第18話 港町の戦い

 「取り敢えず、不漁の線は消えたな」

 「うん、街のあちこちで魚介類売りまくってるよ」

 「やはり誰かが止めているという事ですね」

 「漁業組合で詳しくお話をお伺いしましょう」

 「あの建物みたいだね」

 英気を養った戦隊の五人は、港にある二階建ての石造りの建物に向かっていた。

 中に入ると、一階はカウンターやテーブルがありラウンジと言う雰囲気であった。

 「失礼します、俺達はルナの街の冒険者管理協会からご紹介を受けて来ました」

 輪人がカウンターに立つ、エプロンを付けた逞しい体付きの白髪で隻眼の老人男性に語りかける。

 「おう、お前さん達が話に聞いた勇者様か人払いとかは済んでいるよ」

 老人がまあ、座れと言うので戦隊一行はカウンターの席に着く。

 「俺がこの組合の長のジョージだ、ラウンジのマスターも兼ねてる」

 ジョージが自己紹介をしたので戦隊一行も軽く名乗る。

 「お前さん達の用件はわかってる、極端すぎる輸出制限を掛けた馬鹿がいてな」

 ジョージが一行にコーヒーを出しながら語る。

 「それが俺達の敵なんですね」

 輪人が答えるとジョージは頷いた。

 「ああ、そいつの名はオーベって言う魚みたいな顔をした磯臭く胡散臭い商人だ」

 ジョージが話を続ける。

 「商人? 役人じゃなくて?」

 純子が尋ねる。

 「ああ、どんな手を使ったのかお上の許可を取ってなこっちも下手に逆らえねえ」

 ジョージが溜息をつく。

 「磯臭いと聞くと、海の魔王軍がらみでしょうね」

 ヴィクトリアが海魔部隊を思い出す。

 「どうせそのオーベってのも、魚の怪物が化けてるんだよ」

 ヒナミが呟く。

 「戦うのは我々にお任せ下さい、その代わり後始末はお願いできますか?」

 桃花がジョージに頼む。

 「ああ、奴らを倒してくれれば後の事はこっちの味方をしてくれてる役人と一緒に片付けるから任せてくれ」

 ジョージが笑顔でサムズアップした。

 「うんじゃ、そのオーベの居所を探しに行くか」

 輪人が席から立ち上がると仲間達も立ち上がった。

 「頼んだぜ、勇者様よ♪」

 ジョージはそう言って、出て行く戦隊一行を見送った。

 

 「で、オーベって奴の屋敷にでも乗り込む?」

 ヒナミが輪人に尋ねる。

 「いや、それは後でジョージさん達に任せよう」

 輪人が海を指さすと、二隻の船が港へと入って来た。

 一隻は漁船、もう一隻は怪しい雰囲気のガレー船。

 「皆、ユウキチェンジだ!」

 「「応っ!!」」

 輪人の号令と同時に全員が変身して港へと走る。


 一方、港では漁師達が魚の荷下ろしを始めていた。

 「畜生、またオーベの奴が来やがった」

 「あいつら、俺達から安く買いたたいた魚をあの船でどこへ運んでやがるんだ?」

 不満を口にしつつ作業をする漁師達。

 「いっひっひ、皆さんご苦労様です♪」

 そんな漁師達の所へ肌の色が悪い水夫たちを伴って来たのは、禿頭に魚のように目が離れた顔で太った中年の男オーベ。

 商人風のチュニックを着ているが似合っていない。

 「代金だ、魚を売れ」

 ぶっきらぼうな口調で水夫が代金の入った袋を差し出す。

 「へいへい、お買い上げありがとうごぜえますよ」

 手の空いた漁師の一人が代金を受け取る。

 「毎度どうも♪ へっへっへ♪」

 オーベが嫌らしい笑いを浮かべて水夫達に顎で指図しようとした時であった。

 

 「ちょっと待った~~っ!」

 レッドが待ったをかける。

 「悪徳商人オーベ、お前が魔王軍の手先なのはお見通しだ!」

 ブラックがオーベを指さして叫ぶ。

 「魔王軍に資源は渡しませんわ!」

 イエローも叫ぶ。

 「お前の悪事もここまでだよ!」

 ブルーも叫ぶ。

 「漁師の皆さん、逃げて下さい!」

 ピンクが避難勧告をする。

 「ぎょぎょ! お、お前達は勇者共っ!」

 オーベがあからさまにうろたえた。

 「おい、あんた達は一体?」

 「馬鹿、あれが組合長が言ってた勇者様達だよ!」

 「まさか、組合長の言ってた事は本当だったのか?」

 戦隊の登場に驚く漁師達は状況について行けなかった。

 「化けの皮をはがしてやるくらえ!」

 レッドがユウキブレスをオーベ達に向けると、金色の光が放たれてその正体を暴く。

 「ぎょぎょ~~っ! ば~れ~た~か~!」

 レッドの光でオコゼの半魚人の正体を現したオーベ、スケルトンの正体を現した水夫達を漁師たちは目撃した。

 「マジか、化け物じゃねえか!」

 「俺達、魔王軍に魚を売ってたってのか!」

 「畜生、許せねえ!」

 漁師たちが怒りを爆発させる。

 「漁師の皆さんは魚を漁船へ、魔王軍は我々が倒します!」

 ピンクが漁師達に向けて叫ぶ。

 「わかったぜ、任せてくれ!」

 「俺達の魚を化け物共に渡してたまるか!」

 「野郎ども、魚を戻すぞ!」

 漁師達は素直にピンクの言葉に従い作業を始めた。


 だが、スケルトン達が魚を奪おうと漁師達に迫る!

 「させないよ!」

 「やらせませんわ!」

 ブルーが射撃で、イエローが釣り竿でスケルトン達を攻撃し動きを止める。

 「すまねえ、勇者様達!」

 「お礼にうまい魚やるぜ!」

 漁師達が感謝の言葉を述べる。


 「お礼は結構ですわ! イエローロッドスパーク!」

 イエローがスケルトンに釣り針をかけると、電撃を流して粉砕する。

 「同じく、その魚を全世界へ届けて欲しいよ! ブルーゴルぺ!」

 ブルーは手足を氷の塊で覆うとスケルトン達を蹴る、殴ると格闘で倒して行く。

 「私達は船を壊しに行こう、ピンクちゃん!」

 「了解です、ブラック!」

 ブラックとピンクはオーベの船へと乗り込みに駆け出した。

 

 「ぎょぎょ、私の船が!」

 「お前の船も悪事もおしまいだよ!」

 レッドがオーベに殴りかかる。

 「おのれ勇者、そうはさせん!」

 オーベは虚空からメイスを取り出してレッドの拳を受ける。

 「やるじゃねえか、レッドブルファイヤー!」

 拳を受けられたレッドは火炎放射で攻撃する。

 「ぎゃ~~~っ!」

 火炎放射を受けたオーベは飛び退く。

 「おのれ! オコゼミサイルをくらえ~!」

 オーベが自分の体の突起物を発射する。

 「打ち落としてやるよ、レッドブルラッシュ!」

 迫りくる突起のミサイルをレッドは拳の連打で撃ち落として爆発させた。

 「ぎょぎょ~っ! お、俺のオコゼミサイルが効かないだと?」

 メイスを構えたまま狼狽えるオーベ、そこにイエローとブルーがレッドへ合流する。

 「さあ、早く怪人を倒しますわよ♪」

 「フォーメーション技で決めちゃおうよレッド♪」

 「よし、じゃあトリコロールアタックだ!」

 赤青黄色の三色の戦士が叫ぶ。

 「じゃあ、私から、ブルースマッシャー!」

 ブルーが銃を地面に向けて撃てば氷の波がオーベへと向かう。

 「お次は私のイエローロッドスパークで♪」

 イエローが電撃を地面に流してオーベを攻撃する。

 「そして最後は俺、レッドブルストレート!」

 最後にレッドが氷の上を滑走し、オーベのボディーへとストレートを叩き込む。

 「ぐば! こ、この私がやられるなんて~っ!」

 オーベは三人の連続攻撃を受けて爆発した。

 「よっし、決まったぜ♪」

 レッドが残心を決めた。


 一方、ピンクとブラックは敵のガレー船の中へと侵入していた。

 「船長室に何か情報があるかもしれない!」

 「そうですね、てりゃっ!」

 ブラックとピンクが甲板にいたスケルトンを撃破しながら、探索を行う。

 扉はピンクが蹴破り、鍵類はブラックがサーベルで切って壊す。

 いわゆるマスターキーは物理攻撃で家探しをして行く二人。

 「ここが船長室か、この紙の束は報告書の類かな?」

 ブラックが船長室の執務机の上にある紙の束を見つけて軽く読む。

 「ブラック、何かわかりましたか?」

 ピンクがブラックに尋ねる。

 「ああ、奴らがこれまで魚を魔王領へ運んでいたの報告書を見つけた」

 ブラックがピンクに答えると同時に、紙の束を回収する。

 「帳簿の類は、街にある屋敷とかでしょうかね?」

 ピンクがブラックの話を聞いて頭を捻る。

 「その辺りはジョージさん達に任せよう、レッド君達も敵を倒したみたいだし」

 「ええ、では抜け出しますね♪ ピンクスト~~ンプッ!」

 ピンクが船長室の壁を踏み付けるように蹴れば、壁に大穴が空いた。

 「流石ピンクちゃん、出よう♪」

 ブラックがピンクを褒めると二人は一緒に穴から抜け出した。

 

 「あ、ピンクと部落が帰って来たよ♪」

 「ダイナミックなご帰還ですわね」

 船に穴をあけて飛び出してきたブラックとピンクをブルーとイエローが見つける。

 「良し、二人も何か見つけたみたいだな♪」

 レッドがピンクとブラックの帰還を喜ぶ。

 「お待たせしました♪」

 「お待たせ、皆♪」

 ピンクとブラックが合流して来る。

 「お帰りだよ♪」

 ブルーも二人の帰還を喜ぶ。

 「お帰りなさいませ、それでは撤収といたしましょうか?」

 イエローが撤収を提案する。

 「そうだな、全員撤収っ!」

 レッドがその提案を受けて号令をかけると、戦隊全員が駆け出した。

 

 その様子を漁船から見ていた漁師達は何か感慨深い表情になっていた。

 「あれが勇者様達か、べらぼうな強さだな」

 「ああ、あの方達のおかげでもうオーベの野郎共に魚を売らなくて済むんだ♪」

 「ああ、これからはルナの街や他の街へも魚を届けられるぜ♪」

 漁師達は自分達が解放された事を喜んだのであった。


 そして、戦隊一行は変身を解いて漁業組合へと来ていた。

 「おう、やってくれたなお前さん達♪」

 ジョージが笑顔で一行を出迎える。

 「ジョージさん、これをどうぞ」

 輪人が紙の束をジョージに手渡す。

 「ほう、どれどれ? こいつは立派な証拠だ、これで奴の屋敷へ乗り込める♪」

 紙の束を受け取ったジョージが喜びの叫びを上げた。

 「よかった、それじゃあ後の事は宜しくお願いします」

 純子がジョージに事後処理を頼む。

 「ああ、これで役人達も動ける」

 ジョージが笑顔で答えた。

 「では、私達はこの街からお暇させていただきますわ♪」

 ヴィクトリアが笑顔で語る。

 「これでお仕事終了だしね♪」

 ヒナミも笑顔で呟く。

 「だな、これでもうルナの街にも魚が届くようになるさ♪」

 輪人が笑顔で言う。

 「ああ、お前さん達のお陰で変な制限もなくなるからなありがとよ♪」

 ジョージが笑顔で戦隊達にサムズアップをした。

 そんなジョージに戦隊達もサムズアップで返し、彼らは出て行った。


 その後、戦隊とジョージの約束通りリョウマの街ではオーベと組んでいた役人が粛清されたりと街の掃除が行なわれて再び魚介類の流通が盛んになったと言う。

 

 「皆さん、お疲れ様でした♪」

 ルナの街の家に戻った戦隊一行をメトが労う。

 「お疲れ様でした、これでこの街の魚の流通も戻ったんですよね?」

 輪人がメトに尋ねる。

 「はい、今まで魔王領に持っていかれた分は取り戻せてませんが何とかですね」

 メトもため息をつく。

 「リョウマの街、今度は普通に観光で出かけたいものですわ♪」

 ヴィクトリアはお茶を飲みながら呟く。

 「そうだね、海が綺麗だったし」

 純子も呟く。

 「お魚もまた食べに行きたいですしね♪」

 桃花が笑顔でまた行きたいと答えた。

 「次はどんな所に行く事になるか楽しみだよ♪」

 ヒナミはギターを鳴らして歌うように呟いた。

 「そうだな、この世界の平和の為ならどこへでも行くぜ♪」

 輪人がメトに向かい、笑顔でサムズアップをしたのであった。

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