第18話 沙羅の覚悟
・・・ポーン
トロンと夢見るような瞳の沙羅の腰を抱き、41階でエレベーターを降りた二人。
「やっぱり結構忘れてるな。フロントはどこだったかな」
豪華な生花のアレンジをぐるりと周り、やっと見つけたフロントでチェックイン、完了。
荷物をベルスタッフに渡して50階の部屋に案内された。
「見て、すごい!なんて綺麗な眺め」
さっきまでの泣きべそはどこへやら。
通された部屋は新宿駅西側が一望できるガーデンスイート。
リビング、ベッドルーム、バスルームが独立した一般のマンションでいう4LDKほどあるゆったりとした室内。
沙羅はニコニコと楽しそうに各部屋を見て回って歩くのに香月もついて回っていたが。
ベッドルームの方へ行った沙羅が、あっという間にクルリと引き返してきた。
「沙羅さん?」
「あ、あ〜?・・・広くていいなー」
と上の空でリビングに戻る。
香月がベッドルームをそっと覗き、(あぁなるほどね)と密かに微笑んでから、その場を離れ沙羅の待つリビングに戻った。
リビングでは沙羅がコーヒーを淹れ、窓から外を眺めてた香月にカップを渡して隣に立った。
「疲れた?沙羅さん」
「全然。でもこんなに太陽を浴びたのは久しぶりかも」
そうだね、と言いながら腕時計をみると午後5時30分。
食事まで1時間半か。
「陽司くん、予定だと7時から夕ごはんね」
「そうそう。まだ時間あるから俺、シャワー浴びてきていいかな」
「はい、どうぞお先に」
沙羅はいそいそとキャリーケースから荷物を取り出し始めた。
まったく、何をしていてもこの人は可愛い。
リスみたいにクルクル動き回ったり不意を突かれてオロオロしたり。
香月は今夜着るスーツを入れたガーメントケースをクローゼットに置き、バスルームへ向かった。
side:沙羅
リビングに一人きりになって大きく息をついた。
びっくりした・・・いい大人が今さらと笑われそうだけど、かなり不自然な態度をとってしまった。
陽司くんに変な奴と思われてないかな。
奥の部屋は、ベッドルーム。
大きな窓から見える新宿の街、白いカーテンがふんわりと寄せられていて居心地のよさそうな部屋。
そして部屋の真ん中に置かれたベッドは一台だけ。
それも大きい・・・キングサイズよね。
いきなり現実を目の前に突きつけられて、自分の覚悟を迫られた気持ちになった。
バスルームからは香月がシャワーを浴びる音が微かに聞こえてくる。
沙羅は夕食で着るドレスにスチームをあててクローゼットに掛けた。
ふと見ると床に置きっぱなしのガーメントケース。
気になってファスナーを下ろすと香月の黒いスーツが収められていた。
「シワになってる」
沙羅はスーツにもスチームを丁寧にあてハンガーに掛けた。
ワイシャツもセットして、最後に手で撫でるようにして整える。
「うん・・・私は私。正面からどーんといっちゃおう。
よしっ、キングベッド、どんとこい」
小さく握りこぶし。
side:香月
シャワーを浴び下着とジーンズだけ履いて髪をバスタオルで拭く。
アメニティはイソップ。
セレブに人気のブランドだけあっていい匂いだ。
これを沙羅さんが使ったりしたら、香りに引き寄せられた男共が列を作りかねない。
危ない危ないと思いながらも、湯上りの匂いを想像して鼻血が出そうなる。
ダメだ、ダメダメ。落ち着け俺本体と俺のパーツ。
ブツブツ言いながらリビングに戻ると、
「・・・・・・キングベッド、どんとこい」
と沙羅が両手拳を握って気合を入れている。
それを見た途端、こみあげてきたモノ(鼻血を)押え、洗面所に駆け戻った。
「おーい、おいおいw、沙羅さん頼むよ、勘弁して〜💧
俺を殺さないで〜💧」
次話は「満天レストラン」です。た
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