第30話 悪の組織も旅をする
ユウシャイン達が、スウェーランドにて魔導巨人博覧会の警備の依頼に着いた時。
魔王軍側も新たな動きを企んでいた。
「ふ~♪ ここでの暮らしも慣れたわね、ケーキも美味しい♪」
いちごのショートケーキを食べつつ黒い茶を飲むオシウーリ。
「ですなあ、魔王軍の方達も我らに友好的に接していただけてますし」
ペストマスクを外して、そこそこ美形な素顔でケーキを食べるランゾーン。
魔王城の一角にあるカフェテラスで、オシウーリとランゾーンがお茶にケーキと優雅にティータイムを過ごしていた。
そんな所に、城の主である魔王アナトラが訪れた。
「オシウーリ殿、ランゾーン殿、暮らしぶりはどうかな?」
自分達の所に降りてきた異世界からの来訪者にて客分となった、悪の組織アクドーイの首領と幹部であるオシウーリとランゾーンに魔王領での暮らしぶりを尋ねる魔王アナトラ。
「ありがとう、陛下♪ おかげさまで問題ないわ♪」
滞在中に友誼を結んだアナトラに、気さくに返事をするオシウーリ。
「ありがとうございます魔王陛下、私としてはこちらの世界の巨大ロボット事情が気になっております」
礼を言いつつ、この世界の巨大ロボットについて尋ねるランゾーン。
「うむ、こちら側で作られた巨人の事ならばこれをスウェーランドと言う国で行われる催しが最新であるな」
アナトラが二人に向けてスウェーランドの魔導巨人博覧会のチラシを見せる。
「ほう、魔力で動かす巨大ロボットですか♪ これは調べがいがある♪」
チラシを受け取り喜ぶランゾーン。
「ランゾーンは、この巨人とかも作っていたの♪ 今後の調査の為に出かける許可を頂けないかしら♪」
アナトラに旅に出る許可を求めるオシウーリ。
「ああ、貴殿らのおかげで幹部達の巨大化など技術の革新が得られたのだ旅費も出そう♪」
オシウーリの願いに快く応じるアナトラ。
「ありがとう、陛下♪ じゃあ、お土産に期待していてね♪」
喜ぶオシウーリ。
「感謝いたします、必ずや魔王軍に魔導巨人技術をもたらして見せましょう♪」
恭しく一礼するランゾーン。
かくして、悪の首領と博士のコンビもスウェーランドへと旅立ったのであった。
「あんた、何でイケメンなのに鳥マスクしてるの?」
灰色の髪に白いローブの美青年の姿になったランゾーンに対して、赤いドレスに黒いスパッツを着た上に、レザーの胴鎧に手袋とブーツを装備し腰には劍一本な剣士姿
となったオシウーリが尋ねる。
「いや、あれは万能ツールですよ会長? センサー類とかネットにアクセスしたりスマホ替わりだったりと」
自分が美形かどうかはスルーするランゾーン。
「そうなんだ、それは良いから外では私の事は会長って言わないでね?」
オシウーリがランゾーンに念を押す。
「へいへい、わかりましたよフラワーお嬢様」
ランゾーンは気のない返事で従った。
そして二人が野道を歩いていると、複数の頭を持つ黒い野犬型モンスターが傍の森から飛び出して来た!
「モンスターとのエンカウントだ、マジでゲームみたいな世界ですね♪」
喜ぶランゾーン。
「いや、喜んで内で構えなさいよ!」
呆れて叫びながら剣を抜くオシウーリ、モンスターが涎を垂らしながら襲て来たので回避しつつカウンターで切り殺す。
「わかりましたよ、とりゃ!」
ランゾーンは、懐から取り出した緑色の液体入りの試験管をモンスターへと放り投げればモンスターに命中して試験管が壊れて中の緑色の液体が爆発してモンスターを倒した。
「まったく、本当に面倒な世界ね」
「いや~♪ 本当にRPGの世界で楽しいですね~♪」
オシウーリとランゾーンの考えは違っていた。
「お嬢、倒した敵はどうします♪」
ランゾーンがニコニコしながらモンスターの骸を見る。
「知らないわよ! 私、そんな野生動物の解体とかしたくないもん!」
モンスターの骸の解体を拒否するオシウーリ。
「わがままだなあ♪ んじゃ、私は剥ぎ取りやりますよ♪」
オシウーリが目を背けた合間に、瞬時に顔にペストマスクを装着したランゾーンがウキウキと解体と加工をしてモンスターの牙と皮をと肉を手に入れた。
「……ランゾーン、あんた本当にこの世界に順応してるわね?」
部下の適応力に呆れるオシウーリ。
「いや~♪ 私、RPG大好き何でこの世界はマジで最高っすわ♪」
ランゾーン、好きなゲームのジャンルはRPGな悪のマッドサイエンティストであった。
「私は現代地球の方が好き! 絶対、輪人はかっさらって帰るんだから!」
オシウーリは、部下に呆れつつ野望を叫び再び歩き出した。
「お嬢、お嬢もこの世界を楽しみましょうよ~♪」
そんなオシウーリを追いかけるランゾーン、彼らはその後も出てきたモンスターをオシウーリが倒してはランゾーンが剥ぎ取りで素材に変えて道中で立ち寄った村で売ると言う流れで手持ちの資金を増やし宿に泊まったり馬車の護衛をしたりして陸路を進んで行きスウェーランドへと辿り着いた。
「ここが、スウェーランドね? ヨーロッパもどきの明るい街ね♪」
オシウーリが街に着いた途端、年相応の少女のようにはしゃぎだす。
「あ~らら、街に着いたら元気になっちゃって現金だなあ♪」
そんな彼女を保護者面で見守るランゾーン、この悪の組織コンビも博覧会の開催前に街に到着したのでまずは宿を探す事となった。
「どうしますお嬢、資金に余裕はありますが?」
宿のリクエストを聞くランゾーン。
「お洒落な所ね♪ 近くにカフェとかあるとなお良し♪」
笑顔でサムズアップするオシウーリ。
「ですよね~、了解です」
「任せたわ♪」
そしてランゾーンが周辺の女性に聞き込みをして、オシウーリの好みの宿の目星をつけて案内した。
「うん、ここなら良し♪」
白壁のペンションと言う外観の宿を気に入ったオシウーリと聞き込みで疲れたランゾーンは中に入り二人部屋を頼んでチェックインした。
「さて、宿は取れましたし連中を探しますか?」
宿の食堂にてお茶とケーキを頼み相談する二人。
「そうね、折角だし観光でもして自由行動で♪」
ケロっと自由行動を宣言するオシウーリ。
「いや、お嬢は本当に自由っすね?」
驚いた顔をするランゾーン。
「だって、折角大きな街に来たんだしカフェとか洋服とか見たい!」
欲望を口にするオシウーリ。
「そっすね、今回の仕事は博覧会でやるだけですし私も本屋巡りとかでこの世界の情報をもっと集めさせてもらいますわ」
博覧会でひと騒動起こす以外は自由に観光しようと決めた二人。
「しかし、こうしてると悪の組織らしくないっすね私ら?」
そんな事を呟くランゾーン。
「良いじゃない、暴れたがりで面倒な武闘派のゴーダッツはいないし経営の為の書類仕事もないし今は世を忍ぶ仮の姿を楽しむの♪」
ニヤリと悪い笑みをこぼすオシウーリ。
「ですね、そう言う意味じゃユウシャインが馬鹿なゴーダッツを倒してくれたのはありがたいっすわ♪ 良くも悪くも自由って最高♪」
「楽しめる時は楽しむのが、我がアクドーイのモットーよ♪」
運良く二人しかいない宿の食堂にて、悪の組織コンビはお茶で乾杯をした。
好き勝手に自由行動をすると決めた二人、ランゾーンは出かける前に自室でこの世界にもあった新聞を数種類読み比べていた。
「ユウシャインと名乗る仮面の勇者達が九人? ちょっと待て、あいつらまた増えたのか?」
愕然とするランゾーン。
「他には、ムーナ教団の聖像シルバーナに似た巨人が巨大な魔物を退治? いや、ロボも増えてんのかよあっちは!」
新聞に一人ツッコミをしたランゾーン、そして彼は頭を掻きむしった。
「まじか~! 敵の方が戦力拡大しちゃってたか~! これは本当に予想もしてなかったけど、あいつらは何? ムーナ以外の神様がいてそっちがケツ持ちか?」
断片的な情報しか記載されていない新聞と、自分が地球において知っていたユウシャイン達の情報から真実に辿り着いたランゾーン。
「う~ん、こりゃあマジでお嬢ともう一回話し合う必要があるかな? 下手すりゃ地球に帰る為にはユウシャインと手を組む事も考えないと駄目だろうしな」
悪の組織としてこれまで戦って来ていたヒーローと手を組む。
正直言って、ランゾーン個人としては呉越同舟と言うのは面倒臭いのでやりたくないし向こうがこっちの手を取ってくれるのかもわからないのが厄介すぎる事態に彼は頭を抱えた。
「やべえな、この世界RPGみたいで楽しいって言ってる場合じゃなかった」
あっけらかんと拾ってくれた魔王軍に巨大化薬の製造技術提供したり、この世界の魔法について研究を楽しんでいたランゾーンは自分が導き出した真実に悩み出した。
「お嬢、会長が帰ってきたら相談だな」
ランゾーンは、オシウーリの意見も聞こうと思った。
一方、着いて来た部下が悩んでいる事など知らずオシウーリは街の観光を楽しんでいた。
「は~♪ このお店のパンケーキ美味し~♪ こう言う世界、輪人と一緒ならもっと楽しかったんだろうな~♪」
カフェでスイーツを楽しみながら恋する乙女全開で、想い人である輪人と自分が一緒に異世界で冒険して暮らす事を想像するオシウーリ。
「行くぜ花ちゃん、連携攻撃だ!」
「オッケー♪ 行くぞ~っ♪」
冒険者の自分と輪人が連携攻撃でモンスターを撃破する、そんな妄想に涎を垂らす残念なオシウーリ。
周囲の人間は、そんな残念美少女に近づくのは危険だと感じたのか遠巻きに陰口をたたきながら眺めていた。
カフェの店員は、仕事なので冷静にオシウーリに近づいて追加注文を聞くと紅茶とパンケーキの追加を受けた。
カフェで紅茶とパンケーキと妄想を満喫して出て来たオシウーリ。
「輪人をゲットしたらこの世界で冒険者ライフもありね、冒険者を引退後は結婚して店か農場経営でゆったりスローライフよ♪」
新たな野望が芽生えたオシウーリが、妄想を捗らせながら宿への道を辿る。
恋する乙女にして悪の組織の首領の妄想と暴走と野望、その部下の悪のマッドサイエンティストの抱える苦悩。
そんな事など全く知らない勇者達もいるちょっとしたお祭り期間なスウェーランドの街に、刻一刻と事件の足音が近づいていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます