第17話 解放と出張

 「裏依頼成功、乾杯♪」

 「「かんぱ~~~い♪」」

 家の中で祝杯を挙げる輪人達。

 「蜂蜜の炭酸飲料って、美味いな♪」

 ジョッキの飲料を飲みながら輪人が感動する。

 「街の人達にわずかですがお金が戻って良かったです♪」

 桃花が微笑む。

 「そうだね、結構魔王軍に持って行かれていたけど返らないよりはだね」

 純子も頷く。

 「教団から取り返したお金は無税と言うのも巧いやり口ですわね」

 ヴィクトリアは領主のやり口が上手いなと思った。

 「お金が回るのは良い事だよ~♪」

 ヒナミはギターをかき鳴らした。

 ルナの街での裏依頼を成功させた戦隊一行は、宴を催していた。

 「皆様、お疲れ様でした♪」

 今回は不参加のゴールドことジーラが飲み物のお替りを持ってくる。

 「ケロケロ~♪ お疲れ様~♪」

 グリーンことケトも酒を持ってやって来る。

 「皆~♪ お料理の追加はピザとラクダの焼肉ライスよ~♪」

 ホワイトことエレトは、片手に大きなピザを持ちもう片手には黄色いライスの中心に大きなラクダの焼き肉が乗った大皿を持って来て全員集合の宴となった。


 「皆様のおかげで、私はこちらにも来れるようになりました♪」

 ジーラが礼を言う、あの後無人となったムーナ教団の神殿は解体されたからだ。

 「でも、良いのでしょうか? 新たに向うの教団が来ないとも限りませんし」

 桃花が不安になる。

 「大丈夫です桃花さん、街からムーナを信じる気持ちが感じられませんので」

 ジーラが微笑む。

 「大丈夫よ桃花♪ 私が街のあちこちでユウシャインの事を歌って広めたから♪」

 ヒナミがサムズアップをする。

 ブルーとして戦った当事者である彼女が吟遊詩人よろしく、ユウシャインを太陽の神が遣わした勇者と歌い広めた事で街の人々が太陽を崇めるよになった。

 「ヒナミさんが、マリアッチの姿になったのも意味があったんですわね」

 ヴィクトリアが改めて感じ入る。

 「ヴィクトリアは海に出て太陽の海賊女王とか名乗るとか良いよ♪」

 ヒナミがギターを鳴らして返事をする。

 「そう言えば私、冒険者カードと言う物にクラスがネイビーと記録されてました」

 食事をしながらヴィクトリアが自分の身分証を見る。

 「ケロケロ~♪ 今、皆で使える大きな船を作ってるから楽しみにしててね♪」

 ケトがライスを食べつつ語る。

 「大きな船か、楽しみだな♪」

 純子が微笑んだ。

 「次の裏依頼も、皆で力を合わせて乗り越えようぜ♪」

 輪人が語ると全員が頷いた。

 

 「それにしてもラクダ肉って、初めて食べるけど美味しいね♪」

 ヒナミが元気にラクダ肉の焼肉ライスを食べながら語る。

 「良かったわ~♪」

 作ったエレトも美味しそうに食べる。

 「エレトさんのお料理はどれも美味しいですわ♪」

 ヴィクトリアがピザも食べながら感想を言う。

 「ああ、異世界でも美味い飯が食えるって最高だぜ♪」

 輪人も感謝しながら食べていた。

 

 宴を終え、再び時には個別に時には全員でと依頼をこなして行く日々が始まる。

 しばらくは平穏な日々が続いたが、一週間が過ぎた頃再び街に異変が起き出した。

 「何だか最近、魚が街に入って来ないねえ?」

 輪人がパン屋を手伝っていると女将さんが愚痴をこぼす。

 「それって、山賊や野盗の類かな?」

 輪人が女将さんに聞いてみる。

 「そうでもないらしいんだよ、港町の方で何かあったのかねえ?」

 「不漁ってのはあるからねえ」

 そう言うやり取りをしつつ仕事を終えて家に戻った輪人。

 

 「それは私も聞いたよ~♪」

 ギターを鳴らして語るヒナミ。

 「ムーナ教団の嫌がらせにしては、規模が地味すぎますわねえ?」

 お茶を飲みながらヴィクトリアが私見を述べる。

 「ええ、川魚なら周辺でも獲れるので困るのは一部の飲食店位ですし」

 桃花も輪人や純子にお茶を淹れつつ呟く。

 「ルナの街と取引をしている港町と言うと、このリョウマの港町かな?」

 純子が食卓に地図を広げて見る。

 「時代劇だと、この街で何かが起きているとかまた海の魔王軍が悪さしてるか?」

 地図を見ながら輪人も何が起きているのかを考える。

 

 すると、家のドアがノックされたので桃花が出る。

 「はい、どちら様でしょうか?」

 「冒険者管理協会のメトです、勇者様達に裏依頼のお願いに参りました」

 桃花が戸を開けるとメトが白紙の紙を抱えて入って来た。

 「いらっしゃい、メトさんが裏依頼を持って来たという事はやはりかな?」

 純子がメトを受け入れて語り掛ける。

 「皆様も何か予想をされておられたんですね、まずは依頼書をご覧ください」

 メトが白紙の依頼書を食卓に置き、指から魔法の火を出して炙り出しをする。

 すると白紙の依頼書に文字が浮かび上がった。

 「ああ、やはりリョウマの街か」

 輪人が依頼書を読み上げると、領主のロジーが依頼人で港町リョウマに魔王軍らしき動きありとの書き出しで調査と敵の討伐を求める内容が書かれていた。

 「領主様からの依頼か、まあ魔王軍の可能性があるなら行かねばなるまいな」

 純子が微妙な顔をする。

 「まあ、行って見るしかありませんわね♪」

 ヴィクトリアは港町と聞いて笑顔になった。

 「ヴィクトリアさんが釣り人の目になってますね」

 桃花があははと笑う。

 「で、現地に私達に協力してくれそうな人はいるの?」

 ヒナミがメトに尋ねる。

 「はい、リョウマの街の漁業組合はジーラ教の草が根を張ってますから♪」

 メトが笑顔で首肯した。

 「俺達が知らないだけで、各地に協力してくれる人っているのかもな?」

 輪人はジーラの民の逞しさを感じた。

 「では、この裏依頼ユウシャインがしかと承らさせていただきますわ♪」

 ヴィクトリアが依頼の受諾を宣言する。

 「まあ、海や港と言えばイエローだから仕方ないね♪」

 ポロンとヒナミがギターを鳴らした。


 翌日、戦隊一行はルナの街を出て一路リョウマの街へと旅立った。

 「マグロ、ブリ、タイ、スズキ、イワシ、アジ、サバ♪」

 ヴィクトリアは魚の名前を歌いながら歩く。

 「何と言うか、私とヴィクトリアの色が逆だったんじゃないかと思う時があるよ」

 ヴィクトリアの歌に合わせてギターを鳴らすヒナミ。

 「ヴィクトリアさん、釣る気満々ですね♪」

 桃花も歩きながら微笑む。

 「ヴィクトリアちゃんは、魚を釣るのも捌くのも上手だからね♪」

 純子も笑顔だ。

 「いや、皆さあ釣りは事件を解決してからだからな?」

 輪人が一応ツッコミを入れる。

 「またまた~♪ 輪人もお刺身とか色々食べたいでしょう♪」

 ヒナミがからかう。

 「先輩、食欲に素直になりましょう♪」

 桃花が笑顔で語りかける。

 「美味しいお魚の為に頑張ろう、輪人君♪」

 純子まで魚の事で頭がいっぱいだった。

 「まったく、いざとなればダイユーシャも呼ばないとな」

 輪人はリョウマの街で起こる事に想いを馳せていた。


 早朝から歩き始めて昼飯時、と言う頃まで街道を歩いた一行の眼下に青い海と西洋風な港町が見えた。

 「見えましたね、綺麗な海です♪」

 桃花は海の美しさに見惚れる。

 「漁港に残っている船は有りませんわね?」

 ヴィクトリアは漁港の船を見ていた。

 「恐らく漁に出ているんだろうな、まずは宿かな?」

 純子は宿探しを考える。

 「お昼時だから、ご飯を食べつつ散策したいね♪」

 ヒナミは休息と散策を提案した。

 「うんじゃ、まずは街に入ったら宿の確保だな仕事はそれからだ」

 輪人はまず宿の確保から始めると決めた。


 そして一行はリョウマの街へと入る、港町だけあって潮の香りが漂う。

 「いらっしゃい♪ いらっしゃい♪ 美味しい焼き貝に焼き魚だよ~♪」

 「お客さん、こっちはリョウマ名物マグロの刺身ランチが安いよ~♪」

 「イカパスタ、如何ですか~♪」

 街はそこそこ活気が良く、通りでは名物の海産物を売りものにしている店が威勢よく客を呼ぶ声を上げていた。

 「何か、街の様子は賑わってるね?」

 ヒナミが疑問を口にする。

 「活気が良いのは結構ですが、どこの誰が魚の流通を止めているかですわね?」

 ヴィクトリアも眉を顰める。

 「取り敢えず、食事や情報取集の為にも港に近い宿を探そうか?」

 純子が宿はないかとみ回す。

 「そうですね、一休みしたら漁業組合にご挨拶に行きましょう」

 桃花が地図を見て探す。

 「そう言えば、この街には冒険者管理協会はないのかな?」

 輪人がふと思う。

 「裏依頼ですから、ここは仕事ではなく観光旅で寄った冒険者と言う事にしておきましょう」

 ヴィクトリアが輪人に提案して来た。

 「まあ、それで行くか」


 その提案に乗った輪人、それから彼らは港近くの潮風亭と言う宿屋を見つけた。

 「大部屋一つ滞在は三食付きで一週間ほどですね、かしこまりました」

 宿に入り純子が代表して宿代に多めに色を付けて札束で渡すと、宿の従業員の女性は何も言わずに手配を進めた。

 「ありがとう、じゃあ返すぜ」

 「そうですわね、お金はしっかり返しませんと」

 「純子さん、ありがとう♪」

 「ありがとうございます、純子さん♪」

 「いや、気にしないでと言うのも悪いなでは返してもらおう♪」

 部屋に入った輪人達はブレスレットを出して、宿代を出してくれた純子へと金を返した。

 「さて、宿代は返したし食事だな」

 輪人が腹を鳴らしながら口にする。

 「ですわね、私が釣り上げて皆様に振舞いたい所なのですがここは宿のお食事を堪能せていただきましょうか♪」

 ヴィクトリアも微笑む。

 「やはり魚料理を食べたくなるのは、日本人だからですかね♪」

 桃花も宿の料理を楽しみにしていた。

 「魚料理がソウルフードってのはあるよ♪」

 ヒナミが桃花に同意する。

 「日本は島国だからね♪」

 純子も楽しみのようだ、全員が宿の食堂に入り席に着くと受け付けとは別の女性の従業員が銀の大皿に乗った料理を持って来た。

 「はい、牡蠣と海老と白身魚のフライ定食ですよ♪」

 従業員の女性が笑顔で配って回るのは、輪人達が日本でよく見た料理だったからだ。

 「お、お米と味噌汁ですよ先輩♪」

 桃花が喜ぶ。

 「うん、久しぶりに見たねこういう食事は♪」

 純子も喜んだ。

 「和食、懐かしいね♪」 

 ヒナミも笑顔になる。

 「地球の基地の食堂の定食を思い出しましたわ♪」

 ヴィクトリアも懐かしむ。

 出された料理は、日本でよく見るご飯とみそ汁とフライの定食であった。

 「これは美味そう、いただきます♪」

 輪人達は異世界で味わう日本で見た定食を味わい英気を養った。

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