第30話 大追跡!東名高速
「あの車を追いかけて!陽司くん」
「へっ ──。えーーーっ?!」
「行っちゃうわ、見えなくなっちゃうわ」
沙羅は身振り手振りで追って、追ってという。
「だって芦ノ湖は?白鳥のボートに乗って箱根神社で縁結びのお守り授かるんでしょ?」
「白鳥もお守りも待っててくれるわ。でも犯人の人は逃げちゃうわ」
余程確信があるんだろう。
でもさ他府県に入ったらかけだしデカ長ごときでは手も足も・・・💦
「車からアシはつくと思うから、それに俺今日は警察手帳も何も・・・」
「目の前に悪い人がいるのに逃がしたらダメだわ。もしまた悪いことしたら犯人の人の罪も重くなるわ」
すっかり犯人扱いだと心の中で苦笑するが、確かに沙羅さんの言うことに間違いはない。
「わかった。少し飛ばすからシートに深く座っていてね」
俺はアクセルを強めに踏み込んだ。
東名海老名SA 午後0時45分
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺は走行車線と追い越し車線を使い分けながらシルバーのアクアを見逃さないように追った。
法定速度を超えることは出来ないが、どうやら相手も急いではいないようだ。
本来だったら降りるはずの厚木ICを通過する。
一体どこまで行くのか?東京から離れすぎると沙羅さんの仕事に間に合わなくなる。
追い越し車線を走っていたアクアが突然俺たちの前に割り込んできた。
「あっ、陽司くん、サービスエリアに入るわ」
「了解」
海老名サービスエリアは東名高速道路でも人気トップを誇り、敷地も広く人気の店舗、グルメ店が入店していて利用者も多い。
そして、犯罪も多発している。
「そういうことか ──」
俺のつぶやきに、
「犯人の人、泥棒の疑いよね・・・車上荒らしって私の店の近くでも多いの」
「なるほど、金曜なら週末かけてドライブする人も多い。下見なしでも
「どうしましょう、、」
沙羅は急に怖くなったのか肩をすぼめて俺を見る。
さっきまで目をキラキラさせていたのに、面白い人だ。
「とりあえず近くに停めて見逃さないようにしよう」
「そうね、はい」
とにっこり笑う。
今朝も思ったんだが、
二人で一夜を越えてから沙羅さんは雰囲気が変わった。
今まで以上に柔らかく、俺は受け入れられていると肌で感じる。
そうか。俺との間にあった “ 遠慮 ” という見えない壁を取り払ってくれたんだよね。
緊張感の中にも幸せを感じていた。
ターゲットの車は駐車場の比較的端に駐車し運転手の男は車を降りるとサービスエリアの建物に向かって歩き出した。
俺たちはさらに遠い、しかし出口に近い辺りに停めた。
いざとなったら先回りできるから。
二人で男の背を追った。
次話は「海老名de大捕物」です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます