第16話 お茶会での違和感
2019年9月ごろに、私はシナリオセンター大阪校研修科の過程を全て終えて、最後の過程である『作家集団』に辿りついた。作家集団など仰々しい名称ではあるが、ほとんどの人は何かしらの受賞歴や実績があるわけではない、あくまでもアマチュア作家である。
講義の形態はほぼほぼ研修科と同じであった。同じ教室で行われるし、私の場合は先生も引き続きだった。ただ違うのは、前述したライターズバンクを利用できるのと、課題の形式が異なること。これまではペラ20枚、映像にして約10分の尺の作品を提出していたが、作家集団ではペラ60枚、映像にして約30分の作品を提出することになる。尺が一般的なコンクールの尺に近くなったので、講評を受けた後に少し手直しを入れればそのままコンクールに応募できるので、デビューまでの負担がより少なくなる。
私としては出来るだけ研修科の内に華々しくデビューしたかった。なぜならセンターの広報誌などを見ても、センスのある人は結構研修科の内からデビューしていたからだ。改めて私のシナリオライターとしてのセンスは凡人並みなのだと思い知らされた。だから作家集団での目標は、一刻も早くデビューもしくはゲーム会社に就職を果たすこと、停滞しないことだった。
しかし作家集団まで進むとそれ以上進級できず、ずっと同じクラスに留まることになるので、数年来のおつき合いのクラスメイトが和気あいあいと過ごしているようなちょっと独特な空間が形成されているのに気づいた。元々私は学校でもボッチで教室では友達の輪に入れないようなタイプだったので、なんだかその手の雰囲気に敏感になっていた。
とは言いつつも今回はハブられることもなく私は温かく迎えられ、講義終わりには「皆で近くのモスバーガーや喫茶店でお茶をするから一緒にどう?」などと誘われたりもした。研修科ではあまりにも皆がサーっと引き潮のように帰っていくので、このムードはむしろ求めていたものだった。当初、私は積極的にお茶会に参加するようにしていた。
しかしながら次第にそれに参加することが億劫になっていた。遠距離通学なので2時間も過ごせば帰りが午後八時を回るとか、そもそも2時間も人の話を聞いているのが苦痛だし、かといって半時間程度で一人帰るのも気が引けるしというのもあるが、一番の原因はそこでクラスメイトの話の内容が、ドラマや映画の話ばかりだったからだ。
第12話の、研修科に進級した直後に私とシナリオセンターの方向性の違いについて言及した。シナリオセンターはあくまでも"ドラマ・映画脚本"を中心に学ぶのに対して、私は"ゲーム・アニメ"などサブカル寄りというかみ合わない状況。それがお茶会の際に話題に如実に表れて、私は会話にまったくついていけなかったのだ。それこそお茶会に参加していた当初は(後学を広めるためだ……)と我慢して聞いていたが、だんだんとそれすら苦痛になっていった。これなら家に帰って休むか何か作品を書いた方がマシだ。
それでも、「交通費だけで4000円も払っているのに、講義に出て自分のものか、他人の作品を2作ほど批評し合って帰るだけでは、コストに対してまったく割に合わない。どうせならここでしか得られない情報の一つでも持ち帰りたい」という思惑から、私は作家集団を辞めることになる約2年後まで、一応お茶会に参加するようにはしていた。
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