第10話 永遠に咲く花-セティア編

もう泣いても笑っても

アクスは帰って来ない

生きる喜びも意味も

全てアクスが居たからあったような気がする

この悲しみはもうどうすることもできない

心の中には大きな穴が空いたような冷たい風が吹き抜けて行く

思い出すのはアクスが居た頃の事ばかり


幼い頃ライドが旅立つのが悲しくて

落ち込んでいた私をそっと元気づけてくれた

私がいくら笑っていても落ち込んでるの、アクスにはいつもバレてたね

花畑で作った花冠を私にプレゼントしてくれた

寂しい夜は、絵本を読んでくれた

リゼが寝込んだ日は、一緒に看病した

不器用だったけど、二人で作ったおかゆ…

リゼが美味しそうに食べてくれた

いつも側にいた

アクスの優しさ…

深い緑の優しい目…

愛情…

アクスとの思い出が心をいっぱいにする

アクス-…アクス-…

こんなにも胸の中はあなたでいっぱいなのに-…

逢いたい-…

切ない-…

苦しい-…



アクスの死を知ってから、もう1ヶ月以上経とうとしていた

リゼは心配そうにセティアを見つめる

やせ細ってしまった身体

ライド譲りのブルーの瞳は光を無くし、人形のように虚ろだった

あの日から、ろくに食べ物を口に入れようとせず、カーテンを閉め切った部屋の椅子に座り、一日中ボーッとして過ごす日々が続いた

セティアの気持ちは痛い程よく分かる

リゼは、セティアを外に連れ出す事にした

外の空気と景色を味わって、何とか元気を取り戻してもらいたかった

リゼはセティアをそっと支え、ゆっくりと歩かせる

セティアにとって、本当に久しぶりの外の空気

アクスと一緒に過した思い出深い花畑

一緒に駆け回った草原

そして---…

ふと、アクスの土地に足を踏み入れる

アクスが何かを植えていた土地

その場所を見るなり、セティアの目は

あの頃の光を取り戻した

セティアの大きなブルーの瞳からは涙が溢れ出す

「アクス-…」

セティアがそう呟き、今までで一番綺麗な笑顔で微笑む

そこには、一面の黄色い花が咲いていた

数え切れないほど、たくさん

アクスの言葉を思い出す

「いつでも笑っていてくれよ、セティア」

アクスは、私の笑顔を望んでいた

アクスが"笑え"と言っている気がした


来年も、再来年も

その花は咲く

暖かい太陽に見守られながら---…


二年後、長い長い戦いの末、終戦を迎える

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永遠に咲く花 蒼桐 光 @aogiri211101

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