窓を拭けばオレはどうなる?

今回の使用単語

「もどった。ふいた。うでたて」


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 もし、あの時に戻れたら――


 誰だって一度は考えたことがあるだろうそんなことを、平日の真昼のベッドの上でぼんやりと思った。窓からの日差しを疎ましく思いながら、真っ白な天井を見上げる。


「オレ、何やってんだろ」


 小、中、高、大……と特に何もすることなく順当に進んでいってしまえたせいで、努力の仕方が分からないまま大人になってしまった。そんなことだから、就職に失敗して社会から除け者にされたんだろうな。

 今日も昼過ぎの起床、何もしていないのにたっぷり十時間寝ないと気が済まないなんて、怠けた身体になったものだ。昔は気が向けば筋トレとかして、身体を動かしてたのに。

 身体を起こし、朝飯兼昼飯を作る為にキッチンへ向かおうとドアを開け一歩部屋から外へ出た。


「え?」


 洗わずに放置していた食器の山に落胆すると思っていたのに、目の前に飛び込んできた光景はそれとは全く違った。

 等間隔に並べられた机と雑巾や箒を持った数人の学生。見覚えのある制服、学ランと青いリボンが特徴的なセーラー服。間違いない、ここは十年近く前に卒業した母校だ。


「なんで……?」

「何言ってんだ?」


 何事もないように声をかけられる。顔を見るとこれまた見覚えがあった。高校時代の大親友が当時の面影そのままに学ランを着ている。慌ててオレの身なりも確認する。学ラン。第二ボタンまで開けていて、Yシャツの中に赤いのTシャツを着ている。これって、まさか……


「戻った……?」


 漫画とかアニメでよく見たことある展開だ。何かをリベンジしたいと強く願ってそれが叶ってタイムリープするとかいうやつ。まさか、ホントにそういうことって起こるのか。いや、たしかに戻りたいって思ったけど。オレにはリベンジしたいことなんて特にない、強いて言えば人生そのものをやり直したいくらい。

 だから、高校何年生かの放課後のとある掃除当番の日を起点に人生が分岐するとは思えない。


「何ぼーっとしてんだよ、とっとと帰ろーぜ」

「あ、え、でも、掃除当番……」

「んなもんいつもサボってんじゃん。窓拭いたか拭いてねーかなんて、ぱっと見じゃ分かんねーって」


 そういえば、そんなことあったな。掃除当番が怠くて毎回毎回女子に押し付けてそそくさ帰ってたっけ。ん? たしかこの時って……。

 思い出した。この日に限ってサボったことが体育担当の担任教師にバレて、腕立て伏せ百回の刑に処されるんだ。結果的に時間も労力も削り取られて、大人しく掃除していた方がマシだったって後悔するんだ。


「いや、たまにはちゃんと掃除参加しようぜ」

「なんだよお前、どういう風の吹き回し? 優等生ごっこ?」

「そんなんじゃないけど……」

「んーまあ、別にいいけど?」


 よし、とりあえず腕立て伏せは回避できただろう。こんなことの為だけにタイムリープなんて、ありえないよな? じゃあ、これで一体何が変わるんだろう。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

福島県福島市付近だそうです。

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