第19話 満天レストラン
レストラン ニューヨーク 午後6時55分
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
エレベーターが52階に止まった。
ドアが開いて人々がホールに流れ出し、香月と沙羅は最後に降りる。
隠しようのない鍛えられた体躯は艶を抑えたダークスーツに包まれている。
白いワイシャツの第二ボタンまで外しノータイの胸元はラフでいてセクシー。
革ベルトとウイングチップのローファーの濃いブラウンは香月の同色系の髪をいつもより軽やかに見せる。
並んだ沙羅は上質なリネンの黒緑色のロングワンピース。
鎖骨を程よく隠し背中は広めにあけたほっそりと大人のスタイル。
肘上までの袖、身体を覆うタイトなドレスにプラチナグレーのシルクのハイヒール。
髪はやや緩めに結い上げて耳元、首元にはプラチナとパールのアクセサリー。
小さな黒いクラッチを持ち香月の左腕に右手を添えて歩く。
“ すごいカッコいい・・・!”
“ 誰?芸能人じゃない? ”
“ どこかの社長夫妻とか?”
ヒソヒソ交わす声に香月は落ち着かないが、沙羅は涼しい顔をしている。
「沙羅さん、さすがだよな、俺何だか緊張してガチガチだよ」
「みんなが陽司くんをうっとりと見てるものね。私もドキドキしてきたわ」
「何いっちゃってんの。俺じゃなくて沙羅さんが見られてるんだよ」
「あら、陽司くんよ。ほら見てあの人もあっちの人もみんな貴方を見ているわ。あちらの方に行かないでね?」
倒れる、俺は間違いなくここで大往生できると思うくらい真正面から沙羅砲に撃たれて痺れている。
同時に俺は、瞬時に頭の中でこれからの予定をシュミレーションする。
ディナーで○○○
↓
スカイラウンジで左手に○○して○○○
↓
沙羅さんを部屋へエスコート
↓
× × × × × × ♡♡♡♡♡♡
↓
夜明けの珈琲は俺がサービス
俺の
俺がレストランのフロントで予約と名を告げるとウエイターがにこやかに近づいてきた。
ウエイターは仄暗いフロアの中をミニライトを灯し二人を夜景の見えるエリアに誘導する。
マリアを導く精霊のような厳かな面持ちだ。(と、香月には見えた)
フロアにはピアノ生演奏のニューオリンズ・ジャスが流れ、ドレスアップした人々が料理と夜景を楽しんでいる。
その中を綺麗な歩調で進む俺の沙羅さんを全世界が見つめている。
(そうだろ?見るなよ、でも少しなら見てもいいよ。俺の沙羅さん最高すぎるだろ、と香月は密かに勝ち誇る)
俺はすでに、沙羅さんっていう極上の酒に満たされて酩酊状態・・・だった。
(もう、メロメロ)
だった・・・が!!
っがーーーーーー?!
えーーーーーーーーー、おい!!
次話は「今カノ・元カノ&元カノ彼氏」です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます