第361話悪魔編・偽その50

 魁斗君への課題として呼び出した騒霊。そして私のサブプランのために呼び出した地縛霊。

 結論としてはどちらも魁斗君のゴーストドレインで吸収されてしまったみたい。騒霊はまだしも、まさか地縛霊もこんなに早くあっさりと吸収されてしまうなんて。

 けれど私の計画に支障はない。彼はあくまでサブプラン。万が一に備えての予備みたいなものだから。ここで上手くいかなくてもなんの支障もないんだ。

 そう。私には最優先で狙う存在がいる。怨霊だ。

 現在判明していることは、来遊夜豪が変化した初代怨霊の存在。そしてその初代怨霊から別れた3人の怨霊たち。

 初代怨霊を狙うのはリスクが高すぎる。話を聞く限り、彼はもはや除霊ができないぐらいの存在になっているらしい。そんな相手を私のモノにするのは現実的ではない。

 だけど私の運はついていた。初代怨霊から別れた3人の怨霊。彼らも分身であり、きっと私が求める怨霊と変わりはないはず。

 まず1人。万邦という人間に取り憑いた怨霊。その正体や居場所は不明。これから探し出す、というのが師匠から与えられたミッションだった。

 そしてもう1人。かつて師匠と対面し、宣戦布告をしてきた怨霊。彼の行方もわからずにいた。だから私が万邦を探す間に、師匠はもう1人の怨霊を探すと言っていた。

 最後に1人。音夜斎賀という人間に取り憑いた怨霊。彼だけはその正体も掴めており、居場所も知っていた。

 そう。私の中では音夜斎賀、彼をターゲットにしようと少し前から決めていたんだ。

 音夜は富士見夫妻を監禁し、なおかつ姫蓮ちゃんに激しく恨みを抱いていることがわかった。音夜と姫蓮ちゃん。2人の間にはただならぬ何かがあると察した。

 けれどそれを上手く使えば、音夜と姫蓮ちゃんの弱みを握れるかもしれない。そう思ったんだ。

 まず知るべきことは音夜について。私は早速神魔会を頼った。彼らは怪異に対する情報をいくつも持っている。それが表立った情報じゃないにしてもだ。きっと怪異庁ですら知らない情報だって持っていると思う。

 話を戻そう。まず最初に音夜のルーツを辿ることにした。すると彼の人生において、幼少期のことが何もわからずにいた。どんな生活を送っていたのか、どこで暮らしていたのか。それすら何もわからずじまいだった。

 けれどそれは私が自力で調べたまでの話。神魔会に依頼すればあっさりと彼の情報を掴み取ることが出来た。

 かつて瀬柿神社の近くには『アカシック』という孤児施設があったらしい。その施設は表向きはなんてことない孤児施設なんだけど、実際にはそんな生ぬるいものではなかった。

 預けられた子供たちを犯罪の道具に使えるよう、頭のいかれた人間たちに売り払う。いわば人身売買をしているような施設だったんだ。そのことを知っているスタッフもいれば、何も知らない人だっていたらしい。

 もちろん全ての人間がそうだったわけではなく、一部ではまともな人間も来ていたそうだ。まともとはいえ、どこか特殊な事情がある人達が多かったみたい。

 そんな孤児施設は、今から12年前に火事で燃えてなくなったそう。その時に生き残った人間は数名。そこに、私の知る2人がいたんだ。

 サイト。キレン。

 サイトという名前は今の音夜とは違うから、別人かもと思った。けれどその後の人生を辿ると、彼が音夜斎賀になるのは間違いなかった。

 そしてキレン。彼女の名前は何一つとして変わっていない。彼女はさっきも言ったまともな人間、富士見夫妻に引き取られ、富士見姫蓮となったんだ。

 この2人はここで何かがあった。さすがの神魔会でもそこまでの情報は得られなかった。けれど私にはわかる。きっと彼が何故ここまで姫蓮ちゃんに執着しているのかを。

 だって私も同じだもん。きっと彼は姫蓮ちゃんが好きなんだよ。だからこんなにもずっとずっと執着しているんだ。

 私だってそうだ。大好きな魁斗君、そして姫蓮ちゃんを私のモノにしたい。そのためにはどんなことだって出来る。例えそれが頭のおかしい方法だったとしても。きっと彼らは受け入れてくれるはずだから。

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