第29話 いきなり尾行デート
ルームナンバー5022 午前10時40分
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朝食はルームサービスで和食をチョイス。
着替えて、少しだけ沙羅さんにちょっかい出して怒られた。
クッションをもって裸足で香月を追いかける沙羅は子供のようにはしゃいでいた。
(そして俺に捕まってキス攻めの刑♡)
荷物をまとめてからチェックアウトのためにフロントへ降りる。
たった一泊だったけれど一生の思い出ができた。
「一周年にまたどこかに行けたらいいな」
と沙羅さんが恥ずかしそうに俯いて言う。
宿泊費なんかは事前に会計を終えていたので昨夜のバー、シャンパン(モエ・エ・シャンドンね)ルームサービスの精算をして俺たちは今日の目的地の芦ノ湖に向けて車を出した。
案の定、首都高新宿線は営業車で渋滞している。
わかってはいたが、とりあえず厚木まで抜けたかったのでこのまま下り線を二車線ノロノロ運転に身を任せた。
「沙羅さん、今日はお店へ直行?俺、送って行くよ」
「陽司くんも疲れているのに悪いわ。・・・でももし良ければ店まで連れて行ってもらえると嬉しいけど」
「そんなの当たり前でしょ!それに・・・」
「・・・陽司くん待って・・・・あっ・・・!!」
沙羅が俺の顔越しに声を上げる。
どしたの?
「陽司くん、隣りの車線を運転している人。あの歯医者さんで見かけた男の人に似ているわ」
「えっ!もしかしてモンタージュの?」
「似ているわ、とても。陽司くんは
それってあのモンタージュ男にもあったはず。
「車のナンバーを見たいわ。あの人の車の前か後ろに入れる?」
「渋滞してるから少し車間をあけて車列をずらすよ。メモれる?」
「はい、大丈夫」沙羅はバッグから小さいノートとペンを出した。
ノロノロ運転だったが何とかその車の前方に出た時、沙羅がメモを取り始めた。
「板橋 わ ・×18 。メモしたわ」
「レンタカーかカーシェアだ。車種はTOYO○A アクア シルバーってメモしておいて」
「まぁ、さすがお巡りさん」
「えっ、褒めてくれてるの?」
「もちろんよ。私の車と同じかと思ったわ」
そりゃぁないよ沙羅さん。
ポルシェがびっくりしちゃうよ。
俺は苦笑いした。
しかし問題はこの状況をどうするか、だ。
俺はオフでデートの途中。
職務中ではないから警察官の身分証明書は持っていない。
しかも急に車が流れ始めた。
用賀を通過して東名に入るため動いたのだろう。
シルバーのアクアはあっという間に前方へ走り抜け、俺たちとの距離は開く一方だ。
「あの車を追いかけて!陽司くん」
「へっ ──。えーーーっ?!」
次話は「大追跡!東名高速」です。
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