第20話 対決、シルバーナ!
訓練により戦隊は新たなロボットによる巨大戦のスキルを磨いた。
「後は、実際に敵のデカい奴と戦って実戦を乗り越えて行くだけだな」
機体を降りた輪人が語る。
今は野原で訓練後の休憩タイムだ。
「そうだね、魔王軍は余り敵が巨大化しないけど」
純子が答える。
「もしや、巨大化する事は敵にとって死を意味するのでは?」
桃花が自分の考えを述べる。
「確かに、そう言う最後の手段ってのはありそうね」
ヒナミが同意する。
「市街地で敵に自棄になられたら、面倒ですわね」
ヴィクトリアが不安になる。
「ご安心ください、そう言う事態に備えて結界を展開する機能を付けました」
ジーラが微笑む。
「敵が巨大化したらダイユーシャやコダイユーシャが、決闘結界に引きずり込むから問題ないわ♪」
ケトがケロケロと笑う。
「なら、安心して戦えるわね♪ 民草の暮らしを壊すのは悲しい事だし」
エレトが微笑んだ。
「決闘結界、
輪人が地球で活躍する宇宙のヒーローを思い出す。
「それはそうと、次は何処の地域に向かおうか?」
ルナの街、リョウマの街は戦隊達の活躍で女神ムーナよりも勇者達を信じる者達が増えていた。
「魔王軍に困っている人達が多い所に行ければな」
輪人が頭を悩ませる。
「ジーラシアの守りも大事だから悩ましいのよ」
ケトも悩む。
「そろそろ、ムーナ側も動いて来るかもしれませんからね」
桃花がフラグになりそうな事を言った。
一方、女神ムーナを崇める教団の総本山ムーナポリスでは異変が起きていた。
石棺を思わせる暗い場所に佇む鎖に繋がれた白き巨人、シルバーナ。
シルバーナの瞳に火が灯り、自らを縛る鎖を引きちぎり動き出した。
シルバーナは拳を振るい、壁に大穴を開けて外へと飛び出していった。
頂上に教皇が住まう神殿が立つ聖なる山、テミス山が揺れる!
「……嘘、山が揺れる?」
白い法衣を纏った銀髪の巨乳美少女、教皇エイプリルが驚愕する。
彼女がいる聖堂は無事だが、地震なら周囲の街が心配だ。
「た、大変です教皇猊下! 地下に納られていた神像が動き出し山の中腹に大穴を開けて空へと飛び出しました!」
部下が聖堂に入って来て叫ぶ。
「落ち着きなさい、神像は自らの意思で勇者リントを探しに旅立ったのです!」
エイプリルが当たっている推測を口にする。
「な、何ですと!」
驚く部下。
「神像シルバーナは、太陽神ジーラに連れ去られた勇者リントを救いに行ったのです問題ありません! 民にはただの地震、神像を知る者には私の言葉を伝えなさい」
エイプリルが叫ぶ。
「はは~っ、仰せのままに!」
部下はエイプリルに従い行動を開始した。
「魔王軍関連でも大変なのに。女神様も勇者様も勘弁してよ~っ!」
再び一人になったエイプリルはため息を吐いて叫んだ、彼女もまた神に振り回された人間であった。
そんなムーナ側の動きなぞ知らぬ戦隊一行、通常の依頼もこなしつつ全員で集まって巨大戦の訓練を行なっていた。
「よし、今日は別の合体を試そうぜ♪」
レッドバイソンのコックピットの中で変身した輪人が叫ぶ。
「ノリノリね~、勇者ちゃん♪」
グリーンが機体の中でケロケロと笑う。
「輪人君はロボット好きでもあるからな♪」
ブラックも懐かしそうにこぼす。
「巨大戦は戦隊の華だよ~~~っ♪」
ブルーもノリノリであった。
「それでは、今回はレッドとグリーンとピンクの合体を試しましょう♪」
ゴールドが提案する。
「なら今日は私はソロね~♪」
ホワイトが、自分の機体を人型に変形させる。
「では、私達はファルコンユーシャに合体ですわね♪」
イエローが了解し、合体シークエンスに入る。
「よし、こっちも合体だ♪」
レッドも叫んで合体シークエンスに入る。
かくして、ファルコンユーシャとホワイトタマスにトライバイソンと三体の巨人が誕生した。
「それでは皆様、結界を展開いたします」
ゴールドが叫ぶと三体のロボを金色の光りが包み、異空間へと取り込む。
そこは、広大な闘技場のような空間であった。
「ファルコンユーシャは、ライナーが分割するから腕が短くなるんだな」
レッドがファルコンユーシャを見て呟く。
「ケロケロ♪ 今建造中の新メカが完成すればまた変わるから。」
グリーンがレッドのつぶやきに答える。
「どこかに後一台くらい、メカがない物でしょうか?」
ピンクが呟く。
「シルバーナを倒して、鹵獲とかできれば強化できるな」
レッドがまあ無理だろうなと思いながら言う。
「行けるとは思うは、頑張って鹵獲してね~♪」
グリーンからすれば行けるらしい。
噂をすれば影と言うが、影どころか当の存在がやって来るとはユウシャイン達は思いもしなかった。
空を割り、三日月の飾り付きの兜を被った白き巨人の騎士が降り立った!
「何っ! あれはシルバーナ!」
「噂をすれば影だよ~~~っ!」
「誰が乗ってますの?」
ファルコンユーシャに乗ているメンバーが驚く。
「出たなシルバーナ、チャンスだ!」
トライバイソンがシルバーナへと突進した。
トライバイソンの突進を受け止めて、両者が手四つになる。
「喰らえ、バイソンファイヤー!」
トライバイソンが胸の牛頭から火炎を放射する。
「フロッグスプラッシュも付けるわ~♪」
さらに右腕の蛙の頭が口を開けて放水し、シルバーナを引き離す。
距離ができると、シルバーナは両腕で虚空に円を描き光輪を書いtね鋸のように飛ばして来た!
「緊急分離!」
レッドが機体を緊急分離して、光輪を回避する。
「ウルフバイトです!」
ピンクウルフがシルバーナの腕に突進とジャンプで噛み付く。
「こっちは舌で絡め取るわ♪」
グリーンフロッグが相手の反対の腕を舌で絡め取る。
「よし、バイソンアタ~~~ックッ!」
レッドバイソンが突進して、シルバーナを突き飛ばした。
「今です、皆で砲撃を!」
ゴールドの言葉に戦隊側の全機がビームや砲弾を、シルバーナに叩き込む。
着弾による煙が張れると、シルバーナは焼け焦げた跡や多少の損傷は付いている物のまだ撃破には至らなかった。
「ちょ! あいつしぶといね!」
ブルーが叫ぶ。
「伊達にあのムーナが作ったって、わけじゃないか!」
ブラックも焦る。
「皆様、奴が動きましてよ!」
イエローが叫ぶと、シルバーナが虚空から薙刀を召喚して一閃した!
「皆にけがはさせないわ!」
ホワイトタマスが、盾となりシルバーナの飛ぶ斬撃を受けるも吹き飛ばされて
ファルコンユーシャに激突しファルコンユーシャは分離してしまった。
「味方の事故では壊れないセーフティは機能してますね!」
ゴールドファルコンで空を舞いながらゴールドが呟く。
「いや、性能評価は良いですから!」
ピンクウルフの中でピンクが叫ぶ。
「よし、こうなりゃ基本のダイユーシャで勝負だ! オート合体!」
レッドの叫びに仲間達の機体が呼応し、自動的に集まりダイユーシャへと合体し
此方も自動で召還したダイカタナ―を構える。
「何だか、相手も構えましたよ?」
こちらの動きに合わせるようにシルバーナが動いたのに気づくピンク。
「何だろう、もしやレッド君の動きに呼応してるのかな?」
ブラックも何かに気付く。
「何かレッドに反応する回路でもあるのかな?」
ブルーも疑問を抱く。
「もしや、ひな鳥の刷り込みか? はたまた飼い主とじゃれる犬か?」
イエローがシルバーナの様子からそんな印象を抱く。
「なら、徹底的に相手をしてやるぜ♪ いざ、勝負♪」
ダイユーシャが武器を大上段に構えて突っこむと、シルバーナも動く。
ダイユーシャが刀を振り下ろせば、シルバーナが薙刀で受け流してから突く。
それを捌いて斬りかかれば受けて鍔迫り合いになり、互いに引いて再度打ち合う。
「何だ、約束組手か型稽古のような?」
武道家の家の娘であるブラックが気づいた。
「どちらかというと、シルバーナの方が指導稽古してるようですわね?」
武道経験のあるイエローも気付く。
「もしかして、あっちもレッドを傷つけないような仕組みかも?」
ブルーがシルバーナにもセーフティ機能があるのではと勘付いた。
「可能性としては、私達がダイユーシャで遭遇した時にダイユーシャがレッドの乗り物だと認識したのでは?」
ピンクが可能性に思い至った。
「もしかしたら、あいつをこっちに引き込めるかもしれないな?」
レッドは、何かを思いつくとハッチを開けて、ダイユーシャから飛び降りた。
すると、シルバーナがレッドに反応して彼を両手で受け止め兜の飾りから中に取り込んだ。
気が付くと変身を解かれて輪人は真っ白な空間で、白いドレスを着た銀髪に青い瞳の胸が豊満な美少女と向き合っていた。
「……やっと会えた、ムーナ様の勇者リント♪」
少女が輪人に微笑みかける。
「え~っと違うけど、君は誰かな?」
輪人が少女に尋ねる。
「私はシルバーナ、貴方が否定しても貴方は私やムーナ様の勇者様♪」
シルバーナが笑顔で輪人に抱き着いてくる。
「いや、勘弁してくれよ! あの女神、人の事攫ったり碌なもんじゃねえし!」
「ムーナ様の事、嫌いなの?」
「正直に言えば嫌いだ、君の事はまだわからない」
ムーナへの否定とシルバーナの判断はまだだと輪人は告げる。
「……私、悲しい! どうしたら私の事を好きになってくれる?」
シルバーナが悲しそうな顔で輪人を見つめる。
「うん、まずはお互いを知る事からかな? 俺の所においで、取り敢えずムーナとは縁を切ろう」
輪人がシルバーナに説得をする。
「……ムーナ様と縁を切る? できるのかな? 私、ムーナ様怖い!」
シルバーナが首をかしげた後に怯えて輪人に抱き着いた。
「うん、俺が断ち切って見せるしジーラにも力を借りる」
輪人はシルバーナに好きにさせた。
「ジーラって女神様は怖くない?」
シルバーナが不安そうに輪人に尋ねた。
「誰にでも怖さはある、けどムーナのような悪い怖さじゃない」
「私の事、鎖で縛って閉じ込めたりしない?」
「……そんなひどい事はしない、約束するから俺と来てくれるかな?」
輪人が尋ねるとシルバーナは首を横に振った。
「このままじゃできない、それが必要な気がする?」
シルバーナは輪人のユウキブレスを指さす。
「わかった、じゃあ君も今日からユウシャインだ♪」
輪人が自分のブレスレットをシルバーナの手に触れさせると、彼女の手左手首にも
ユウキブレスが生成された。
「ブレスレットから情報が伝わる、私が作り変えられて行くのを感じる♪」
シルバーナが白のドレス姿から、銀色のユウシャインのヒーロースーツを纏った。
「よろしくな、ユウシャシルバー♪」
輪人がサムズアップすると、シルバーも同じ仕草で返した。
こうして、ユウシャインに九人目の戦士と新たなロボが加わった。
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