四温日和
春、四月、新学期。私たちは新しく部活を作ろうと動き出していた。
卓球同好会。部ではなく同好会なのは、学校の決まりでそうなっているから。創部するときはまず同好会から始めなければいけない。同好会の基準を満たした状態で一年間活動が続き、それが認められて初めて部として存在できるのだ。
同好会として認められる基準、「学生として相応しい活動内容であること」や「校内で活動が可能であること」などなど。その中でも一番大事なのが、「部員が十人以上であること」。
そう、何よりも部員を集めないといけない。現状は私を含めて四人。あと六人。その内訳は先輩でも後輩でも構わないというから、新入生に声をかけることにした。
駅前から校門まで続く桜並木に沿って並んで、真新しい制服で身を包んだ新入生に勧誘のチラシを手渡す。他の既に部活として成立している部に所属する人たちに負けないように、発起人である彼女は声を張り上げた。
私は彼女に誘われて同好会発足に関わっただけの人数合わせ。卓球の経験もない。咲き誇った桜の花びらが一片だけ散ったように、その役割が終わればいなくなってもいいような存在。だから、この場にいる必要も本当はないのかもしれない。私は彼女のように人前で大きな声も出せないし。だけど、一生懸命な彼女を見ていると私もなんとか力になりたくて、身体が勝手に動き出す。
「あの……!」
桜並木の通学路から外れて細い抜け道の方へ足を運んでいくぴかぴかのセーラー服姿を見つけた私は、早足で駆け寄り彼女に声をかけていた。
「卓球同好会、興味ありませんか?」
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今回の使用単語
「たっきゅう。はなびら。はやあし」
広島県竹原市付近だそうです。
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