第3話 威光
「ううう、とうとう来ちゃったか……」
2017年早春の頃……私は初めてシナリオセンター大阪校へと赴いた。その日は入校志望者向けの見学会が行われる予定だった。
「……しょぼっ!!」
シナリオセンターは雑居ビルの数室を借り上げているだけだった。自社ビルとまでは言わないまでも、昭和中期に建てられたような古臭い建物の一部を間借りしているだけだなんて……なんだか不安になってきた。
「だけど、金持ってなさそうなのが逆に安心かも……」
先日のトラウマがよみがえる。それは別の専門学校からかかってきた営業電話で、もめにもめた件。数日おきに電話をかけてくるのでキレたのだが、あのぐらいがめつくないと儲からないのかもしれない。あの学校には立派な校舎があった。
金を持っている学校=がめつい
がめつい=信用ならない
金を持っている学校=信用ならない
の三段論法からの、
『信用できる=金を持っていない学校』
という対偶関係で、このボロい学校は信用できるのかもしれない……
「ま、全ては授業を見てからやな」
とりま見学会へと赴いた。
見学会は大教室で行われた。ホワイトボードを正面に長椅子が左右10列ほど並べられている。一挙に2,30人は授業を受けられそうで、実際そのぐらいの数の生徒が掛けていた。
私も席につき、辺りを見回す。生徒は老若男女様々。2,30代が中心と見えるが、それに負けないぐらい中年のおじさんおばさんもいる。ご年配の方もちらほら……三十路ど真ん中の私でも気兼ねなく席を並べられそうだ。
室内は簡素そのものだったが、ある壁一面だけはとても賑やかに飾り付けられていた。それは映画やテレビ番組などのポスター。すべて同校出身者が携わった作品とのこと。
ざっと見渡しただけでも、
『朝ドラ ひよっこ』『ドクターX』『相棒』『下町ロケット』『科捜研の女』『砂の器』『テセウスの船』『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』『アイカツ』『七つの大罪』……
(メジャーどころだらけじゃねぇか……!?)
私はゲームのシナリオライターとして活躍したいと思っていた。しかしもしここから国民的アニメやドラマを書く機会をいただけるのなら……なぜかヨダレが止まらなかった。
(ショボくて古臭い校舎の学校のクセに、なかなかやるじゃねぇか)
という何様な目線を崩さぬまま、見学会を担当する講師を迎えた。
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