第367話悪魔編・偽その56

 時はたち、とうとう運命の日がやってきた。

 来遊夜豪こと初代怨霊。彼が悪魔へと切り替わる日。それが10月4日。この日に向けて怨霊たちは本格的に動き始めた。

 彼らはこの街全体を動き回り、怨霊の力を充満させていた。その影響で街に住む人たちにはとある事象が発生していた。

 悪夢を見るということ。それが怨霊の力が充満してしまった証拠となっていた。

 それらをキッカケに怨霊たち……初代怨霊から別れた3人の怨霊は動き始めた。

 怨霊αに取り憑かれた万邦夜美奈。怨霊βに取り憑かれた複数の女性。そして怨霊γに取り憑かれた音夜斎賀。

 私が狙うのは音夜斎賀であり、他の2人は計画に支障のある存在だった。もちろん彼らも来遊の血を引く存在であるから、私の求める存在であることに違いはない。

 けれど彼ら2人と音夜斎賀には明確な違いがあった。それは音夜斎賀は彼らとは別の思想を持っているということ。それでいて私の想像通りの動きをしてくれる人間だということ。

 だから音夜斎賀にはここで退場してもらうわけにはいかない。その代わり他の2人を退治することに専念しなければならないんだ。彼らが残っていれば今後の計画に支障が出る。それは初代怨霊も含めてね。それに彼ら2人を倒す目的自体はみんなと一緒だ。何の疑問も抱くことなく、私はみんなと行動を共にすることが出来る。

 ともあれ、なんとか無事に2人の怨霊を除霊することに成功した。音夜は逃げ切ることに成功したようで、私も一安心だよ。

 

 私は姫蓮ちゃん、そして動物霊の犬に取り憑かれた土津具君と共にとある研究施設へと向かった。そこには魁斗君や師匠の姿だけでなく、紅羽ちゃんや魁斗君の姉妹、それに金髪の少女……シーナという人物もいた。

 なるほど……どうやらここで全てを明かすつもりなんだね。

 私は後方で魁斗君の妹とお話ししている紅羽ちゃんに目を向けた。結局、遊園地に紅羽ちゃんを向かわせてどうなったのかはわからない。魁斗君から結果を聞く前に怨霊が動き出してしまったからね。

 けれど彼女がここにいるということは、何かが変わったんじゃないかと私は考える。だってそうでしょう? 幽霊であることを除けば彼女はただの女の子だ。この場にいるのは不自然だ。何かがあったはずだ……そう考えていたらその答えは数分後に理解することとなった。

 というのも先ほどの金髪の少女。シーナ・ミステリという人物。私は彼女を利用して魁斗君と共に遊園地に向かわせたんだ。どうやらそれ自体はうまくいったみたい。

 けれど問題はそこじゃない。師匠の身に何が起きていたのかをみんなに話している時、さらっととんでもないことがわかった。

 シーナは神魔会のメンバーであり、ゴーストコントロールを有している特殊能力者だということ。さらには紅羽ちゃんは現在、自身が幽霊だと自覚している矛盾した浮遊霊になっているということ。

 どこかで見たことがあるとは思っていたけど……まさか神魔会のメンバーだったなんて。どうしてそんな人物が魁斗君たちと共に行動しているのだろう? これもまさか父が何か企んでいるの?

 それどころか……1番心配なのは私のことがバレていないかどうかだよ。正直私自身も時折神魔会のメンバーと関わること自体は何度かあった。私が見覚えあるということは、彼女だってそう感じている可能性だってある。そうなった時はうまくやりすごさないと……。

 シーナのことは置いておいて……嬉しい誤算は紅羽ちゃんについてだ。彼女は私の思惑通り幽霊を自覚する浮遊霊となっていた。

 これで紅羽ちゃんの存在はますます特殊と言える状態になっているだろう。そうなればこの先どんなイレギュラーが発生してもなんの疑問も抱かないはずだ。

 ついでといってはあれだけど……話の中で地縛霊の存在も出ていたね。なぜ吸収されたはずの彼が……と思っていたけど、それもこれもゴーストコントロールを持つシーナがいれば全て納得できる。

 シーナ・ミステリ、か。彼女自身は私のサブプランには含まれないけど、その力は魁斗君の中身を引き出す時に必要だ。何か弱みでも握っておきたいね。

 あっ、でも彼女には大切にしていそうな付喪神がいる。その辺をうまく利用すればどうにかなるかなー。

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