生きたい
無人島に一つだけ持っていきたいものは?
よくそんな質問を耳にするけど、どんな意図があるんだろう。そもそも「持っていきたい」ということは、事前に用意をして無人島へ向かうということだ。用意ができるなら一つと言わずにいくつでも使えそうな道具を持っていく。移住プログラムでもないなら、それくらいして当然だろう。
サバイバル術や頭の回転の速さを測りたいなら、「無人島に漂着したときに一つだけ持っていたいものは?」の方がいい。絶対にそうだ、今なら言い切れる。
僕は今、半袖Tシャツ一枚で大海原に投げ出され、無人島らしき島に漂着した。当然持ち物は何もない。全部地球上のどこかへ流れていってしまった。だから、仮定の質問なんて何の意味もない。現実はそう都合の良いものではないのだ。
もはや、漂着できただけラッキーかもしれない。一つだけ持っていたいものは、間違いなく命だ。今後誰に訊かれてもそう答えようと決意した。
いや、もう誰にも訊かれることなんてないかもしれない。たった一つ持っていられたこの命さえ、いつ絶えるか分からない。揺すって落ちてきた木の実も獲れる魚も安全に食べられる保証なんてどこにもないんだ。ここには案内所もなければ一緒に生活をする仲間もいない。
どうすれば助かるのだろう。受け身にならざるを得ない中、耐える術を必死になって考える。サバイバル術や頭の回転の速さを測るわけでもない、定番の質問が定番たる理由を身をもって理解した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今回の使用単語
「はんそで。うなばら。たえる」
愛媛県新居浜市付近だそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます