃねぇよ。……こっち来い。今のうちに吐き出しとけ。」

b「……私,まだ言いたいことが沢山あった!一緒にやりたいことが,見たい景色が沢山あったの!なのに,あなたが居ない世界で,私にどう生きろと言うの?分かんない,分かんないよ!うっ……,わああああああああっ……!」


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