子どもは手がかかる
今回の使用単語
「ぎじゅん。ざしき。ざつよう」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
月に一度の子ども会の集い。同じ地域に住む子ども達が集会場に集まり、自由に遊ぶ行事だ。
部屋の中で絵本を読む子、折り紙をしている子、ごっこ遊びをしている子。外に出てドッジボールをしている子、鬼ごっこをしている子、探検ごっこをしている子。十人十色……正確にはその二倍とプラス三人。様々いるけど、みんなお昼の時間になると「お腹すいた」と声を揃える。そして、そんな子たちに昼食を用意してあげるのが私たち保護者の役目。
……なんて。ようは、雑用係。「あれがほしい」「これはいやだ」「おかわり」「もういらない」飛び交うわがままに笑顔で対応しなければならない。子どもの数だけ親が集まっているわけでもないから、てんてこ舞い。ああ、猫の手でも借りたい。
「…………」
キッチンで食いしん坊の子の三度目のおかわりをよそい、ふと振り返る。ボブヘアの女の子がぼーっとこちらを見ていて一歩後ずさった。全く気付かなかった、気配もしなかった。
「あ、おかわり?」
「ううん。手伝いにきた」
子どもの為の仕事に子どもの手を借りるのはどうかと思ったけど、猫よりずっと頼りになる。「じゃあ、お願いしてもいいかな」と目線の高さを合わせ、しゃもじを手渡した。
白米をお茶碗によそうだけなら問題ないだろうと思っていたのに、なんだか危なっかしい。ぼろぼろ小さい塊のご飯をテーブルに落としている。
「あれ、その子は?」
一緒に雑用係をしていたママ友の一人が声をかけてきた。両手が食器で塞がっていたから片側の食器を引き受ける。
「手伝ってくれるって」
「……そんな子、いたかな?」
「え?」
自然と視線が女の子の方へ行く。たしかに、見覚えはない。けど、子ども会に入っている子ども達全員の顔はさすがに覚えていない。ママ友は上の娘ちゃんが五年生だから私より長く子ども会にいるし、顔もある程度覚えているみたいだけど。
なんだか不気味に感じ、子ども達がご飯を食べている部屋を覗いた。配膳されている席全てに子ども達が座っている。人数を数えてみると、二十三人。今日の参加者全員部屋にいる。あれ? じゃあ、あの子は……?
振り返ると、どこにもそんな子の影はなかった。ただ、テーブルにはご飯の塊がいくつも落ちている。
「もしかして……」
「座敷わらし……?」
ママ友と目を見合わせる。「まさか」とは思っていても、言われればそうとしか思えなくなってくる。いや、語順が逆か。そうとしか思えないことを言われてしまって、否定したくて「まさか」と思うようにしているんだ。
だけど、二人してしっかりと目にしてしまった。いないはずの誰かを。彼女は一体何がしたかったんだろう。何か伝えたかったのではないだろうか。どうしてか考え込んでしまう。
もやもやしたまま、「おかわりまだ〜?」という声に応えた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
三重県菰野町付近だそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます