第357話悪魔編・偽その46
動物霊を呼び出し、私の計画は少しずつ動き出していた。
そんな中、師匠から興味深い話を聞いた。
私が動物霊と出会った中、師匠は師匠で怨霊と戦っていた。そんな最中、とある1人の怨霊に宣戦布告をされたという。おそらく初代怨霊から別れた1人だったのだろう。
そしてさらに別の怨霊が霊媒師、霊能力者を監禁しているということを知った。
問題はその事実を、まさかの魁斗君から聞かされたということだった。
どういうわけか魁斗君からその話を聞き、実際に師匠は霊媒師と霊能力者を助けにいったそう。その際に魁斗君が力を取り戻したことを知ったみたい。
そこまでは私にとっては大したことではなかった。魁斗君が悪魔を助けようとした時点で、幽霊がらみに関わってくるのは想定していた。
問題はそこではない。魁斗君のことではなかった。私にとって、まるで運命ともいえる人物の存在をここで知ることとなったんだ。
「富士見姫蓮ちゃん、ですか?」
私は師匠……それから魁斗君の家で寝そべりながら師匠の話を聞いていた。
「ああ。あの2人の娘さん。彼女には……とある幽霊が取り憑いていて……その……不死身の力を宿しているらしい」
霊媒師。そして霊能力者。2人の名は富士見春彦。そして富士見姫奈。その娘。その名が富士見姫蓮。
そんな姫蓮ちゃんには不死身の力を宿した幽霊が取り憑いているらしい。
「俺も詳しいことは聞いてないんだけどな。嘘をつく理由にもならないし……」
不死身。そんな力があるなんてまるで嘘のようだ。だけどこの世界には知らないことが山ほどある。悪魔や神さまがいるぐらいなんだ。何があってもなんら不思議なことではない。
「不死身ですかー。それって……何をしても死なないってことなんですよね?」
私の意識は彼女に向けられていた。気になる。ただ純粋な興味が、私の心を奪っていく。
「ああ、それはまあ……何せ……聞くところによるとあの子は両親を助けるために……自殺をしようとしたみたいなんだ」
「え?」
なに、それ。両親を助けるために自殺? なんでそんな考えに辿り着くの? 私にはさっぱり理解出来ない。
「どうやらあの子は両親に対して特別な感情を抱いているらしい。もちろん俺だってそうだ。魁斗を助けるために死ねと言われればそうするだろう。けど、子が親を救うために死ぬっていうのは……なんというか、相当覚悟が決まっていないと出来ないことなんじゃないかって俺は思う」
まず師匠の考えがそもそも理解出来ない。他人を助けるために自分を犠牲にする。その感情がさっぱりわからなかった。
けれどそんなことどうでもいいと思えるぐらいに私は……心の底から、彼女に惹かれていた。
自殺をしようとしたけど死ねなかった。そんな人間がこの世にいる。
それってさ、言い換えればさ。
「……」
ああ、どうしよう。
「風香?」
「あっ、いえいえ。ちょっと……お手洗い借りますね」
私は急いでトイレへと駆け込んだ。
私がやりたかったこと。それは生き物を殺すということ。それが何度でも味わえる。そんな人間がいるなんて。それを想像しただけで体が熱くなり、疼いてしまう。
「ふ、ふふ……ふふっ」
富士見姫蓮。不死身の力を宿す少女。まさに私が求めていた人間。いや、私のために存在している私のための人間。
何としてでも彼女を手に入れなければならない。しかも幸い姫蓮ちゃんと魁斗君はお互い知り合い同士だという。
こんな奇跡ってある? 何もかもが私の都合のいいように動いていく。ようやく世界は私を中心に動き始めたんだね。
「はぁ、はぁ……姫蓮ちゃん」
私の中でさらなる目的が出来た。それは富士見姫蓮を私のモノにするということ。何度でも殺せる感覚を味わえる人間。
必ず手に入れて見せる。そう決心した日だった。
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