お米の中には
ぼくのいえには、くらがあります。その中にはこっとうひんというものがあるそうです。お母さんから入ってはいけないと言われてたけど、ぼくは気になったので、友だち六人と一しょにこっそり中に入りました。
中はほこりがいっぱいで、みんなせきが出ました。そして、はこもいっぱいありました。はこには高そうなお茶わんが入ってました。これがこっとうひんなのかと思いました。大切なものだとお母さんは言ってたのにちょっとよごれてて、なぜかお米が一つぶついてました。ぼくたちじゃないだれかもこっそりここに入って、しかもごはんを食べてたならめっちゃおも白いと思いました。
くらにはこっとうひんい外にもたわらがありました。たわらにはお米がいっぱい入ってるらしいので、この中のお米を食べたのかもしれません。すいはんきはないのにどうやって食べたのかふ思ぎです。
友だちとそんな話をしてると、とつぜん目の前がまっくらになりました。ぼくたちに気づかなかったお母さんがとびらをしめてしまったんです。
何も見えなくてこわいよ……。
ごめんなさい、ここから出してください……。
今どからちゃんと言うこと聞きますから……。
* * *
夏休み真っ只中、私が受け持つクラスの児童が同時に七人も行方不明になった。
二学期に入って最初の週末、最後に彼らの姿が目撃されたという一人の児童の家の蔵へ足を踏み入れた。立ち入り規制が解除されてから入った人間は私が初めてらしい。何も変わったところはないように思えたそこに、この作文が書かれた原稿用紙が落ちていた。いつも作文の宿題を提出しない彼の文章を、こんな形では見たくなかった。
彼らはどこへ行ってしまったのか、無事であることを願うばかりだ。
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今回の使用単語
「こっとう。たわら。かいじょ」
兵庫県洲本市付近だそうです。
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