Living now!

今回の使用単語

「うたえる。きょく。ちゃんと」

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「うわぁぁぁ、どうしよ……緊張してきたぁ……。曲、ちゃんと歌えるかなぁ……」


 いつもみんなの中心で笑顔を絶やさずにいた彼女が、舞台袖で手の震えを必死で抑えようとしている。

 初めてのライブ、平常心でいられないのも無理はない。少し前までただの高校生だったのに、あと数分もしないうちに全校生徒以上の人たちの前に立って歌い踊るのだ。髪を整え化粧をし衣装を身に纏っても、心の準備だけはなかなかできそうにないらしい。


「大丈夫だって! 今日までみんな、い――――っぱい練習してきたんだからさ」


 最年少の彼女は本番前でも落ち着いていてしっかりしている。グループの精神的支柱、音楽やステージのことになるとやはり頼りになる。


「そうよ。見に来てくれる人たちを笑顔にさせるために頑張ってきたのに、そんな調子じゃ誰も笑顔になんてできないわ」


 どんな状況でも彼女はストイックで常にお客さんのことを考えている。だけど、彼女も同じように震えているようだ。それでも、緊張を跳ね除けようとするプロ根性、志が誰よりも高い。


「まあまあ、そんなに肩肘張らなくてもいいじゃん。できることだけやって、楽しも?」


 彼女は対照的にとてもリラックスしてる。気の抜けたような姿勢で一見やる気がなさそうに見えるが、彼女の実力は本物だ。肩を叩いてみんなの緊張をほぐそうとしている、一番のメンバー想い。


「はいっ! みんなで楽しく歌って踊って、それでとってもhappyになりましょう♪」


 華のある笑顔でグループ全体の空気を明るくさせる。センターに匹敵する魅力と緊張をも楽しむ精神力。リーダーという概念をあえて作っていないグループだけど、誰かを据えるとすれば彼女が一番適任かもしれない。深呼吸をしようやくいつもの笑顔を見せてくれたセンターの腕を引き、客席に向かって手を振り真っ先に観客に顔を見せた。

 私が見守ってきた少女たちが、今花開く。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

岐阜県高山市付近だそうです。

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