第7話 追憶-ライド編
20年前彼らは再会した
今、ある男達が焚き火をら囲いながら見張りをしていた
敵の侵入を防ぐのが彼らの役目だ
その中のひとりにブルーの瞳、短く刈られたブラウンの髪、額にはバンダナ
筋肉の付いた体、身長は二メートル近くもある大男がいた
彼の名はライド、この歳十八歳になり、二年目の戦士生活、戦争はまだまだ終わりを迎える気配すらない
沢山の人達の死を見て来たし
沢山の命を奪って来た
自分の力には自信があった
人を殺す事に慣れてしまった
ライドは強くなったのだ
自国に大切な婚約者を残して、ライドは今この場所にいる
国の勝利の為にも、帰りを待つ婚約者の為にも、何より自分の為にも、ライドは戦う
そして、その隣にはシルバーグレイの髪の毛と深いブルーの瞳、(ライドから言わせれば)チビで小柄な、戦場という場所にはどうにも不釣り合いな二つ年下の少年
彼の名はアヴァン
今年配属されたばかりの新顔だった
真っ直ぐで人を疑うことを知らない
偽る事を知らない
汚れたものを知らない
誠実な瞳
ライドは、こういうタイプの人間派苦手だった
こういう人種が人を殺せる訳が無い
これから見るあまりにも悲惨で残酷な光景に逃げ出したくなるに決まっている
逃げ腰になって命乞いし、格好悪く殺されて行くだろう
--せいぜい、足を引っ張らないでくれよ
アヴァンは、実際にけが人は例え敵軍でも放って置けない
一緒に逃げていた仲間や、今にも死にそうなヤツを助けに戻る
既に息絶えたヤツにさえ、それなりの弔いをする
人を殺した後は自分も傷つき、苦しむ
そういうヤツだった
もちろん、戦士としては致命的だ
そんなんじゃ、精神が持たねーよ
アヴァンは、ライドに懐いた
配属先もほぼ同じで一緒にいる事が多かった
ライドの両親は、もう既に他界していた
二つ年下の同じ施設で育った少年…
実はライドはアヴァンの事をよく知っていた
世話好きで、責任感があって、虐められる子が居れば、助けに行く
動物の死にさえ、涙を流す
彼もライドと同じく幼くして両親を亡くしたらしい
それでも他人を思いやる余裕が有るなんておかしなヤツだ
まあ、俺には関係ない
変わったヤツだという目で見ていた
アヴァンはいつも一人の少女と一緒だった
彼女の名はガーディア、生まれつき体が弱く、いつもアヴァンに守られていた
彼女も幼くして両親を亡くした身の上だった
俺達だけじゃない
この施設に住む全ての子供達は、恐らく皆同じような境遇の者たちだろう
誰もが戦争を憎み、敵軍を憎み、人を憎んでいる
この世界でアヴァンのような生ぬるい感情で生きていけるはずがない
強くならなくては
強く---
数年振りにガーディアに再会した
アヴァンとは結婚していた
小柄で華奢な体と白い肌
腰まで延び、ウェーブのかかった長い金色の髪の毛と、深い緑色の瞳
耳にはキラキラ輝く
アヴァンの髪の色と同じピアス
彼女は、体があまり丈夫では無くて、顔色もあまり良くなかった
アヴァンとライドが部屋に入るとベッドに横になっていた
アヴァンに気づくと嬉しそうに微笑んで起き上がりアヴァンの元へ行こうとしたが、上手く力が入らずよろけてしまった
それをアヴァンがしっかりと支える
「寝てなきゃ、ダメだろう」
呆れていたが、気遣うようにアヴァンの声は優しい
「だって、帰って来るって聞いて嬉しかったんだから」
「じっとなんてしていられなかった」
喉の奥から一生懸命絞り出すような、そんなか弱い声だったけど、ガーディアの表情は明るかった
「お腹にね、私のお腹に赤ちゃんが居るの」
「私達、親になるんだよ、アヴァン」
嬉しそうに、微笑むガーディア
ガーディアをベッドに休ませ、アヴァンとライドは二人でテーブルを囲む
「へぇー、子供が生まれるのか、こりゃめでたいなぁー、お前、その歳で父ちゃんかよ」
ガハハと無神経に笑っていたライドだったが、アヴァンの微妙な表情に疑問に思い、問いかけた
「嬉しくねーのかよ?父ちゃん」
「嬉しいさ、嬉しいに決まってる、でも…」
しばらく沈黙が続いた後、アクスが再び言葉を続けた
「ガーディアの体は、子供が産めるほど強くない…」
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