君を奪う言葉

今回の使用単語

「かみばさみ。へんこう。かけよる」

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 真夜中。路地裏に君が倒れているのを見付け、駆け寄る。ひどい怪我……一体何があったの? 答えられるような状態じゃないことは姿を見れば分かるけれど。これは予定を変更して、君の治療に専念しないといけないな。人間を助けるのはその後だ。君も役目のことなんて今は忘れて。

 神は無条件に無差別に人間を助けてくれるなんて、そんな綺麗事どこにもないのにね。今日も祈られて願われて、もちろんその分ちゃんと返していかないといけないとは思っているけれど。君だってそうだろう? 必要とされているなら応えないとってずっと気を張っている。こんなにぼろぼろになるまで頑張る必要ないのに。

 どれだけ頑張ったって、全部を一番良い形にはできない。だから、いつまでも祈られ続けるし願われ続ける。それでも手が回らないと「裏切られた」って言われる。……まさか。

 裏切りには「切る」ことで報復するに限る。そうやって人間たちが使った道具――神鋏。人間が神に傷を付けることができる唯一の手段。君はあれで襲われたのか? 随分昔に使わないようにと戒められて封印されたはずなのに。

 やはり、人間は同じ過ちを繰り返す生き物らしい。祈りや願いの裏側に潜んでいた刃がその証拠。見えないことを良いことに、傷を付け合い続けている。とても愚かで情けない。

 ねえ。君はそれでも人間を助けるのかな?




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広島県庄原市付近だそうです。

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