第22話 香月のひとりごと

ドライブデートが楽しかったなんて、今どき高校生でも言わないような素直さ。


切れ長の瞳をキラキラさせて、透けるような白い肌に仄かな薔薇色を浮かべる沙羅さん。


あぁ・・・・可愛すぎる、可愛すぎる・・・

今すぐ部屋まで抱っこして連れてゆきたい。

連れて行ったら夜通しだ、もう限界だもんね。


恋人になって早3ヶ月。

ずーーーーっと、一筋に脇目も振らずにお利口にしていたんだよ俺。


同性同士だからって、不慣れや調査不足(?)で沙羅さんに辛い思いはさせられない。

男の沽券に関わる!

俺のプライドに関わる!


忙しい仕事の合間に今日のための準備を整えてきたんだ。


同性同士のお作法の勉強もしたし。

(断じて予習はしていない!自習はちょっとした)


お道具?も持ってきた。(あくまでノーマルだ)


ベッドはキングサイズだしシャワーの水勢も完璧だった。

部屋は50階だから覗かれる心配もない。


なのになんで、なんで!

俺はこの後にバーであいつらと飲む約束をしちまったんだろう。


俺のパーツは今も起立調整は万全だ。

今夜の沙羅さんはいつもの1000倍、艶っぽくて色っぽい。

周りの男どもはどいつもこいつも涎を垂らして沙羅さんを見ている。

(妄想が激しい)


もう嫌だ、早く二人で部屋に閉じこもりたい。


でも・・・・・・

そっか、でも沙羅さんの「嬉しい」って一言に俺がやられちゃったんだよな。

沙羅砲に眉間と心臓を1mmの寸分もなく、きれ~いに撃ち抜かれたんだった。


そうだそうだ。全部俺の欲が招いたことだ。

修行だ俺、修行が足りないんだ。


「・・・(南無妙法蓮華経・・∞・・・)・・・」


「陽司くんどうしたの?コーヒー冷めるわよ」


「今、よこしまな心が俺を支配しているんだよ沙羅さん」


「え?ヨコシマってなに?」


「いいんだ、気にしないで。俺ね・・・」


「?」


「沙羅さんを想うだけで、メシが冷める癖があるんだ」


「・・・陽司くんって時々哲学者みたい」


「生まれて初めていわれたよ・・・ぷぷッ」


「・・・ふふふ」


くだらなすぎる会話だけど、この人と一緒に笑いあえるるのが何よりも嬉しい。


「俺、幸せだよ」


「私も幸せ」


そういってテーブルの上に置かれたブーケに隠して手を握った。



次話は「鋭い沙羅サン」です。

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