第20話 今カノ・元カノ&元カノ彼氏
「あ!!」(和中)
「げっ!!」(香月)
なんてこった!
沙羅さんっていう甘い酒に酔っていたはずが、いきなり二日酔いになりそうなツラを見てしまったのだ。
何故?どーして!
「か、香月!!・・お前、なんでっ」
そうだ。
椅子から転げ落ちそうになっている大男こそ、The和中。
お前のイメージから14万8千光年遥か彼方のイスカンダル星くらい離れている場だろうが、ここは!
「お前こそ!あぁ・・・なんで、ここで会うかなぁ・・・」
俺の繊細な腰が砕けそうになった。
その俺の下半身にエネルギー注入してくれたのは沙羅さんの甘い声と指先。
「あの・・・お知り合い?」
俺の左腕をそっとゆさぶった細い指。
ハッと我に返り、
「・・・うっ、うん、まぁ・・・」
眉が下がって俺は最高に情けない
大きなため息をつき沙羅さんに向き直った。
「こいつ・・・・あ、いや、こちらは俺の同期の和中。同じ港東署の刑事。
で、こちらは・・・」
はるかを紹介しようとして、多少気まずい気持ちになる。
和中の今カノの前沢はるかは去年の春に1ヶ月だけ付き合っていた俺の、、いわゆる元カノだ。
少し困った顔の香月が口を開くより早く、前沢はるかが立ち上がりペコりと頭を下げた。
「はじめまして、前沢はるかです。私も港東署に勤務している婦警です。お二人の後輩です」
香月と隣に立つ沙羅を見て感嘆の眼差しを向けるはるか、そして和中も慌てて席を立ち頭を下げた。
二人へ女神のような微笑みを向ける沙羅に香月も落ち着きを取り戻したつもりだったが・・・。
しっかりしろ、
「あ、こちらは、あ・・・あ、雨宮沙羅さん──」
沙羅は香月から腕を離し、身体の前で手を重ねゆったりと会釈をした。
「はじめまして。雨宮沙羅と申します。せっかくのお二人の時間をお邪魔してごめんなさい」
華やかな顔立ちの香月と並んでまったく引けを取らない、
和中とはるかは声も出せずに二人に見蕩れていた。
「お客様、お知り合いでしたらお近くにお席をご用意いたしましょうか?」
ウエイターが気を利かせて掛けた言葉に男二人が同時に、
「「 いえ!結構です!」」
といったものだから沙羅とはるかは思わず吹き出した。
香月はウエイターの案内する方へ向かいかけたが、沙羅が “ では、またね ” と軽く会釈をしたのにはるかが立ち上がった。
「あ、あの!・・・もし、ご迷惑でなければ食事の後お話しとかご一緒にいかがでしょうか」
「ま、嬉しいわ・・・(ね、陽司くん)いいでしょう?」
「えっ!?えぇっ!!」
沙羅の流し目にクラッとしながらも、マジかww
それは和中も同じだったようで、
「おい、はるか!迷惑だよ・・・」
「でも〜、せっかくだからお話したいなぁ」
「いや、君らも迷惑だよな!?」
と和中がすがるように香月を見上げる。
頼む、ダメと言ってくれ!の和中の目。
任せろ断るぜ!と思っていた香月だったのに・・・
沙羅が小首をかしげてニコッと微笑んだものだから、俺に勝ち目なんてあるわけなかった。
苦笑いして一息つき、
「沙羅さんがいいなら、俺は別に・・・・いいよ」
「本当に?陽司くん、ありがとう」
沙羅が満開のバラ園みたいに笑うから。
香月の友人に会ったことのなかった沙羅の思いがけない喜びように香月も何だか嬉しくなってきたから。
いいよって思っちゃった。
沙羅とはるかはにこやかに待ち合わせの約束をしている。
男同士は苦笑いしながらも二人に任せていた。
「香月悪い!・・・邪魔したよな」
去り際に和中が香月に向かって手を合わせて謝る。
「いや、沙羅さんも喜んでるしさ。邪魔なんかじゃないよ」
和中にウインクで合図して、
「じゃ、バーラウンジで」
と言い残し沙羅の背に手を添えて歩き出した。
次話は「あなたとディナー」です。
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