第17話 小さな嫉妬
ハイアットガーデン東京 午後4時45分
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首都高の都心環状線から新宿方面へ向かう。
新宿副都心の中心地に建つ新宿ガーデンタワー内のハイアットガーデン東京。
目前に東京都庁が見える、新宿の中心に建つラグジュアリーなホテルだ。
パーキングに車を入れた香月は、沙羅と自分の荷物を片手に持った。
沙羅の背中に手を添えてホテル2階のメインエントランスからフロントのある階上へ向かうための専用エレベーターホールへと移動する。
香月のエスコートにここまで何の疑問もなかった沙羅だが、迷うことなく館内を歩き、慣れているかのような行動に微かな違和感を感じ始めていた。
もしかすると以前ここに来たことがあるのかもしれない・・・
誰と?いつ?
なんて思いはじめた途端、沙羅は気持ちが落ちてくるのがわかった。
ホテルに着いてから徐々に口数が少なくなってきた沙羅に香月も気づいていた。
沙羅さん、どしたの?
何か気に入らなかったのかな。
いきなり帰る!なんて言われたら俺、マジで泣いちゃうよ。
不安はピークに近づく。
「あの、、沙羅さん。どうかした?」
「・・・・・・」
「お腹痛いとか・・・」
「お腹は空いてないし、鳴ってないし、痛くないです」
これはいよいよおかしいぞ。
沙羅が逃げ出さないように腕を背中から肩にまわした。
沙羅の身体がコチンッと緊張する。
ホテル専用の直通エレベーターには自分達の他は誰もいない。
乗った途端に、
「あ、あの沙羅さ・・・」「陽司くん」
同時に声が出る。
「は、はい沙羅さんからどうぞ・・・」
「・・・前にどなたかとここに来たことがあるのね」
「へっ?」
「やっぱりそうなのね・・・。でも今日だけは・・・私と初めてのところで、あの、その・・・・前の思い出とかなしで・・・・・・」
あれぇ、こりゃ壮大な勘違いしてるんではなかろうか?
「陽司くんにすれば慣れた場所の方がサクサクいくからいいかもしれないけれど・・・私は初めてなのに・・・(モゴモゴモゴ )・・・」
「沙羅さん」
「・・・はい」
「俺、こうして来るのは初めてですよ」
「うそ・・・陽司くん、すたすた、してた」
スタスタしてたって・・・(笑)
銀座のきら星達の頂点に立つ人の言葉とは信じられない純情と可愛らしさに俺、鼻血が出そう。
でも、もう少しだけこの可愛さを見ていたいかも・・
「いや、一度・・・来たかな、確かに」
《 やっぱり──そうなのね・・・💧》
「女性じゃないですよ」
《 えっ?じゃ男性?陽司くんてどちらもOKの人だったの? 》
「三人で来た、かな?」
《 ど、どうしよう・・・お三人さんなんてレベルが高すぎる。私みたいな初心者は陽司くんにすぐに飽きられて・・・どうしたらいいの?》
沙羅はいよいよ震えてきて、それが香月の腕にも伝わってきた。
可愛い、可愛すぎる、でもこれ以上やったら泣かれてしまうからこの辺で──。
「一課長と、北畠警部補と俺と三人で。捜査で来ましたよ、一度だけね」
「は─・・・─い・・・?」
「捜査です。そ・う・さ。この慌てん坊の沙羅さん」
「も、もう〜〜・・・!」
ヘナヘナとエレベーターの中で座り込みそうになる沙羅。
香月は難なく片手で沙羅の身体を抱き寄せた。
エレベーターは30階を通過する。
正面からニッと笑いかけ沙羅の睫毛を舌先で触れて、
「俺を疑った罰ですよ」
香月の唇が沙羅の唇を捕らえてそのまま性急に甘噛みしてゆく。
次話は「沙羅の覚悟」です。
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