第4話 私の故郷
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「どうしてパーティーをクビになったことを知っている?それに、俺が代わりなんてできるのか?」
「君以外でも務まるかもしれない。でも、君しかできないことなんだ。ぼ、私が君の過去を知っているように、運命って物が世には存在する。君は運命に沿って幸せな道を----いや、私の故郷を助けてやってほしい」
ここまで言われたら、断ることなんてできない。初対面の謎の人が俺の幸せを祈っているのが少し理解できないが、一旦はどんな仕事内容か覗いてみたい。
「君は変わっていないな、せ----」
彼はそう言いながら、俺に背を向け更に奥の方へ歩いていった。元々顔全体が覆われているため、彼の声は途中から聞こえなくなった。近づくな、と言われているため近づくこともできない。
変わっていない、初対面の人に言われる言葉ではないと思うが、もしかして彼とは一度どこかで会っているのか?
「別れだ、絶対にせ--、いや村を救ってくれ。村を立て直してくれれば、後は自由にしてくれて構わない」
そう言うと、彼は教会の奥にある暗闇の中へ入っていった。近づくな……この言葉を忠実に守り、俺も近づかなかった。少し時間が経ってから、俺も教会の外へ出た。外に転がっていたゴブリンの死体らに手を合わせ、地面の中に埋めた。
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何でも屋に帰っても誰も居なかったため、俺は酒場に向かった。酒場はたいへん繁盛しており、酒場の主人も俺に構ってる暇はない様子。仕方なく俺も注文し、閉店時間まで待つことにした。よく見ると、栄えている店の端で何でも屋の店主が酔い潰れていた。
「あぁ、悪ぃな。仕事つってもそんなに無いんだよ。酒場で働いてもらおうと思ったが、それじゃあお前の腕は活かされない。活かされる仕事といったら何でも屋しか残っていなくてな」
仕事を終わらせた酒屋の店主はそう言った。俺の腕が活かされる仕事か。1番は討伐パーティーに入ることなんだが、それは難しい。いくら追放された事実が世間に出回っていないからと言って、いつかは出回る。その恐れがあるくらいなら、パーティー関連の仕事は避けた方が良い。
俺は知らないのだが、顔の広い店主なら知っているだろう。立て直しを依頼された、ウェール村について尋ねてみた。
「ウェール村か、聞いたことはある。確かポリスタットに近いんじゃないか?それに属する最小の村だった気が……調べてくる」
そう言うと彼は店の奥にある本棚へ戻った。ポリスタットとは、俺らが今いる都市・シティストの隣にある都市。討伐パーティー時代はよくそこに派遣された。何でもモンスターがよく出現する地域らしく、中心部近くでも大量のモンスターが蔓延っているとか。
しかし何度派遣されていたとしても、ウェール村の存在は知らなかった。中心部に派遣されることが多いからか、はたまた最小の村だから知らないのか。
と、ここで店の端で寝ていた何でも屋の店主が起き、話し始めた。
「俺は知っでるで、ティナがいるどこだ。おめえくれえの歳で、そりゃもうべっぴんさんだ。ティナの爺は気に食わんが」
こんな所で縁が繋がっていたのか。これこそさっきの彼が言っていた運命ってやつか。俺と同じ位の歳で可愛いが、彼女の祖父は気に食わない、と何でも屋の店主は言っている。それは単純に店主と馬が合わないだけか、それがどうなのかによって俺の今後の人生が変わってくる。
「まぁ、おめえなら何どかなるだ。己を信じどけ、ガハハ」
彼はそう俺に助言し豪快に笑うと、また眠りについた。己を信じろ、か。最近まで信頼していた仲間から追放された身としては、信じられるのは自分しかいない。一応店主たちも信じているが、それでも信じるのは自分だけ。自分は自身と永遠に共生する、唯一の存在だから。
「向こうに家はあるんだろ。じゃあ早めに行っといた方がいいな。朝イチの車に乗るんだ、荷物も届けてくれるさ」
この世界には”車”と呼ばれる乗り物が存在する。馬車や牛車とは違い、モンスターが台車を引く乗り物。これを使えば、牛や馬よりも多くの荷物や人をより速く届けることができる。
基本、モンスターは討伐対象だが、例外も存在する。車に使われる”アリュスタ”という、牛に似た中級のモンスターであったり、壁や建築に使われる”ゾロイワ”といったモンスター、ゴブリンに似ているが人を襲わないホブゴブリン等がこれにあたる。
ホブゴブリン以外は、人間を襲わないことはない。全然襲ってくるが、人間は共存の道を選んだ。共存といっても調教させ、”人間を襲う”といった意志を消させた。
「何がどもあれ、職が見つかっだんならええこどだ。俺は酒場で働きだいな、タダで酒飲めるしな」
「あんたには飲まえせねぇよ。働きたいなら見習いからだな。商品に手出したら許さないからな?」
2人のやり取りを横目に、俺は店に置いてある新聞を見つけた。都市で発行されている、前日の起きたことがまとめられた紙。
いつもなら討伐パーティーについて書かれているが、今日の新聞にはそれが書かれていない。ムスル戦に勝利した時も大々的に報じられ、新聞にも大きく書かれた。
モンスターを討伐しなくとも、人気のあったガルやサタナの特集記事が組まれており、新聞でデリーシャのメンバーを見ない日は一度もなかった。
それなのに、ガルたちの特集記事も無ければ討伐に関する情報も無い。俺が追放されたこともまだ世には出回ってない。
俺が居なくなっただけで、討伐パーティーが回らなくなったか……いや、それはないか。それは有り得ない。それなら俺をわざわざクビにしないな。馬鹿でも分かる。
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