第8話ロマンスに叩きのめされる

(あっ、美人さんだな……)


と入学初日から思っていた、同期でもひと際目を引くフェミニンな女性がそこにいた。


(声かけてみようかな。でも……)


これがもし女子高校生とかならアラサーの私が声をかけたらOUTかもしれないけど、年頃は同じか少し下に見えたので、まぁ通報されるようなことはないだろう。

だけど自己肯定感の低い私はどうしてもそういう勇気は出てこず、その後しばらくは見かけてもズコズコ引き下がるしかなかった。


(もうちょっと、どんな人か知ってから)


で、どんな人だったかというと、授業態度はいたって真面目だし、それにライターとしての才能の片鱗を時折見せるデキル人であった。というのも、ある基礎科の授業でシチュエーションに沿った1分ほどの台本を作る演習があったのだが、約20作中、彼女のものが一番出来栄えがよく、表彰されたぐらいだった。

ちなみに私のは一番クソみたいな出来で、正直穴があったら入りたかった。


(こ、これはいかん……!)


一挙に彼女のことを浮ついた目で見ることは止めて、乗り越えるべき壁と見るようになった。


その後の彼女だが、なんと進級先の研修科で同期で唯一一緒になり、「やったぜチャーンス!」と思いつつも、1年ぐらい共に机を並べているうちに、「たぶん性格が合わないだろうな」と思うに至り、現在、お互いシナリオセンターに通学しなくなったが時折、「お元気ですか」と連絡する程度のお友達として関係が続いている。

いずれまた共に机を並べて一つの作品を作り上げる日が来てくれるのを私は切望している。

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