第16話 裏の依頼
冒険者の身分を得た戦隊一行は、その身分を利用して表の稼業をこなしつつ
魔王軍やムーナについての調査を行っていた。
「正直、神様ってのはあてにならないもんさ教団も私達庶民にとっては関わりたくない相手だよ」
輪人が依頼で手伝っっているパン屋の女将がぼやく。
「教団って、ひどいのかい女将さん?」
輪人が尋ねる。
「まあねえ、国の税金より教団の寄進の方が高い位さ金は取るくせにろくな仕事しなくて困るよ」
女将がまたぼやく、ムーナ教団への不信が感じ取れた。
「まあ、困ったならまた依頼してくれよな♪ それじゃあ、お疲れ様♪」
「リント君、パン作り上手くなったから冒険者何かやめてうちの子になっても良いんだよ~♪」
出て行こうとする輪人に向かって叫び、依頼の終了証明書を投げる女将さん。
「仲間がいるからそれはごめんな、女将さん!」
終了証明書をノールックでキャッチして女将さんの言葉を断ると輪人は、パン屋を出て冒険者管理協会へと向かうのだった。
「メトさん、パン屋さんからの依頼達成しました~!」
依頼達成の証明書を持って受付に行く輪人。
「お疲れ様でした♪ 皆さんが、お待ちですよ♪」
メトが奥を指し示すと、戦隊の仲間も揃っていた。
「お疲れ様、輪人君♪」
「先輩、待ってました♪」
「輪人~! 遅いよ~!」
「これで揃いましたわね♪」
仲間達が声をかける。
「ああ、何かあるのか?」
仲間の所へ輪人が行くと純子が白紙の依頼書を見せる。
白紙の依頼書は、戦隊としての彼らへの裏依頼。
「私たち向けの依頼が来たんだ、家に帰ってから話すよ」
純子が輪人に告げると、輪人も理解した。
「ああ、それなら急いで帰ろうぜ」
そう言って帰る輪人達を依頼人であるメトは笑顔で見送った。
「じゃあ、炙り出しするか」
帰宅後、今の食卓の上で輪人が白紙の依頼書にブレスレットのパワーを当てると文字が浮かび上がった。
「戦隊としての私達への依頼ですね」
桃花が依頼書を見て呟く。
「こういうの、裏稼業の時代劇みたいだね♪」
ヒナミは喜んでいた。
「スパイ映画見たくもありますわ♪」
ヴィクトリアもワクワクしている。
「で、肝心の内容だけれど誰からでどういう物かな?」
純子が内容を見る。
「依頼の内容は、ムーナ教団が魔王軍に乗っ取られている可能性あり?」
輪人が読み上げて驚く。
「容疑者は司祭のケイジュで三日後に神殿で開かれる彼の公開説法に乗り込んで、領主達の前でその正体を暴き退治して欲しいですか?」
桃花が続きを読み終えた。
「メトさんの手腕には感心いたしますわね」
ヴィクトリアが感心する。
「時間をかけてコツコツ調べて来たのかもしれないけれど、チャンスだよ♪」
ヒナミが指を鳴らす。
「そうだな、魔王軍と教団の両方に打撃を与えられるチャンスだ」
輪人が頷いた。
「そうだね、教団を疎ましがってる領主側に利用されてる感じもあるけれどこちらもこの街を利用させてもらうからどっこいだ」
純子も納得すると、依頼書は消滅した。
「それじゃあこの裏依頼、やるぜ皆♪」
輪人が言うと全員が応じた。
一方、ルナの街にある白いギリシャ風の形をしたムーナ教団の神殿の地下。
「げっはッは♪ まさか俺が司祭に化ける事になるとはなあ♪」
死霊部隊のスカルマが白の法衣姿で高笑いをしていた。
本物のケイジュ司祭を殺害しその皮を得た事で変身能力を得たスカルマ。
他の神官達も戦闘員が化けた偽物である。
「スカルマ様、三日後の公開説法で更にこの街の富を奪いましょう♪」
戦闘員が告げる。
「おお♪ 愚かな信者共から搾り取った富を魔王軍の資金にしてくれる♪」
スカルマは再び高笑いをした。
「順調のようですね、スカルマ」
そんなスカルマの影から、彼の上司であるデプスが現れた。
「ははっ♪ 神への寄進としてこの街の富を奪っております三日後は更に♪」
デプスにスカルマが笑いながら語る。
「ええ、期待しておりますが引き際は心得ておきなさい? いつあの巨人を操ってくるジーラの勇者達が攻めて来るかわからないから」
デプスはスカルマを心配して告げる。
「勿論でございます、私めも故郷の家族がおりますゆえに♪」
「ええ、敵の民の嘆きは構わないけれどあなたが死ぬのは私もご家族も辛いから」
「勿体なきお言葉、ありがとうございます」
そう言ってデプスは消えてスカルマは残った、相も変わらず身内の結束は固い魔王軍であった。
そして三日後の昼、神殿前の広場には多くの市民が集まていた。
だが、その表情は皆暗く苦い物ばかりであった。
「説法だけして金を取るなんて楽な商売だよなあ」
「国の税金の方がまだ納得がいくよ」
「でも、聞かないと後々面倒だからなあ」
「神様がいるなら、こう言う悪徳司祭共に天罰を下してくれよ」
と、市民達はムーナ教団のやり口に不満を募らせていた。
そんな中、一人の身なりの良い貴族服を着た金髪の中年男性がメトと話し込んでいた。
「メトよ、貴殿の言う救いの勇者達とやらは信用できるのか?」
金髪の中年男性は街の領主であった、名をロジー・テミスと言う。
「はい、ご安心くださいませ♪ 彼らなら領主様のご期待に応えていただけます」
戦隊を信じるメトが領主に微笑む。
「そうか、これまで力を貸してくれた貴殿の実績を信じよう」
ロジーは頷いた。
そして説法の時間になると、白い法衣を纏った老人ケイジュ司祭が神殿から出て来た。
「よくぞ集った民達よ、これより偉大なる月と美の女神ムーナ様のお言葉を伝える! 皆、ムーナ様を想い心して聞くのだ!」
ケイジュ司祭が叫んだ。
「ふざけた事を言うな、この偽者野郎!」
神殿の屋根の上に立ち、太陽を背負った輪人が叫ぶ。
「ケイジュ司祭、貴方が魔王軍だと言う事はお見通しだ!」
純子が指をさして叫ぶ。
「民を騙し、金品を奪うとは言語道断ですわ!」
ヴィクトリアも叫ぶ。
「偽りの月の神の使徒よ、太陽の前にその正体を晒せ!」
桃子も怒りを込めて叫ぶ。
「さ~て♪ その化けの皮、はがしちゃうよ~♪」
ヒナミがトリを飾った。
「な、貴様らはもしや!」
ケイジュ司祭が叫ぶ。
「おい、誰だあいつら?」
「太陽がまぶしくて誰だかわからねえ!」
「偽者だって、やっちまっておくれ!」
「そうだ、こいつらに金を取られるのはもう嫌だ助けてくれ!」
市民達も叫ぶ。
その叫びに答えるように全員が「「ユウキチェンジ!」」と叫んで変身し降り立った。
「化けの皮、はいじゃうよ~♪」
ユウシャブルーが司祭達を銃で撃つと、その正体が露わとなった。
「皆さん、急いで逃げて下さい!」
ピンクが市民達に避難を呼びかけると市民達は雲の子を散らすように逃げ出した。
「領主様、こちらの戦いが見える所へ避難を」
「うむ、貴殿の勇者達の戦いを見させてもらおう」
メトとロジーも避難をするがこちらは、戦隊達の戦いが見える木陰に隠れた。
「お、おのれ~! またしても邪魔をするか勇者共!」
ケイジュ改めスカルマが叫んだ。
「当たり前だ、俺達はムーナと魔王軍を倒すために来た戦隊だ!」
レッドが叫んで言い返した。
「おのれ、かかれ戦闘員ども!」
スカルマが戦闘員達を戦隊にけしかける。
「勇輝戦隊ユウシャイン、戦闘開始だ!」
レッドが叫ぶと仲間達も応と答えた。
「行きますよ、ピンクストンプ!」
ピンクが大地を踏み鳴らすと戦闘員達が吹き飛ばされる。
「馬鹿め、戦闘員などまだまだ呼べるわ!」
スカルマが己の影から戦闘員の群れを召喚する。
「お替りはご飯だけで十分だよ、ブラックサーベルラッシュ!」
ブラックがサーベルを振り回すと黒いエネルギーの斬撃が飛び交い、戦闘員達を切り刻む。
「まだまだ出てきますわね? イエローロッドロンド!」
イエローが釣り竿で戦闘員を吊り上げて振り回し他の戦闘員達を殴り飛ばす。
「おお、あれがジーラ神の遣わした勇者達か♪」
領主ロジーは戦隊の戦いぶりを見て興奮していた。
「はい、あの方達こそがこの世界の真の神ジーラ様が世界を救う為に遣わされた救世主様達です♪」
メトが笑顔で語りつつジーラ教について刷り込みを行う。
「約束通り、この街でジーラ教を認めても良いかも知れぬな」
ユウシャインの戦いを見ながら領主ロジーは呟いた。
仲間達が戦闘員と戦う中、スカルマを殴りに行ったのはレッドであった。
「でりゃあっ!」
「ぐわ~~っ!」
レッドの一撃をバリヤーを張りながら受け止めて、吹き飛ばされたスカルマ。
「くそ、やるじゃねえかおっさん!」
レッドが叫びながら攻めて行く。
「ええい! こちらも家族の為に貴様なんぞにやられてたまるか!」
剣を取り出してレッドの拳を防いでいくスカルマ。
「家族がいるのは、この街の人達も同じだ馬鹿野郎!」
レッドの両の拳が大きな金色の闘牛の頭に包まれると牛の鼻から強烈な火炎放射が
スカルマへと吹き付けられた。
「ぐわ~~~~っ!」
「まだまだ行くぜ、レッドブルバーニングロール!」
レッドがスカルマを炎が燃え盛る巨大な牛頭で殴る、殴る!
スカルマは、魔王から与えられた鎧やバリヤーでも防ぎきれないほどのダメージに襲われていた。
だが、レッドは止まらず暴れ牛のようにスカルマを襲いついにはアッパーでスカルマを空の彼方へと打ち上げた。
「おっしゃ、ヴィクトリ~~~~ッ!」
スカルマを殴り飛ばし、拳を突き上げて勝利の雄叫びを上げるレッド。
そんな彼の下へ戦隊の仲間達が集った。
「やったね、レッド君♪」
ブラックが褒める。
「見事なアッパーでしたわ♪」
イエローがサムズアップする。
「久々に見たね、レッドの暴れ牛モード♪」
ブルーも仮面の下で笑う。
「これで、ひとまず依頼は達成ですね先輩♪」
ピンクも勝利を喜んだ。
かくして、ユウシャイン達はこの街での初の裏依頼を成功させたのであった。
一方、街の外まで飛ばされたスカルマは地面に落下して鎧も砕けて完全に息絶えた。
だが、彼の骸や鎧の欠片から黒い煙が上がると煙が人の形を取って再びスカルマは甦ったのであった。
「くっ、またしても敗れたか! おのれ勇者共、次こそは覚えておれよ!」
スカルマはルナの街の方に向かって叫ぶと、地面に魔王領に繋がる黒い穴を作り出して飛び込んだのであった。
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