第28話 あなたと見る朝の色
ルームナンバー 5022 午前4時40分
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いい香り ───
目覚めた沙羅。
自分がどこにいるのか一瞬分からなくなり、慌ててシーツを頭まで被った。
真っ白なシーツとカーテン
コーヒーの香り、食器の触れ合う音
口笛の声の主は ─────
そう、だ。そうでした。
昨日から陽司くんと出掛けて、楽しくて。
そろりと目までシーツを下げてキョロキョロと周囲を見回し、そぉっと鼻までシーツを下ろして、と。
えっと、それから・・・・・・
////////💦
そうだった。
沙羅は自分の頬と唇に手のひらを添わせて赤くなる。
慌てて首から下に手を伸ばしたら、きちんとバスローブを着ている。
ということは ───
首まで真っ赤になった。
なんてこと・・・記憶が切れちゃってた。
肌はさらさら清潔だから寝ている間にきれいにしてもらっていた・・・らしい。
雨宮沙羅、一生の不覚。
こちらに近づいてくる足音に慌てて頭までシーツを被った。
サイドテーブルにカップを置く音、コーヒーの香り、ベッドの端が揺れた。
「おはよう?沙羅さん。起こしたかな、ごめんね」
そろそろと目元までシーツを下げると笑顔で自分に覆い被さるようにして見下ろす香月の笑顔。
バスローブの前が大きく肌け、逞しい胸元を見た途端、沙羅は慌ててもう一度目の上までシーツを被る。
「(おはようございます・・・)」
と小さく返した。
クスクス笑う声がして、ベッドが大きく揺れた。
シーツの上からぎゅっと抱きしめられた。
「・・・夜明けよ・・・見て、きれい」
沙羅が背筋を伸ばして窓の外の空を見つめる。
香月は沙羅の背からすっぽりと肩を抱き、首筋に唇を這わせながら囁く。
「綺麗だ、沙羅さんの肌は甘い・・・」
「空のことよ。もう ── くすぐったい」
「きれいだ。東京の朝とは思えないよ」
「夜明けは・・・必ずくるのね」
「?・・・」
「私は ─── 私の人生は、愛して愛されることを望んではいけないって気持ちに蓋をして生きてきた。
それに華やかで不夜城のようだけれど、
でもね、、」
「でも?」
「あなたが夜のカーテンを開けてくれたわ」
香月は目を見張った。
あの日、沙羅と離れた一年前の春。
《 どんなに暗くても朝は来る。
今日だって間もなく夜が明ける。
俺たちの夜明けは俺が呼んでくる。
あの人との間の分厚いカーテンを開いてあの人を明るい太陽の元に連れ出す 》
自分の不甲斐なさが悔しくて、
この人を置き去りにすることが情けなくて、
それでも手放せなくて一年間答えを待ってくれと伝えた。
あの朝に俺が心に誓ったことをこの人は知る
「私たちの朝、夜明けね」
「俺、一生、この空を忘れないよ」
腕の中の沙羅が小さく頷いた。
香月を振り仰いで、その唇にそっと口づけた。
次話は「いきなり尾行デート」です。
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